記事ポイント
- 東京国立博物館で2026年6月16日(火)から8月23日(日)まで、旧石器時代発見80周年を記念した特別企画展が開催されます
- 日本の旧石器時代発見のきっかけとなった岩宿遺跡の採集品・出土品を中心に、世界各地の石器や現代復元の狩猟具レプリカも展示されます
- 月例講演会・石器づくり実演など関連イベントも事前申込制で実施されます
令和8年(2026年)は、日本で「旧石器時代」が発見されて80年の節目にあたります。
東京国立博物館が、その歴史的発見を軸にした特別企画展を平成館企画展示室で開催します。
縄文時代以前の日本に人類が暮らしていた証拠となった石器が、一堂に集まります。
東京国立博物館「ビフォー縄文 旧石器時代発見80周年」

- 会期:2026年6月16日(火)~8月23日(日)
- 会場:東京国立博物館 平成館企画展示室(東京都台東区上野公園13-9)
- 開館時間:午前9時30分~午後5時(毎週金・土曜日および7月19日は午後8時まで)
- 休館日:月曜日、7月21日(火)※7月20日(月・祝)・8月10日(月)は開館
- 観覧料:一般1,000円、大学生500円/高校生以下・18歳未満・70歳以上は無料
- 主催:東京国立博物館
- お問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
昭和21年(1946年)、群馬県桐生市在住の相澤忠洋氏が岩宿(現群馬県みどり市笠懸町阿左美)の崖で黒曜石の欠片を採集したことを皮切りに、昭和24年・25年の2回にわたって明治大学考古学研究室による発掘調査が行われます。
その結果、土器を伴わない縄文時代以前の歴史が日本に存在したことが明らかになり、日本考古学に大きな転換をもたらします。
本展は、その岩宿遺跡の採集品・出土品を中心に、日本の旧石器文化を多角的に紹介する企画展です。
展示は全5章で構成され、相澤忠洋氏の採集資料から世界各地の旧石器、さらに現代に復元した狩猟具レプリカや岩宿遺跡の景観を再現したジオラマまで幅広く紹介されます。
観覧料は一般1,000円で、東博コレクション展および開催中の特別展観覧券(観覧当日に限る)でも入場できます。
障害者とその介護者1名は無料です。
1章 岩宿遺跡の発見前夜

「火山灰(赤土)が堆積する時代に人が生活できるはずがない」という日本考古学の常識が支配していた時代、行商のかたわら考古学の研究を続けていた相澤忠洋氏が岩宿の崖で黒曜石の欠片を採集します。
昭和24年には赤土のなかから槍先形尖頭器を発見し、縄文時代以前に人間の生活があったことを確信するに至ります。

岩宿の崖からは土器は一切見つからず、石器だけが採集されます。
前3万5,000年~前1万6,000年の後期旧石器時代に属するこれらの採集品は、縄文以前の存在を示す登録有形文化財として岩宿博物館に所蔵されています。
本章ではこの相澤忠洋資料が展示されます。
2章 岩宿遺跡の発掘と「旧石器時代」の発見

昭和24年9月11日に撮影された発掘現場の記録写真には、崖面に横一列に並んで手作業を行う6名の男性の姿が記録されています。
相澤氏の採集石器に着目した明治大学の芹沢長介と杉原荘介による発掘調査で、赤土(関東ローム層)から石斧を含む多数の石器が出土します。

重要文化財に指定された岩宿遺跡出土石器(岩宿I石器文化)は、前3万5,000年の後期旧石器時代に属します。
異なる地層から石器が出土したため、旧石器時代にいくつかの文化のまとまりがあることも予測されます。

同じく重要文化財の石斧は、刃先が磨かれた状態で出土します。
従来、磨製技術は縄文時代(新石器時代)の示標とされていますが、この石斧の発見により、磨製技術が後期旧石器時代初頭にすでに存在していたことが証明され、世界的にも評価される日本の文化的特徴として位置づけられています。
3章 日本の旧石器文化

約4万年前に始まる日本の旧石器時代は、世界史的には後期旧石器時代にあたります。
寒冷な気候のもと、ナウマンゾウなどの大型動物やノウサギのような小動物を狩猟しながら移動生活を営んでいたと考えられています。
狩猟具には黒曜石のほか、割れ口が鋭くなる頁岩(けつがん)なども用いられます。

群馬県前橋市の桝形遺跡から出土した細石刃・細石刃核は、前1万6,000年の後期旧石器時代に属します。
細石刃は槍の側面に埋め込んで使用した狩猟具で、破損した際には替刃のように新しい細石刃と交換できる設計になっています。
細石刃核から細石刃が割り取られる構造で、機能的な道具設計が1万6,000年前にすでに存在していたことが確認できます。
4章 世界の旧石器文化

東京国立博物館は、日本で旧石器時代が発見される以前の明治から昭和初期にかけて収集・寄贈された世界各地の石器を収蔵しています。
フランスのソンム県サン・タシュール遺跡で採集されたハンドアックスは、前45万年~前35万年の前期旧石器時代に属し、白色チャート質の扁平な楕円形をしています。
動物の解体・皮なめし・木材の伐採など多様な用途に使用された、人類が初めて形をデザインした道具と評されています。

インドで採集されたクリーヴァーは前150万年~前20万年に位置づけられる前期旧石器時代の石器で、赤褐色の石材に打撃による剥離痕が確認できます。
鉈にも似た分厚い刃先を持ち、木・骨・肉などを強い力で断ち切る用途に使われます。
本章では、岩宿遺跡発見に関わった日本の研究者たちが参考にしたヨーロッパやアジアの代表的な石器が紹介されます。
5章 「旧石器時代」を復元する

本章では、現代に復元した旧石器時代の狩猟具レプリカが展示されます。
先端に石器を装着する槍から、刃先を交換できる槍へと段階的に発達した変遷が、実物大の復元品で確認できます。
石器研究の一手法として実際に石を打ち割ることで、ハンマーの種類(石・木・骨・角)や加工方法(直接打撃・間接打撃・押圧剥離)などの製作技術の解明が進んでいます。

石錘・鹿角製品・骨角器・穿孔石器など7点の道具類も展示されます。
旧石器時代には石や木、動物の骨や角、革など自然の素材を組み合わせて石器が製作されています。

岩宿遺跡の発掘調査と研究をもとに制作された立体ジオラマでは、日当たりの良い水辺に3か所の円錐形テント(ティピー状住居)が立てられた野営地の景観が再現されています。
小径沿いに人物フィギュアが配置され、移動しながら生活していた旧石器時代の人々の暮らしが視覚的に把握できます。
関連イベント
本展の開催に合わせて、事前申込制の関連イベントが実施されます。
7月11日(土)13時30分から平成館大講堂で開催される月例講演会「東京国立博物館で見る『旧石器時代』の魅力」では、明治大学名誉教授の安蒜政雄氏と東京国立博物館主任研究員の飯田茂雄氏が登壇し、定員380名(抽選)で聴講料は無料です(高校生を除く18歳以上70歳未満の方は入館料が必要)。
申込フォームは5月22日(金)にオープン予定で、申込期間は5月22日(金)から6月14日(日)までです。
8月1日(土)には本館地下1階のみどりのライオン(教育普及スペース)で「石器づくりの実演」が開催されます。
黒曜石の原石から石器が製作される過程が実演で紹介されます(参加者による石器づくりは不可)。
講師は岩宿博物館前館長の小菅将夫氏と飯田茂雄氏で、(1)10時30分~の回が小学生・中学生とその家族向け(定員30名・最大3名申込可)、(2)14時00分~の回が高校生以上の一般向け(定員30名・最大2名申込可)となっています。
申込期間は5月14日(木)から7月5日(日)まで(参加料無料、18歳以上70歳未満の方は入館料が必要)。
また、7月24日(金)・25日(土)には子ども向けイベント「トーハクキッズデー」で本展のギャラリートークが開催される予定です。
前3万5,000年前の石器が並ぶ展示空間で、日本の歴史が書き換わった瞬間の記録に触れられる機会です。
一般観覧料1,000円で、開館中の特別展観覧券があれば追加料金なしで入場でき、70歳以上と高校生以下は無料で観覧できます。
東京国立博物館「ビフォー縄文 旧石器時代発見80周年」の紹介でした。
よくある質問
Q. 観覧料の無料対象は何歳からですか?
A. 高校生以下および満18歳未満、満70歳以上の方が無料です。
障害者とその介護者1名も無料で、キャンパスメンバーズ会員校に在籍する学生および教職員も無料となっています。
Q. 月例講演会の申込はいつから開始されますか?
A. 申込フォームは2026年5月22日(金)にオープン予定で、申込期間は5月22日(金)から6月14日(日)までです。
定員380名で応募者多数の場合は抽選となります。
Q. 石器づくりの実演では参加者が石器を制作できますか?
A. 参加者による石器づくりはできません。
講師が黒曜石の原石から石器を制作する過程を見学する形式で実施されます。
Q. 同期間に開催されている「空海と真言の名宝」との共通観覧はできますか?
A. 弘法大師生誕1250年記念 特別展「空海と真言の名宝」(7月14日(火)~9月6日(日))は別途観覧料が必要です。
なお8月10日(月)は同特別展が閉館日ですが、本展(ビフォー縄文)は開館します。