記事ポイント
- 信州大学が血清IgA高値のMASLD高リスク病型を同定
- IgA318mg/dL以上で肝関連イベント発生を有意に予測
- 外部多施設データでも再現され腸-肝免疫連関を示唆
信州大学医学部内科学第二教室の木村岳史講師と若林俊一診療助教らの研究グループは、大垣市民病院、岐阜協立大学、大分大学などとの共同研究により、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)において血清IgA高値を特徴とする新たな高リスク病型を同定します。
この病型では、肝がんや治療を要する静脈瘤、入院を要する腹水、肝性脳症などの肝関連イベントが起こりやすく、そのリスクは肝線維化の重症度だけでは説明できません。
研究成果は、肝臓学分野の国際学術誌「Journal of Hepatology」に2026年7月15日付でオンライン先行掲載されました。
信州大学「血清IgA高値病型」

- 掲載誌:Journal of Hepatology
- 掲載日:2026年7月15日(オンライン先行掲載)
- 対象患者数:349例(信州大学、肝生検診断)
- カットオフ値:血清IgA 318mg/dL以上
- ハザード比:3.17(95%信頼区間1.27〜7.91)
MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)は、肥満や糖尿病などの代謝異常を背景に肝臓へ脂肪が蓄積する疾患で、従来「NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)」と呼ばれていたものが患者への偏見を避けるため2023年に国際的な合意で改称されたものです。
今回の研究は、このMASLD患者の中に血清IgA値で見分けられる高リスク集団が存在することを示しています。
信州大学医学部内科学第二教室の木村岳史講師、若林俊一診療助教、同大学医学部国際医学研究推進学教室の田中直樹教授らの研究グループが、MASLD患者を対象にした解析で新たな高リスク病型を見つけます。
肝生検で診断された349例の臨床・血液検査データを機械学習で解析し、病理所見や将来の転帰を使わずに4つの患者群を抽出した結果です。
血液データだけで4つの病型に分類
信州大学医学部附属病院で肝生検によりMASLDと診断された349例について、年齢、性別、併存疾患、肝機能、代謝指標、免疫グロブリンなど51項目を変分ベイズガウス混合モデルで解析します。
分類には肝組織所見や肝関連イベントの情報を含めず、血液・臨床データの特徴だけから4つの群を導き出しています。
IgA高値群で肝関連イベントが多発
4群のうち血清IgAとヒアルロン酸が高く血小板が低いCluster 2の72例は、糖尿病や高血圧を伴うことが多く、進行した肝線維化の割合も高い群です。
追跡期間中央値6.8年で20件の肝関連イベントが発生し、この群の5年累積発生率は24.0%に達しています。
進行肝線維化の程度を調整した解析でも、Cluster 2は強いリスク因子として残ります。
血清IgA 318mg/dL以上が独立した予測因子
血清IgAの最適カットオフ値を318mg/dLとすると、肝関連イベントに対する感度は60.0%、特異度は80.4%です。
進行肝線維化を含めた多変量解析でも、IgA高値は独立した予測因子で、ハザード比は3.17です。
IgA高値と進行肝線維化の両方を有する患者では10年累積発生率が48%に達し、それ以外の患者では5%未満にとどまります。
別コホートと外部多施設データで再現
肝生検を行わずVCTEで評価した信州大学の別コホート287例でも、肝関連イベントを発症した患者は血清IgAが有意に高値です。
大垣市民病院と大分大学医学部附属病院の外部多施設コホート272例でも、IgA高値を特徴とする高リスク群が同じように確認されています。
肝臓と腸をつなぐIgAの働き
空間トランスクリプトミクスと単一細胞RNA解析により、IgAを産生するB細胞系細胞が肝臓の門脈域に集まり、免疫活性化や細胞外マトリックス再構築、血管リモデリングに関わっていることが分かります。
進行肝線維化を有する患者では大腸粘膜のIgA陽性細胞も増加しており、腸管バリア機能の変化を起点とする腸-肝軸の免疫活性化がMASLD進展に関わっている可能性を示しています。
血清IgAという一般診療でも測定できる指標を加えることで、MASLD患者の将来リスクをより精密に見分けられる可能性が示されます。
腸管バリア機能や免疫活性化という新しい視点は、肝臓の状態を多角的に理解する手がかりになります。
信州大学「血清IgA高値病型」の紹介でした。
よくある質問
血清IgA値はどのように測定できますか?
一般診療で実施される血液検査で測定可能な項目です。
特別な検査機器を必要とせず、既存の臨床検査の枠組みで確認できます。
この研究はどこで行われましたか?
信州大学医学部附属病院を中心に、大垣市民病院、岐阜協立大学、大分大学の共同研究として実施されます。
外部コホートには大垣市民病院と大分大学医学部附属病院の272例が含まれます。
研究成果はどの学術誌に掲載されましたか?
肝臓学分野の国際学術誌「Journal of Hepatology」に2026年7月15日付でオンライン先行掲載されました。









