平均して1日10分程度の身体活動の減少!明治安田ライフスタイル研究「新型コロナウイルス感染症の流行前後における首都圏在住勤労者の身体活動および座位行動の変化」

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明治安田ライフスタイル研究では、新型コロナウイルス感染症の流行前後における首都圏在住勤労者の身体活動および座位行動の変化について、活動量計で実測したデータを用いて分析しました。

その結果、平均して1日10分程度の身体活動の減少がみられ、その代わりに座位行動が増加していることが明らかになりました。

 

明治安田ライフスタイル研究「新型コロナウイルス感染症の流行前後における首都圏在住勤労者の身体活動および座位行動の変化」

 

公益財団法人 明治安田厚生事業団が行う明治安田ライフスタイル研究※1(Meiji Yasuda LifeStyle study:MYLSスタディ(R)※)では、新型コロナウイルス感染症の流行前後における首都圏在住勤労者の身体活動および座位行動の変化について、活動量計※2で実測したデータを用いて分析しました。

その結果、平均して1日10分程度の身体活動の減少がみられ、その代わりに座位行動が増加していることが明らかになりました。

またこの変化は休日よりも平日の方がより顕著であることが確認できました。

将来的な健康への悪影響を防ぐためにも、身体活動量をコロナ禍以前の水準に戻し、さらに増やせるような取り組みがこれまで以上に重要になってくると考えられます。

本研究の成果は、国際学術雑誌「Journal of Epidemiology」に2023年8月13日付で早期公開されました。

※MYLSスタディは、公益財団法人 明治安田厚生事業団の登録商標です。

【ポイント】

◎新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行前後で、首都圏在住勤労者の身体活動を活動量計で実測

◎流行前に比べて流行後の身体活動は1日あたり10分程度減少、代わりに座位行動が10分程度増加

◎これらの変化は、休日に比べて平日の方がより顕著であった

【研究の背景】

新型コロナウイルスの流行によりテレワークを導入する企業が増え、外出自粛要請や行動制限により身体を動かす機会が減少したとされています。

しかし、新型コロナウイルス感染症の流行が身体活動に及ぼす影響について調査した先行研究のほとんどは、身体活動の評価に自己申告式質問紙を用いており、「思い出しバイアス※3」を含んでいる可能性があります。

新型コロナウイルスのまん延に伴う身体活動減少をより厳密に評価するためには、活動量計で実測したデータを用いる必要があります。

そこで本研究では、首都圏在住勤労者を対象に、新型コロナウイルス感染症の流行前後で身体活動および座位行動を活動量計で実測し、どのように変化したか調査・分析しました。

【対象と方法】

本研究は2019-20年にMYLSスタディに参加した勤労者536名を対象とした縦断研究※4です。

ベースラインデータは2019年6月~11月、追跡データは2020年6月~11月にそれぞれ収集しました(図1)。

研究参加者には、両調査とも少なくとも10日間、起きている時間帯に活動量計を腰に装着してもらい、身体活動(低強度※5・中高強度※6)、座位行動、歩数を測定しました。

分析にあたり、装着時間の違いを考慮するため、身体活動と座位行動に費やした時間を装着時間に占める割合に換算しました。

統計解析として、新型コロナウイルス流行前後での身体活動および座位行動の変化を調べるため、統計的な解析を実施しました。

調査の概要

【結果】

参加者の平均年齢は53.3歳(うち69.6%が女性)で、ほとんどがフルタイムで働く勤労者でした。

身体活動の変化をみると、低強度身体活動と中高強度身体活動のいずれも平日・休日にかかわらず減少しました(図2)。

一方、座位行動時間は平日・休日ともに有意に増加していることが確認されました。

これらの変化は、1日あたり約10分の身体活動の減少および座位行動の増加に相当していることが分かりました。

一日の身体活動と座位行動の変化

【筆頭著者のコメント】

本研究では、毎年実施している健診で取得している活動量調査のデータを用いることで、新型コロナウイルス感染症流行前後での身体活動・座位行動の変化を明らかにしました。

先行研究のほとんどが自記式調査票を用いて活動量を評価していたため、思い出しバイアスによる影響が含まれ、実情とは必ずしも一致していなかった可能性があります。

本研究では、活動量計による評価を用いたことで、より厳密かつ詳細な変化を明らかにすることができました。

「体を動かす時間が1日10分減少した」と聞くと、個人に与えるインパクトはあまり大きくないように思えますが、集団レベルでみると疾患や死亡の発生リスクが2~8%程度増える可能性を報告する先行研究もあります。

健康への悪影響を最小化するためにも、身体を動かす時間を元に戻す、あるいはコロナ禍前よりもさらに増やしていくような取り組みが必要となってくると考えられます。

【発表論文】

掲載誌   : Journal of Epidemiology

論文タイトル: Changes in accelerometer-measured physical activity

and sedentary behavior from before to

after COVID-19 outbreak in workers

著者    : Yuya Fujii, Naruki Kitano, Yuko Kai, Takashi Jindo, Takashi Arao

DOI番号   : https://doi.org/10.2188/jea.JE20230023

【用語解説】

※1. 明治安田ライフスタイル研究:明治安田新宿健診センターを拠点として、運動や座りすぎを中心とした生活習慣が健康にあたえる影響の解明を目的に行われるコホート研究。

※2. 活動量計:3軸加速度計センサーを搭載し、日々の身体活動や座位行動を詳細に評価することができる機器。

※3. 思い出しバイアス:過去の出来事について思い出して回答を得ることによる正確性のずれやデータの偏り。

※4. 縦断研究:個人内の変化を正確に捉えるために、同じ対象者に対して複数回の調査をおこなう手法。

※5. 低強度身体活動:1.6-2.9メッツまでの強度の身体活動(ゆっくりとした歩行や家事など)。

※6. 中高強度身体活動:3.0メッツ以上の強度の身体活動(通常歩行やジョギングなど)。

【利益相反】

著者には開示すべき利益相反はありません。

【財源情報】

本研究はJSPS科研費(17K13238; 19K11569; 20K19701)の助成を受けて行われました。

記して深謝します。

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