地中海沿岸に位置し、有名なボスポラス海峡が隔てるアジアとヨーロッパを結ぶトルコ共和国。
多様な気候と文化交流の中心地であることにより、何世紀にもわたる多様な文明が反映された歴史、自然や美食を有します。
今回は、そんなトルコ共和国にある、世界最大級の芸術的にも考古学的にも高く評価されるモザイク画を鑑賞できる博物館を紹介します☆
トルコ共和国・博物館「ローマ時代のモザイクアートコレクション」
多くの文明を育んできたトルコには、様々な古代の宝物が残っており、モザイクアートもその一つです。
その多くはローマ時代のもので、トルコの南部や南東部で発見されました。
今回は、そんな歴史的モザイク画を鑑賞することができる、トルコ共和国国内の博物館を紹介します。
ゼウグマ・モザイク博物館(ガーズィアンテップ)
ゼウグマは、トルコ南東部、ユーフラテス川の幅が狭くなった地点に位置し、ローマ帝国の支配下にあった重要な地域です。
この都市には別荘に壁画やモザイク画を依頼する裕福な市民が多く住んでいました。
壁画のフレスコ画はゼウグマの名工たちによって描かれ、床面にはユーフラテス川で採れる色鮮やかな石を使って神話の物語や人物が描かれました。
ゼウグマ古代都市の発掘調査で見つかったモザイク画は、現在、ガーズィアンテップにあるゼウグマ・モザイク博物館に展示されています。
博物館はモザイク画のテーマや色使いの多様性、(そして特に1平方メートルあたりのモザイク片「テッセラ」の数において)質の高い膨大な数のコレクションを所蔵しています。
館内の作品は、当時の都市に住んでいた人々が日常生活を送った環境下での信仰や文化、建築に沿って展示されています。
世界的に知られる「ジプシーの少女」のモザイク(Cingene Kiz Mozaigi)の他、軍神マルスのブロンズ像も所蔵しています。
ゼウグマ・モザイク博物館は2022年8月15日から9月15日までの1か月間、開館時間を朝8時30分から夜22時まで特別に延長し、より多くのゲストをお迎えしています。
ハタイ考古学博物館(ハタイ)
トルコ南部、地中海地方にあるハタイ考古学博物館では、3,250平方メートルの世界最大のモザイク画を所蔵しています。
旧石器時代、新石器時代、金石併用時代、青銅器時代、ヒッタイト、ヘレニズム、ローマ、東ローマ、セルジューク、オスマン帝国時代の注目すべき作品が、10,700平方メートルの展示スペースに、9つのテーマに分けて展示されています。
ハタイ考古学博物館は、モザイクコレクションの規模、質、緻密な処理、モザイクに使用されているユニークな石によって、世界で最も重要なモザイクセンターの一つと評価されています。
コレクションのほとんどは、1932年から1939年にかけて、米プリンストン大学の研究者によって発掘されたものです。
コレクションには、モザイクの「見捨てられたアリアドネ」「ヤクト」「サテュロスとヘルマプロディートス」、「四季」、「ヴィーナスの誕生」「アルテミス」「骸骨」などが含まれます。
その他、注目する所蔵品としてシュッピルリウマ像、アルスズ石碑、ティケ像、アンタキヤ石棺、2頭のライオン柱台座などがあります。
ハレプリバフチェ・モザイク博物館(シャンルウルファ)
トルコ南東部のシャンルウルファ県は、石の丘(Tas Tepeler)を含む数多くの考古学的発見で世界的に知られ、モザイクでも重要な場所です。
ハレプリバフチェ・モザイク博物館には、ハレプリバフチェで発掘されたモザイク画が展示されています。
コレクションには、アマゾネスを描いた唯一のモザイク画があり、狩猟や女性戦士の生活様式が描かれています。
博物館の「アマゾネスの別荘」セクションに展示されているこのモザイク画は、ユーフラテス川から採取された4平方ミリメートルの石でできており、非常に貴重なものです。
この他にも、「オルフェウス」「クティシス」「アキレウスの生涯」などのモザイク画が展示されています。
オルフェウスのモザイクはシャンルウルファから海外に持ち出されたものですが、本国へ返却され、現在、同博物館で見ることができます。
エデッサ(現在のウルファ)のモザイクの中で最も古い(西暦194年)ことに加え、このオルフェウスは、作者名であるBar Sagedがモザイクに描かれていることも重要な点となっています。
所蔵モザイク画の一つ「クティシス」には、アマゾネスの創設者であり守護神であるクティシスの胸像が描かれています。
幼い頃にステュクス河に沈められた半神の様子や、賢者ケイロンに鍛えられた姿、トロイ戦争に参加するアキレスを悲しげに見守るテティスの姿などが描かれている「アキレウスの生涯」も必見です。
グレートパレスモザイク博物館(イスタンブル)
イスタンブルのグレートパレスモザイク博物館に展示されているモザイク画は、かつての東ローマ大宮殿の北東部に位置する回廊のあった場所で1935年に行われた発掘調査で出土したものです。
モザイク画は紀元450年から550年にかけて制作されたもので、日常の生活や自然、神話などの情景など150もの人物や動物像、90のテーマが描かれています。
これらのモザイク画は、当時を代表するモザイクの巨匠の指導のもと、職人たちによって作られたと考えられています。
博物館はブルーモスクの複合施設のアラスタ市場の中にあります。
モザイク画は石灰岩、テラコッタ、色のついた石で構成されており、使用されている石は平均5mmの大きさです。
大理石の間にバーミキュライトを使った「オプス・バーミキュライト」スタイルが用いられ、また白い大理石の部分は、「フィッシュスケール(魚の鱗)」技法により、輪郭が描かれた描写になっています。
モザイク画には、伝説の生物グリフォンを食べるトカゲ、戦う象とライオン、子馬に乳を与える雌馬、羊飼いのガチョウ、ヤギに餌をやる男、ロバに餌をやる子供、水差しを運ぶ少女、リンゴを食べる熊、狩人と虎が戦う様子などが描かれています。