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映画『インサイド・ヘッド2』『モアナと伝説の海2』の舞台裏に迫る!ディズニー「"観客の琴線に触れる"国内戦略」

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2024年『インサイド・ヘッド2』『モアナと伝説の海2』が興行収入50億円を突破する大ヒットを記録した「ディズニー」

その成功の背景には、"観客の琴線に触れる"ディズニーの国内戦略があります。

今回、日本における配給・劇場の宣伝戦略を統括するディズニー・ジャパンのゼネラルマネージャー佐藤英之氏が、洋画市場が大きく変化するなかでディズニーがどのようにヒット作品を生み出し続けているのか、そして国内の興行主との強固なパートナーシップやローカルエリアでの取り組みの様子などについて語るインタビューを、日本およびハリウッドの映画シーンとエンタテインメントビジネスに精通した武井保之氏の考察とともにお届けします。

 

ディズニー「"観客の琴線に触れる"国内戦略」

 

インサイド・ヘッド 2

© 2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

 

邦画の好調が大きく取り上げられた、日本映画製作者連盟が2025年1月に発表した「2024年(令和 6 年)全国映画概況」

一方で、洋画作品が伸び悩む状況も取りあげられ、洋画において興行収入が10億円を超えた作品が2023年は15本であったのに対し、2024年は10本。

振り返ると2010年代後半は邦画と洋画の興収比率は5対5ほどでしたが、コロナ禍を経て7対3ほどになり、ハリウッドをはじめとする海外発の作品のヒット数や公開規模が縮小傾向にあります。

今回、ディズニー・ジャパンのゼネラルマネージャー佐藤英之氏が語るインタビューを、武井保之氏の考察とともにお届けします。

 

邦画人気と洋画市場を待ち受ける新たな課題

 

賞レースで注目を集めた『名もなき者 / A COMPLETE UNKNOWN』のような骨太な実写映画から、『インサイド・ヘッド 2』や『モアナと伝説の海 2』 をはじめとするファミリー向けのアニメーション作品を幅広く取り扱うディズニー映画の配給機能を統括しているウォルト・ディズニー・ジャパンのゼネラルマネージャー佐藤英之氏。

特に若い世代と洋画の間に生まれた距離について佐藤氏は

邦画に親近感を覚えやすいこともあるでしょう。

家族や友人など身の回りのストーリーとして見ることができ、自分ごとに捉えやすいテーマも多いことが魅力。

と話します。

 

まだ記憶に新しいですが、2023年のハリウッドでは、全米脚本家組合と米映画俳優組合の約半年におよぶストライキにより映画製作が停滞し、洋画大作の供給が減速。

強力な作品不足によって洋画全体の興行が下がったのが実態といえます。

加えて、コロナ禍の洋画供給が滞った時期に、邦画の実写大作やアニメの話題作がシネコンのスクリーンを独占し、大作以外の洋画の上映機会が激減していることも、観客が洋画に触れる機会が少なくなった理由と言えるでしょう。

 

洋画の年間興収の40%以上を占めたディズニー 洋画市場の中で存在感を高める

 

インサイド・ヘッド 2

© 2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

 

そのような状況の中でも洋画すべてが低調ではなく、ディズニーは昨年夏の公開作から今年にかけてコンスタントにヒットを重ね、洋画全体興収の実に43%を占めています。

2024年に日本で公開されたアニメーション作品の興行収入は『インサイド・ヘッド 2』(53.6億円)、

 

モアナと伝説の海2

© 2024 Disney. All Rights Reserved.

 

公開中の映画『モアナと伝説の海 2』(公開中/50億円超)、また実写映画でも『ライオン・キング:ムファサ』(21.1億円)と『デッドプール&ウルヴァリン』(20億円)がそれぞれ1位、2位にランクインするなど、多くの邦画実写をしのぐ大ヒットとなっています。

前述の日本映画製作者連盟の発表では、洋画復活の糸口として「多様な作品性」と「10億円規模ヒットの安定的な供給」を掲げていました。

2025年のディズニーはまさにそれを実現し、洋画興行を下支えしつつシーンをけん引する存在になっているといえるでしょう。

 

ヒット創出へつなげるタッチポイントとディズニーならではの“体験”の創出

 

フランチャイズ

 

ディズニーがヒットを生み出し続ける背景には、観客と作品をつなげるタッチポイントの多さにあります。

グッズや音楽、テーマパークなどリアルな体験も含めて、人々の生活のなかで作品の世界観やキャラクターに触れる機会をどのように提供し、増やしていくかが重要な役割を果たしています。

その最たる例が「ディズニープラス」です。

過去作品をいつでも視聴でき、日常的にキャラクターに触れられるタッチポイントを提供することが、『インサイド・ヘッド 2』や『モアナと伝説の海 2』のようなシリーズ作品への関心を高める要因になったといっても過言ではありません。

同時に、ここ数年ディズニーが注力しているのが「ローカル戦略」

全国各地で映画館を運営する興行主と協力し、映画を見る前後に作品の世界に没入できる取り組みを展開しています。

 

モアナと伝説の海2_アクアボール

『モアナと伝説の海 2』アクアボールづくりワークショップの様子

 

『インサイド・ヘッド 2』では風船でキャラクターを作るバルーンアート制作、『モアナと伝説の海 2』ではガラスの瓶に「モアナ」たちの浜辺のシーンを再現するアクアボールづくりなど、映画館やショッピングモールなど全国12か所で実施し、500名以上が参加。

また沖縄では男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」とコラボレーションし、試合のハーフタイムに地元の高校生が『ライオン・キング:ムファサ』の主題歌を合唱するイベントを行うなど、ファミリー層や若い世代への“体験”を通じたコミュニケーションによる思い出作りに尽力しました。

 

佐藤氏はこれら施策の成果に確かな手応えを感じており、

作品の世界観に没入できるさまざまな体験からは、親子のたくさんの笑顔が生まれます。

子どもの頃の楽しかった記憶はずっと心に残り続けるでしょう。

そしてそれがまた次の作品でも映画館に来たいと思う原動力になると同時に、次世代にファンをつなげていくことにも繋がります。

と振り返り、国内戦略において都市圏以外のローカルエリアでの取り組みに意欲をみせます。

 

パートナーシップが生み出す新たな映画体験

 

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イオンシネマ板橋に設置された特大オリジナルアート

 

作品ごとの宣伝を兼ねた施策と同時に「パートナー戦略」にも注力。

2025年1月、イオンシネマ全国24劇場に、ディズニーを象徴する「ディズニー」「ピクサー」「マーベル」「スター・ウォーズ」の個性豊かなキャラクターが描かれた特大オリジナルアート(シーニック)を掲示しはじめました。

ディズニーの世界観に没入できる特別な体験が、映画館を訪れる人々にブランドへの愛着を育み、映画体験をより豊かにすることを目指してこの取り組みがスタートしました。

 

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左から)イオンエンターテイメント 代表取締役社長・藤原信幸氏、ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 代表取締役社長 キャロル・チョイ氏

 

イオンエンターテイメント 代表取締役社長・藤原信幸氏は

ディズニーとのパートナーシップをさらに強化することで、映画鑑賞を超えた感動体験を創出し、映画を通じた新たな出会いや海外文化との触れ合いを提供していきます。

と語り、ディズニーとともにエンターテインメントの可能性を探求しながら、洋画の楽しさを広く伝えていくことを掲げています。

 

佐藤氏は、

いかに観客の琴線に触れる体験機会を作り出すかが重要だと考えています。

マーケティングや宣伝部隊とも連携しながら、よりよい作品を世にお届けし、それらがすべて噛み合うことで観客数の伸びに繋がっていくと信じています。

今年は昨年からの良い流れを引き継ぎ、ヒット作品を着実に積み重ねていくことがディズニーとしての挑戦です。

と語っています。

 

洋画市場の活性化に向けた地殻変動が続く2025年

 

2025年は、他社作品で『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』『ジュラシック・ワールド/復活の大地』といったハリウッドが誇るビッグタイトルが目白押しです。

洋画作品の魅力を伝え続けることが求められるなか、2025年『白雪姫』や『リロ&スティッチ』『ズートピア 2』などの話題作を擁するディズニーが、豊かな映画体験や、多様なタッチポイントの拡充を通じて、洋画市場を活性化させ、映画業界全体の発展を後押しすることが期待されています。

 

「子どもの頃の楽しかった記憶は心に残り続け、また映画館に来たいと思う原動力になる。」

ディズニー映画『インサイド・ヘッド 2』、『モアナと伝説の海 2』を興行収入50憶円突破のヒットに導いた"観客の琴線に触れる"ディズニーの国内戦略を紹介しました。

監修:武井保之氏

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