協働ロボットをサブスクで!東京都企業立地相談センター「ウィングロボティクス」

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東京都企業立地相談センターは、「ウィングロボティクス」に取材を実施。

その内容を東京都企業立地相談センターホームページにて2024年5月30日(木)に公開しました。

 

東京都企業立地相談センター「ウィングロボティクス」

 

 

ウィングロボティクス株式会社 代表取締役社長 馮 麗萍氏

 

東京都企業立地相談センターは、「ウィングロボティクス」に取材を行い、その内容を東京都企業立地相談センターホームページにて2024年5月30日(木)に公開!

■高性能協働ロボットの「サブスク」で日本の国際競争力を再生

製造業や食品工場での作業から、レストランでの配膳用ワゴンまで、ロボットの活躍の場が拡大しています。

そうした産業用ロボットは、かつて人間が行っていた重労働や危険な作業を担う「工業用ロボット」と、生産効率化のために人間と並んで作業する「協働ロボット」の2つに分けることができます。

 

このうち、後者の協働ロボットは、日本で深刻化している人手不足対策の“切り札”になるとも言われており、成長が期待されています。

ウィングロボティクスは、この協働ロボットを、特に人手不足が深刻な中小企業の工場などへサブスクで提供するという独自のアプローチで存在感を示すベンチャー企業です。

代表取締役社長の馮 麗萍(フォン リーピン)氏に、事業内容や協働ロボットの展望、立地のメリットなどを聞きました。

 

 

■日本には協働ロボットの特性が活かせる環境がある

馮氏がウィングロボティクスを起業したのは2018年9月。

準備期間を経て、2021年4月にロボットのサブスクリプションサービスを開始。

それ以前は約20年間、日本のメーカー向けに、中国をはじめとするアジア地域への進出をサポートするコンサルタントをしていました。

 

「多数のクライアントから高い評価をいただきましたが、半面、日本の家族と過ごす時間が少なくなっていたことからコンサル業を休止しました。

その後、東京を拠点にして続けられるビジネスとして、コンサル業を通じて実感していた日本の高い技術力を活用することにしたのです」

 

馮氏が着目したのは、深刻な危機に陥っている中小企業の現場でした。

 

「約52%が事業縮小や倒産、M&Aなど事業再編の検討を迫られており、その背景にあったのが労働力の不足でした(注:城南信用金庫の調査による)。

不足に至る主な理由は『少子高齢化』『需給のアンバランス』『DX化、ロボット導入の遅れ』の3つです。

コンサル時代、通信機器メーカーの案件で、年間1億5,000万台ものスマートフォンを製造する工場に携わり、豊富な知見があったことから『DX化、ロボット導入』を支援するビジネスを立ち上げることにしました」

 

そこで馮氏が定めたのが「協働ロボット」のアプリケーション開発でした。

協働ロボットの世界市場規模は、2021年に13億米ドルだったのが、2030年には401.6億米ドル(約6.5兆円)に達すると予測されており(注:Panorama Data Insightsの調査による)、極めて優良なマーケットとして知られています。

 

「日本には協働ロボットの特性が活かしやすい環境があります。

多品種・少量生産を行う工場が多いことに対して、協働ロボットならモデルチェンジがしやすくフレキシブルに対応できる、スペースが狭い工場の多さに対してはコンパクトで設置がしやすい、高齢化・IT人材不足に対しても専門人材以外でも扱いやすい、など協働ロボットならではのメリットが適しているのです」

 

ただし、導入には課題もあります。

 

「まず協働ロボットのメーカーによって操作方法が異なるため、操作するロボット技術者(SIer:System Integrator=システム インテグレーター)は、メーカー別に操作方法を学ばなければなりません。

さらに、そもそも日本のロボット技術者は1~2万人ほどで、日本の人口の約0.0002%にしか相当しないことが大きな障壁になっています。

私たちはそうした課題のクリアを目指して、協働ロボットのアプリケーション開発に取り組みました」

 

「日本の協働ロボットの市場規模は約4,000億円であると見込んでいます」と語る馮氏

 

■データ蓄積で技術継承、世代交代もスムーズに

そしてウィングロボティクス株式会社が開発したアプリケーションが、協働ロボットの遠隔制御システム「WING-Bot」です。

離れた場所からSIerが協働ロボットの操作・監視を行えるため、導入先の製造現場に専属の管理者を置く必要がありません。

 

「WING-BotはアメリカのWillow Garage社のロボット開発用オープンソースソフトウェア『ROS:Robot Operating System』に対応しています。

ROSに対応している協働ロボットは多いことから、異なるメーカーでも操作・運用がしやすいことがWING-Botの強みとなっています。

また、コスト削減の観点から、遠隔操作のカギになるカメラは市販されているスマホでの代替を可能にしました。

スマホのカメラで撮影された映像のチェックによって、遠隔地からのロボット制御に加え、必要に応じて現場スタッフへ指示することもできます」

 

「WING-Bot」遠隔制御システムの操作画面

 

WING-Botが特に真価を発揮するのが“チョコ停”が発生した時とのこと。

 

「協働ロボットは並んで働いている人間の安全を担保するため、ほんのわずかでも接触したり、何らかの異常が発生したりすると、ただちに停まる機能を備えています。

これがチョコっと停まる=『チョコ停』です。

チョコ停するたびに製造ラインがストップするわけですが、遠隔地からすぐに我々の技術者が復旧させることができるため、停止時間は最小限で済み、労働生産性を損なうことがありません」

 

ただ、優れたシステムとはいえ、導入のネックになるのが費用です。

そこで同社が提供しているのが『ロボットサブスクリプションサービス』。

 

「現在のα版では、月額制で1台約10万円台~と比較的ローコストで済む上、最短1日程度で導入でき、現場の作業をさほど停滞させることがありません。

導入時に必要なパーツの設定やプログラミングはもちろん、導入後のトラブルも同社の担当者が対応します。

次のβ版では、カメラとAIを備え、つかむべき部品等がなくなったら自ら判断して作業を終了したり、最短経路を計算して作業したりする『自動計画』ができることも特徴です」

 

ロボットの作業履歴はデータ化して蓄積し、正確に再現させることも可能とのこと。

したがって、協働ロボットを導入できればベテラン職人の退職後、仕事が滞るといった事態は起こりにくく、技術継承、世代交代がスムーズに進むことにも期待できそうです。

 

遠隔操作のカギになるカメラはスマホで代用が可能。

協働ロボットは複雑な動作を数多く覚えられるため、パーツやプログラムの差し替えによって、工場内を移動させて異なる種類の作業を支援させることも実現できる

 

■江東、東京立地のメリット~ロボティクス系企業を支援する多様な環境が整う

最後に、同社が開発拠点を置く、江東区・地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター内の製品開発支援ラボと、周辺環境の魅力を聞きました。

 

「都産技研」内の環境についても非常に満足しているとのこと。

 

「本当にたくさんのメリットがあります。

まずは、エレベーターのサイズが大きく、ロボット搬出が容易なのはロボティクス系企業にとって大きな恩恵です。

また、隣りのテレコムセンター内に設けられている5G基地局の存在は、同社のロボット遠隔制御に欠かせません。

さらに、試作加工室の3Dプリンターや旋盤、ボール盤、自動研磨機など多くの機械を無料で使えることも魅力です」

 

加えて、ハード以外にもさまざまな魅力があると指摘します。

 

「24時間利用可能で好きなだけ仕事を続けられる、展示会に出展する機会に恵まれている、多様なメンターによる各種アドバイスを受けられる…といったメリットのほか、同じラボ内の他入居企業との“提携”もここならでは。

AI、ロボティクス系企業が多く、取り組んでいる分野に共通項が多いため、互いに共有する情報が非常に有意義です。

 

さらに「東京都立地」の恩恵も大きく、多様な助成金や、コンテストに参加できるチャンスも多いとのこと。

このようなハード・ソフトともに恵まれた環境を活かし、馮氏はさらにステップアップするべく、未来を見据えます。

 

「現在、残念ながら日本の労働生産性は、先進国のなかでほぼ最低レベルにあります。

私たちは日本経済を支えている中小企業の製造現場に協働ロボットを導入・普及させることで、ひいては日本の国際競争力を向上させたいと考えています」

 

過去には協働ロボットとアートの融合実績もある。

 

2022年3月の「ゴーテック2022」(主催:テレビ朝日)において、テレビ朝日の技術者がオープンソースの3DCGソフトウェア「Blender」でロボットアームのモーションを制作。

ウィングロボティクス株式会社の技術支援でアート作品が完成した。

「Blender」を利用するクリエーターをはじめ、多くの企業や人がロボットを活用する機会が拡大する可能性を示しました。

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