公益財団法人稲盛財団は、3月15日(金)、2024年度稲盛科学研究機構(InaRIS:Inamori Research Institute for Science)フェローを発表しました。
2024年度InaRISフェローは、36名の応募者の中から、鈴木洋氏(名古屋大学大学院医学系研究科教授)と星野歩子氏(東京大学先端科学技術研究センター教授)の2名が選定されました。
フェローには、毎年1,000万円を10年間、総額1億円を助成します。
2024年度稲盛科学研究機構(InaRIS)フェロー決定
■鈴木 洋 Hiroshi Suzuki
名古屋大学 大学院医学系研究科 教授
<研究テーマ>
遺伝子制御情報の時空間進化の理解・予測に基づくがん治療DX
<研究の概要>
高齢化に伴い、現代の日本では、2人に1人が生涯でがんを発症する。
がんの治療は、がんゲノム解析・分子標的治療・がん免疫療法によって大きく進化したが、がんの再発・治療抵抗性の獲得、すなわち、がんと治療のいたちごっこはがん医療の永遠の課題である。
本研究では、染色体外環状DNA(eccDNA)などのがん細胞の遺伝子制御情報の時空間進化のメカニズムに注目し、AIや情報科学を駆使した新たながん研究の方法論と新たな遺伝子制御の分子ツールの開発を推進することにより、「あきらめないがん治療」に資する研究を展開する。
<InaRISフェローに選ばれた感想>
InaRISは10年という長期間の間、研究だけではなく研究者そのものをサポートするユニークなシステムです。
感謝と責任を感じています。
医学には基礎研究・臨床研究という研究の分け方がありますが、基礎を極めていろいろなものに広範囲に波及する特異点を探す、ヒトの考え方の重心をぐっと動かす、そういう挑戦をしたいと考えています。
さらに詳しい情報はこちら:
■星野 歩子 Ayuko Hoshino
東京大学 先端科学技術研究センター 教授
<研究テーマ>
エクソソームが切り拓く疾患生物学
<研究の概要>
エクソソームは、すべての細胞から産生されるウイルスほどの微小な小胞であり、タンパク質、脂質、核酸など、元の細胞由来の物質を含んでいる。
これまでは細胞内の不要物を処理するメカニズムとして考えられてきたが、近年、産生細胞から別の細胞への取り込みが明らかになり、新たな細胞間コミュニケーションツールとして注目されている。
本研究では、体内に拡散する小胞であるエクソソームによる細胞間の相互作用メカニズムが、遠隔に位置する組織を結びつけ、様々な疾患の発症や病態に関与する可能性があり、これについて生理学的な新たな概念を開拓していくことを目指している。
<InaRISフェローに選ばれた感想>
研究者キャリアの中で、40代はいかに研究に没頭できる環境を作れるかを課題としていましたので、10年間のサポートはまさに願ってもないチャンスだと思いました。
エクソソームを介した新たな生理学を切り拓くだけでなく、このサポートを活かして、将来の研究者を育てることにも力を注ぎ、次の10年間だけでなく、この研究を継続し新たな発展を遂げられるような次世代の研究者の育成にも尽力します。