記事ポイント
- 420GHzを超える周波数帯域で世界初となる100Gbps級無線通信を実証
- 光ファイバーを直接接合したマイクロ光コム装置で、560GHz帯・単一チャネル112Gbpsの伝送を達成
- 2030年代の6G実用化に向けた超高速バックホール通信の技術基盤が確立
徳島大学と岐阜大学の研究グループが、次世代移動通信(6G)に向けた超高速無線通信技術の大きな壁を突破します。
従来の電子技術では困難とされていた350GHz超の周波数領域において、光技術を活用した新しいシステムで100Gbps超の無線伝送が世界で初めて実証されています。
徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所「マイクロ光コム駆動型テラヘルツ通信システム」

- 研究機関:徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所・フォトニクス健康フロンティア研究院、岐阜大学工学部 ほか
- 実証周波数帯:560 GHz
- 最大伝送速度:112 Gbps(単一チャネル・16QAM変調)
- 論文掲載誌:Communications Engineering
- DOI:10.1038/s44172-026-00659-8
徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所の時実悠講師・岸川博紀准教授・久世直也教授・安井武史教授、大学院創成科学研究科の菊原拓海大学院生、同研究所の永妻忠夫客員教授、そして岐阜大学工学部の久武信太郎教授らの研究グループが、マイクロ光コム駆動型テラヘルツ通信システムを開発します。
560GHz帯において単一チャネル112Gbpsの無線伝送を実証し、420GHzを超える周波数帯域での100Gbps級無線通信としては世界初の成果となっています。
現行の5G通信ではミリ波帯が活用されていますが、2030年代の実用化が見込まれる6Gでは300GHz以上のテラヘルツ波の利用が期待されています。
一方、350GHzを超える領域では従来の電子技術による信号生成の限界と位相雑音の増大が障壁となっており、安定した高速通信の実現が難しい状況が続いています。
今回の研究はこの課題に光技術で対応し、実用水準に迫る伝送速度を初めて示したものです。
光ファイバー直接接合による小型・安定マイクロ光コム装置

窒化シリコン製の微小光共振器に光ファイバーを光学接着剤で直接接合した構造を採用しています。
従来は光学顕微鏡や多軸ステージによる精密な光学調整が必要ですが、この直接接合の構成により調整作業が不要となり、装置の大幅な小型化が実現されています。
また、励起光カップリング効率の時間安定性も大幅に向上し、高出力励起光の利用と長時間にわたる安定動作が可能になります。
マイクロ光コムは、複数の光周波数モード列が等間隔に並ぶ超離散マルチスペクトル構造を持つ光デバイスです。
高い周波数安定性と低位相雑音特性によってテラヘルツ帯における高品質な無線キャリア生成を可能にし、半導体プロセスによる大量生産に対応できるため、将来的な小型化・低価格化も見込まれています。
560GHz帯での100Gbps超伝送の実証結果

光ファイバー接続マイクロ光コムの光注入同期によって、高安定・高信号対雑音比の2波長光キャリアが生成されます。
光領域でQPSKおよび16QAMの多値変調を付与したのち、フォトミキシングで560GHzの多値変調テラヘルツ波が生成され、受信側ではサブハーモニックミキサーを用いたヘテロダイン検出で信号が復調される構成です。
実験結果として、QPSK変調で84Gbps、16QAM変調で112Gbpsの無線伝送を達成します。
従来技術による数十Gbps級を大幅に上回る伝送速度であり、420GHz以上の未踏周波数帯における100Gbps級無線通信の実現可能性が世界で初めて示された成果です。
6Gバックホール通信への応用と今後の展開
本研究の成果は、6Gにおける超高速モバイル・バックホール通信および光・無線融合ネットワーク実現への技術基盤として位置づけられます。
今後はマイクロ光コムのさらなる低位相雑音化によって信号品質を高め、より高次の変調方式による大容量化が視野に入ります。
大気吸収の影響が小さい周波数帯の選択やテラヘルツ波の高出力化、高利得アンテナの導入によって、実用的な通信距離の拡張も進められる予定です。
本研究は、総務省の委託研究開発事業「電波資源拡大のための研究開発(JPJ000254)」および持続可能な電波有効利用のための基盤技術研究開発事業(FORWARD)「次世代移動通信のための光コム駆動型テラヘルツ基準周波数信号源の研究開発(JPMI240910001)」として実施されます。
成果はCommunications Engineering誌に掲載されており、関連特許3件も出願済みです。
なお、「Photonic 6G」は徳島大学の登録商標(登録第6537005号)です。
560GHz帯での単一チャネル112Gbpsという伝送速度は、現行5Gのピーク速度を大きく上回るものであり、光ファイバー直接接合という簡素な構造で実現した点が実用化への大きな前進となっています。
マイクロ光コム駆動型テラヘルツ通信システムが6Gインフラの中核技術として開発が続けられています。
徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所「マイクロ光コム駆動型テラヘルツ通信システム」の紹介でした。
よくある質問
Q. マイクロ光コムはどのような特性を持つ技術ですか?
A. 複数の光周波数モード列が等間隔に並ぶ超離散マルチスペクトル構造を持つ光デバイスで、電気的手法と比べて桁違いに高品質な超高周波信号の生成が可能です。
高い周波数安定性と低位相雑音特性を備えており、半導体プロセスによる大量生産にも対応しているため、将来的な小型化・低価格化が期待されています。
Q. 今回実証された技術と従来技術の伝送速度の違いはどのくらいですか?
A. 従来の電子技術ベースの手法では350GHz超の領域において数十Gbps級の伝送が限界ですが、今回のシステムでは同帯域を超える560GHz帯で単一チャネル112Gbpsを達成しています。
420GHzを超える周波数帯で100Gbps級の無線通信が実証されたのは世界初となります。
Q. この研究はどの機関の協力で行われましたか?
A. 徳島大学・岐阜大学を中心に、名古屋工業大学・山梨大学・情報通信研究機構・徳島県立工業技術センターの研究者が参画しています。
資金面では総務省の委託事業に加え、内閣府の地方大学・地域産業創生交付金事業、日本学術振興会(JSPS)のJ-PEAKSプログラムなど複数の支援を受けています。