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活性型ビタミンD3が特定の細胞において抑制効果を発揮!芝浦工業大学「ヒ素誘導性発がんの抑制効果」

投稿日:2023年1月19日 更新日:

日本屈指の海外学生派遣数を誇るグローバル教育と、多くの学生が参画する産学連携の研究活動を行う「芝浦工業大学」

そんな「芝浦工業大学」が、カルシトリオール(活性型ビタミンD3)が、ケラチノサイトと呼ばれる特定の種類の皮膚細胞において、ヒ素を介した発がんを抑制することを明らかにしました。

 

芝浦工業大学「ヒ素誘導性発がんの抑制効果」

 

 

日本屈指の海外学生派遣数を誇るグローバル教育と、多くの学生が参画する産学連携の研究活動を行う「芝浦工業大学」

そんな「芝浦工業大学」のシステム理工学部生命科学科・矢嶋伊知朗教授らの研究チームが、カルシトリオール(活性型ビタミンD3)が、ケラチノサイトと呼ばれる特定の種類の皮膚細胞において、ヒ素を介した発がんを抑制することを明らかにしました。

世界50カ国において、1億4千万人以上の人々が飲料水を通して定期的にヒ素にさらされています。

これらのヒ素汚染水に含まれるヒ素の濃度は、世界保健機関(WHO)が定めるガイドライン値(10μg/L)を大幅に超える値です。

ヒ素汚染飲料水からヒ素を慢性的に摂取することは、皮膚がんを含む様々ながんを引き起こす可能性があることが知られています。

しかし、ヒ素を介した発がんを制御する生物学的メカニズムには、これまで不明な点が多く残されていました。

研究チームは、細胞培養試験によって、カルシトリオール(活性型ビタミンD3)が、「ケラチノサイト」と呼ばれる皮膚細胞において、ヒ素を介した発がんを抑制することを発見。

ケラチノサイトは、主に皮膚の一番外側の層である表皮に存在しています。

まず、カルシトリオールが、ケラチノサイトにおけるヒ素誘発性腫瘍形成に対して抑制効果を持つかどうかを明らかにするため、不死化ヒトケラチノサイトを用いて腫瘍形成活性の測定が実施されました。

カルシトリオールで処理したケラチノサイトは、ヒ素を介した腫瘍形成活性を49.3~73.1%抑制しました。

次に、ヒ素の摂取とカルシトリオール処理の関係を明らかにするために、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いて、カルシトリオールで処理したケラチノサイトのヒ素レベルを測定。

ヒ素を添加して培養したケラチノサイトをカルシトリオールで処理すると、ヒ素濃度が有意に減少しました。

カルシトリオールは、ヒ素の曝露により変化したアクアポリン遺伝子の発現を制御することで、ケラチノサイトでのヒ素取り込みを抑制。

カルシトリオール受容体(ビタミンD受容体)の発現は、ヒ素曝露により有意に増加しましたが、カルシトリオールは受容体の発現に影響を及ぼしませんでした。

さらに、カルシトリオールが、ケラチノサイト以外の細胞におけるヒ素誘発性腫瘍形成に対して抑制効果を持つかを明らかにするため、不死化ヒト肺上皮細胞を用いて、腫瘍形成活性の測定が実施されました。

カルシトリオールで処理した肺上皮細胞は、ヒ素を介した腫瘍形成活性を21.4~70.0%抑制することができるという結果に。

これらの結果は、カルシトリオールがケラチノサイトだけでなく、肺上皮細胞など他の標的細胞でもヒ素による腫瘍形成を抑制することを示唆しています。

さらに、ヒ素による発がんにおいて重要なステップであるヒ素の取り込みに関与するアクアポリン遺伝子の発現パターンが、カルシトリオール処理によって大きく変化していることも確認されました。

今回の研究により、カルシトリオールは、ヒ素を原因とするがんの予防や治療に利用できる可能性が明らかとなりました。

ヒ素汚染地域であらかじめビタミンD3を摂取(体内で活性化型に変換される)しておけば、5年後、10年後のがん発症リスクを低減し、長期にわたって健康を維持できる可能性があります。

今後芝浦大学では研究成果を活用し、がんを含むヒ素を介した疾患の予防や治療法などの研究につなげられます。

 

カルシトリオール(活性型ビタミンD3)が、「ケラチノサイト」と呼ばれる皮膚細胞において、ヒ素を介した発がんを抑制することを発見。

芝浦工業大学システム理工学部生命科学科・矢嶋伊知朗教授らの研究チームが発見した「ヒ素誘導性発がんの抑制効果」の紹介でした☆

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