東京都企業立地相談センターは、日本製鉄発のスタートアップ企業「KAMAMESHI 代表取締役社長 小林 俊氏」に取材を行い、その内容を東京都企業立地相談センターホームページにて2024年8月6日に公開しました。
東京都企業立地相談センター「KAMAMESHI」インタビュー
東京都企業立地相談センターは、日本製鉄発のスタートアップ企業「KAMAMESHI 代表取締役社長 小林 俊氏」に取材を行い、その内容を東京都企業立地相談センターホームページにて2024年8月6日に公開。
■製造業をフラットにつなぎ、共に未来を創る仲間を増やす
東京都大田区を拠点とする株式会社KAMAMESHIは、日本の製造業を支える新しい仕組みづくりを目指す、日本製鉄株式会社発のスタートアップ企業です。
一度聞いたら忘れられないインパクトある社名は、製造業全体を「同じ釜の飯を食う仲間」にしていきたいという想いを込めて名付けたとのことです。
代表取締役社長の小林 俊氏に、創業までの経緯、事業内容、東京立地のメリットについて取材しました。
■仲間と事業案を検討、社長に直談判し日本製鉄発のスタートアップが誕生
大学時代から製造業の中小企業とつながりがあるという小林氏。
日本製鉄に入社して10年が経った頃、小林氏は製造業の課題解決のために何かしたいと、志を同じくする仲間を集めて事業検討の取り組みをスタートします。
「私たちが重要課題と捉えたのは“設備の老朽化”です。
いろいろな現場を見せてもらうと、主力で動いているのは一番古い設備というところがとても多い。
老朽化した設備は維持負担が大きく、部品調達に時間がかかる、部品が廃盤になって入手できないなど、復旧をあきらめざるを得ないケースも。
突発的な設備故障が致命傷になって廃業する中小企業も少なくありません。
一方で、設備部品は大量ロットでの購入が必要となるため、各社が過剰在庫として抱え、廃棄されることも多い。
そこで、製造業の業界を横につなぐ仕組みをつくることで、リソースを補完し合いながら課題を解決していくことを目指しました」
チームで検討を重ねてつくり上げた事業案は、経済産業省・JETRO主催の「始動 NEXT Innovator 2021(グローバル企業家等育成プログラム)」のDEMO DAY優秀賞を受賞。
代表の小林氏は米国シリコンバレー派遣選抜者に選ばれます。
「起業を決意したのは2023年です。
日本製鉄に社内起業制度はなかったので、これまでの実績をテコに社内でPRし、最終的には社長に挑戦させてほしいと直談判しました。
幸いにして『応援する』と快く許可をいただき、日本製鉄社員のまま、出向というカタチでKAMAMESHIの社長を務めています」
■在庫管理システムで登録企業と部品数を増やしマッチングへ
2024年4月、同社は中小製造業者向けの設備部品管理・マッチングプラットフォーム「Kamameshi」の有償版をリリース。
サービスの概要と特徴を伺いました。
「設備一つとっても必要な部品は山のようにあり、数千点もの部品の予備をすべて持つのは現実的に不可能です。
それでも各社何かしらの部品を持っているので、それをうまくマッチングできればと考えました。
しかしマッチングのためだけに登録する会社はないので、まずは部品の社内在庫管理システムを提供。
これは、現場の棚卸でQRコードを使ったり、廃盤品情報の見える化をしたり、在庫管理の効率化をサポートするサービスです。
もう一つは会員制の部品売買プラットフォーム。
商社や問屋にも滞留している部品が山のようにあるので、Kamameshiに登録して不要なものをさばいてもらうことを目的にしています。
この二つをメインに、まずは中堅企業をターゲットにして、会員数と登録部品点数を増やしていこうと考えています」。
リリースから4カ月で既に導入を決めた企業が60事業所以上あり、2024年度中に200事業所の導入を目指しているとのこと。
「もともと設備保全をやっていた人間がシステムを開発しているだけにユーザーの利便性が高いことが、他社が提供している在庫システムとの大きな違いです。
また、同社には日本製鉄の元々の付き合いやネットワークを活用して広げていけるのも強み。
日本製鉄の社員やグループ会社の協力も追い風になっています」
■大田、東京立地のメリット~意思決定者のいる本社が多く、国内外のアクセスが容易
KAMAMESHIが創業地として選んだのは大田区創業支援施設「六郷BASE」。
六郷BASEにはフリーアドレスのコワーキングスペース、半個室型のシェアードオフィス、完全個室のオフィスの3タイプがあり、同社はコワーキングスペースに入居しています。
「ここを選んだ理由は大きく3つあります。
一つは、大田区は創業支援が手厚くスタートアップに有利であること。
二つ目は、大田区には製造業の中小企業が多く、顧客になり得る企業がすぐ近くにいること。
三つ目は、利用料金が格段に安いことです。
実際に入居してみると、スタッフと利用者の距離感が近く、イベントや展示会などを通じて大田区内の企業とつないでくれるなど協力的で助かっています。
大田区の斡旋制度による融資が決まったのも、紹介された大田区内で開催されたピッチイベントがきっかけでした」
続いて東京都立地のメリットを伺いました。
「何より、東京には企業の本社が多いですよね。
工場を地方に移しても本社は東京にあるケースが多く、最終的な意思決定者が近くにいるメリットは大きいと実感しています。
加えて、国内外どこへ行くにも東京は有利です。
これからは九州や北海道など、遠隔地へ行く機会も増えますし、2024年からどんどん海外にも出張に行く計画です。
実はKamameshiの在庫管理システムは中国語、タイ語、英語、インドネシア語が使用可能。
日系企業の海外拠点の在庫管理も一元化できると利便性が高まるので、各国ならではの課題も見つけてさらに会員企業を広げていきたいと考えています」
工場見学会や交流会、セミナーや勉強会などを企画運営している