サイカは、マーケティングを統合的に分析する手法「MMM」の日本国内での利用実態を明らかにすることを目的とした、「MMM市場調査」を実施しました。
サイカ「MMM市場調査」
【調査概要】
・調査主体 :サイカ
・調査実施機関:インテージ
・調査方法 :インターネットリサーチ
・調査地域 :日本国内
・調査時期 :2024年5月24日~27日
・調査対象者 :年商100億円以上の企業に勤める係長以上の会社員
・回答数 :409
サイカは、マーケティングを統合的に分析する手法「MMM」の日本国内での利用実態を明らかにすることを目的とした、「MMM市場調査」を実施。
調査の結果、MMMを認知しているマーケターは約3割に留まりますが、MMMを積極的に活用している企業では、MMMの限界を理解し、MMMの先にある新たな選択肢を模索していることがうかがえました。
一方で、MMMを認知していないマーケターが約7割であることを鑑みると、マーケティング先進企業とそうでない企業のデータ活用における格差が拡大していることも推測されます。
マーケティングの効果測定においては、データに基づく「ブランド蓄積効果の可視化」と「各施策の改善点の解明」が今後の課題となりそうです。
【調査の背景】
MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)は、データドリブンなマーケティングを実践するためのマーケティング分析手法の一つです。
オンライン・オフラインのマーケティング施策だけでなく、競合・天候など広告以外の外部要因を含めて統合的に分析し、各施策が売上に与える影響を可視化します。
マーケティング先進国アメリカでは約8割のマーケターが認知し、約半数の企業が実践している(*1)手法ですが、2020年時点での日本企業の導入率は約1割に留まっていました(*2)。
このような背景を踏まえ、サイカは国内での最新のMMM利用実態を知るため、「MMM市場調査」を実施しました。
【調査結果サマリ】
1. MMMを認知しているマーケターは約3割に留まる。
一方、MMM導入数は2021年に約2.7倍と急増して以降増加傾向
2. MMM導入者の41.8%が「マーケティング戦略策定」を目的に導入。
MMMに期待される「最終成果への直接効果や波及効果(間接効果)の可視化」と「最終成果予測」のうち、「最終成果予測」の実現には課題が残る
3. MMM導入時点で重視するのは「分析結果の納得感と活用のしやすさ」「提供企業の高い分析技術とマーケティング知識」
4. MMMの年間費用は2,000万円以上。
価格が導入のネックに
5. MMM活用の先にある新たな課題は「ブランド蓄積効果の可視化」と「各施策の改善点の解明」
【調査結果】
1. MMMを認知しているマーケターは約3割に留まる。
一方、MMM導入数は2021年に約2.7倍と急増して以降増加傾向
a. 本調査を実施する前のプレ調査として、マーケティング担当者125名にMMMの認知・導入状況を確認すると、MMMを「導入している・知っている・興味がある」と回答したのは30.4%に留まることがわかった。
b. 次に、本調査にてMMMの導入経験者にMMMの導入時期を聞くと、2020年の導入者が6.1%なのに対し、2021年は16.3%と約2.7倍になっており、2021年にMMMの導入数が急増したことがうかがえる結果となった。
2020年にGoogle、Appleがサードパーティクッキー廃止を発表し、2022年3月には日本でも改正個人情報保護法が公布されたことで、サードパーティクッキーの代替手段としてMMMを導入・検討する層が増えたことが増加の要因の一つと推測される。
MMM導入数は2022年以降も増加傾向にあり、MMMの市場自体は拡大傾向にあるものの、認知・導入状況を合わせて見ると、マーケティング業界全体にはいまだ十分に浸透していないことがわかる。
2. MMM導入者の41.8%が「マーケティング戦略策定」を目的に導入。
MMMに期待される「最終成果への直接効果や波及効果(間接効果)の可視化」と「最終成果予測」のうち、「最終成果予測」の実現には課題が残る
a. MMMの導入経験者にMMM活用の目的を聞いた。
第1位が「マーケティング戦略策定に活用する(41.8%)」、第2位が「データを蓄積する(35.7%)」となっており、データ利活用の基盤としてMMMを活用していることがうかがえる。
一方、上申や意思決定への利用は3割以下に留まる。
b. MMMの導入経験者に興味・関心層を加え、導入前、MMMに期待したことを聞いた。
TOP3は、「最終成果(KGI)に直接つながる直接効果や波及効果(間接効果)を加味した分析ができる(25.6%)」「データを基に将来の最終成果(KGI)を予測できる(21.9%)」「認知度や指名検索数などの中間成果(KPI)ではなく、売上や販売数などの最終成果(KGI)に対するマーケティング効果を可視化できる(20.5%)」となっており、施策の直接効果だけではなく波及効果(間接効果)も加味した分析をおこない、精度の高い最終成果予測が期待されている。
c. さらに、MMM導入経験者に、MMM導入によって実現できたことを聞いた(*3)。
上の「MMMに期待したこと」と比較すると、「最終成果(KGI)に直接つながる直接効果や波及効果(間接効果)を加味した分析ができる(24.1%)」は一定実現できているように見える。
一方、「データを基に将来の最終成果(KGI)を予測できる(19.0%)」と「認知度や指名検索数などの中間成果(KPI)ではなく、売上や販売数などの最終成果(KGI)に対するマーケティング効果を可視化できる(17.7%)」は、期待に対して多少の落ち込みがあった。
3. MMM導入時点で重視するのは「分析結果の納得感と活用のしやすさ」「提供企業の高い分析技術とマーケティング知識」
a. MMMの導入経験者に興味・関心層を加え、MMMを導入する際に重視するポイントを聞いたところ(*4)、TOP2は、「分析結果の納得感や実務での活用のしやすさ(16.9%)」「提供企業のスキルの高さやマーケティング知識の豊富さ(12.6%)」となった。
分析精度の高さや、マーケティング活動の実態に沿ったわかりやすく納得感のある分析が求められていることがわかる。
4. MMMの年間費用は2,000万円以上。
価格が導入のネックに
a. MMM導入経験者にMMMにかける年間費用を聞いたところ、「2,000万以上」が最も多かった。
b. MMMの導入経験者に興味・関心層を加え、導入時の不安・懸念点を聞くと、第1位が「価格(費用対効果)(39.8%)」となり、価格が導入時の最大のネックになっていることがわかった。
また、第2位が「レポートの内容(わかりやすさや示唆・提案の充実性)(30.3%)」、第3位が「分析結果の納得感や実務での活用のしやすさ(29.9%)」となっており、分析結果を理解し、施策へ落とし込めるかという点でも不安・懸念を感じていることがわかった。
5. MMM活用の先にある新たな課題は「ブランド蓄積効果の可視化」と「各施策の改善点の解明」
a. MMM導入経験者にMMMの分析結果をマーケティングにどのくらい活用できているかを聞いたところ、67.3%が「活用できているが課題はある(31.6%)」「ある程度活用できているが課題が多い(35.7%)」と回答。
b. さらに、MMMを現在導入している方の課題感を深掘りすると、「MMMで分析できない新たな課題が出てきている(16.9%)」が第1位となった。
c. 「MMMで分析できない新たな課題が出てきている」と回答した対象者に対してMMMで解決できない課題について聞くと、「予算配分の最適化はできるが、施策自体をどのように改善すればよいのかがわからない(20.0%)」「広告出稿後、数年~十数年にわたって最終成果(KGI)につながるブランド蓄積効果がわからない(20.0%)」がTOP2に挙がった。
分析結果を得たあとに具体施策へ落とし込むフェーズと、ブランド蓄積効果の可視化に新たなマーケティング課題があると考えられる。
(*1) ニールセン・メディア、Facebook、Googleによるコンソーシアム最新レポート「マーケティング・ミックス・モデリングを活用して広告のパフォーマンスを向上させる方法」発行のお知らせ
(*2)企業の広告宣伝担当者212名に聞いた 広告の効果測定方法に関するアンケート調査 2020年版(株式会社サイカのプレスリリース)
https://www.atpress.ne.jp/news/213842
(*3) 2aの設問で「あてはまるものはない」と回答した方を除いているため、2aと2cでn数が異なる
(*4) 2aの設問で「あてはまるものはない」と回答した方を含めているため、2bと3aでn数が異なる
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