毎日放送は、4月28日(日)ひる0時54分から放送するMBSテレビ『俳句×SDGsの未来教室』(関西ローカル)を俳句に精通するコラムニスト・犬山紙子氏に放送前に見ていただき、その率直な感想をコラムとして公開しました。
『俳句×SDGsの未来教室』は、『プレバト!!』でもおなじみの夏井先生と、SDGsに詳しい編集者・南麻理江氏が全国で実施している出張授業の様子をお届けし、「俳句」と「SDGs」の2つの視点で地球の未来を見つめる教養バラエティ番組です。
毎日放送 MBSテレビ『俳句×SDGsの未来教室』
【コラム内容】
犬山紙子
俳句を詠むようになって、季語を知るようになって、自然にはただそこにある姿だけでなく、その景色を一皮剥けば、膨大な人々の感情を内包しているのだなと思うようになった。
この原稿を書いている今は4月で春、花の季節である。
これまでも桜が咲く姿には多幸感のようなものを感じていたけれど、「桜蕊降る」という季語を知ってからは桜の花びらが散ったあと、しばらくした後に小さな蕊がこぼれるように降る時期があることを知り、その姿からは春がそろそろ終わる静かで儚い気持ちを感じ取るようになった。
季語を通して、自分と自然がリンクし、自然が少しずつ自分ごとになってゆく感覚。
散歩をするだけで、たくさんの感情に出会えることは、なんだかこの世に祝福されているような、くすぐったい喜びがある。
曇りの憂鬱な気持ちも、花曇りであると思えば、その憂鬱は美しさを伴うようになる。
こういったギフトのような感覚は夏井いつき先生に教えてもらった。
夏井先生の俳句の授業が見られるということで、うきうきしながら「俳句×SDGsの未来教室」を見る。
生徒たちが季語について、「手触り、匂い、目、音、連想、味」の六つの感覚をもとにグラフにしてゆく。
白シャツがお題の時に「味」の値を高くした生徒は「汗でしょっぱいから」と答えている。
白シャツを「味覚」で捉えたことがなかったけれど、これから白シャツを見ると「しょっぱい」と思うようになるんだろう。
しかし、この番組は俳句や季語の授業だけでは終わらない。
SDGsに詳しい南さんが、古来から愛されてきた日本の季語が、環境破壊や温暖化などの影響でその意味がずれてきてしまうことを解説してくれるのだ。
例えば、温暖化の影響により桜がダラダラ咲いてしまうようになってしまうかもしれないというのだ。
桜といえば散る姿の美しさが私たちの心を動かすのに。
その姿に乗せた感情たちの行き場もなくなってしまう。
けれどもただ脅すだけではない。
「じゃあ、どうすれば良いのか」「どういう方法で回復しているのか」まで提示してくれる。
ここがすごく大切なところだ。
まずは、私たちに季語を通して季節や自然、身の回りのものを6感を使って味わい、知ることを教える。
次に、その豊かさはこのまま行くと持続可能ではなくなってしまう現状を伝える。
それをふまえた上で、その季語が使われている俳句を見せ、俳句の意味がぐっと変わってしまうことを考えさせる。
しかし、私たちの行動でそれらを持続可能なものに戻すことができるというメッセージを伝える。
とても丁寧に番組が構成されていると感じる。
俳句の持つ力を信頼しているからこそ、この構成になるんだろう。
私自身、SDGsに対して興味関心を持って本を読んだり、学んだりしていたけれど、これらの問題をどう自分ごととして捉えるか、という点にとても苦戦していた。
だからこそ俳句という、自然環境が自分ごととなる文化を通してSDGsを知る、というその方法になるほど!と膝を打ったのだ。
娘にも見せたいと思っている。
自分の住む世界の美しさを、それを守りたいという気持ちが自分ごととして芽生えるように思うからだ。
最後に、SDGsには「ジェンダー平等を実現しよう」という項目がある。
多くのテレビ番組では、まだまだ「男性の先生が、無知という設定の女性に教える」という構図が多く見られ、そこに悪意がなくとも「偉いのは男性である」という刷り込みが発生してしまう。
けれどもこの番組の先生は女性である。
全ての先生が女性である必要はない。
けれども、教える側の性別のバランスが是正されてゆくことも、ジェンダー平等を実現する中の一つのアクションであると私は思っている。
そういった意味でも、この番組は本当によく考えられて作られていると感じるのだ。
【番組概要】
『俳句×SDGsの未来教室』
2024年4月28日(日) ひる0:54~午後1:54
【出演】
夏井いつき(俳人)
南麻理江(編集者)
村山輝星(俳優)
清水麻椰(MBSアナウンサー)
【内容】
MBSテレビ『プレバト!!』(木・よる7:00放送)の俳句査定でお馴染み、俳人・夏井いつき先生は、SDGsに詳しい編集者・南麻理江氏と、全国の高校で出張授業を行っている。
身近な言葉を「俳句」と「SDGs」という2つのレンズから眺めると世の中が立体的に見えてくる!言葉に対するイメージが大きく変わる特別授業「未来教室」の斬新な内容とは!?
授業の様子を視聴者と同じ目線で見届けるのは、『プレバト!!』の俳句査定で3回連続「才能アリ」を獲得している俳優・村山輝星と、『プレバト!!』でアシスタントを務める清水麻椰アナウンサー。
夏井いつき先生と南麻理江氏が訪れたのは、兵庫県神戸市滝川第二高等学校1年1組。
言葉のテーマは、回転寿司。
寿司ネタは五感で感じるともっと美味しい!?近い将来、多くの魚が食べられなくなる!?高校生の言葉の感覚を研ぎ澄ますべく、夏井先生が用意したのは「味の感覚」「手触りの感覚」「匂いの感覚」「目の感覚」「音の感覚」「連想」の6項目が記載された六角形のグラフ。
生徒たちは「鮪」という言葉から直感でそれぞれを5段階で数値化し、各々の六角形を描いていく。
しかし、そこから俳人・夏井先生の講義を受けると…数値がみるみるうちに大きくなり、六角形が変わっていく。
俳句の視点で五感が刺激され、言葉に対するイメージが変化したのだ。
続いて、南氏の講義が始まり、さらにSDGsの観点が加わる…乱獲や温暖化の影響でマグロやサバが危機に瀕している現実を知り、生徒たちは「自分が見えているものだけじゃないんだなと思いました」「発想がいろいろ飛んでとても新鮮な体験でした」「新しい視点で物事を考えることができました」と授業を受けていく中で、言葉を深堀りしていく。
村山輝星は「連想がスゴく増えた」、清水アナは「いかにうかうか生きてたのか…28歳の私は焦ってます」と、この授業に大満足。
昨年の5月から行っている2人の全国出張授業は、生徒の97%が「おもしろかった」と答えている。
北海道東川高等学校では、洋服という言葉をテーマに特別授業を行う。
「白シャツ」という夏の季語を例に、生徒たちは六角形のグラフを描き、俳句の視点から…SDGsの観点から…様々な見方・考え方で、ものごとを捉える力を養っていく。
言葉の探究をすることで、明日から違う世界を見る。
そういう目を持つ人間が育っていくに違いない。
新発見だらけの楽しく学べる教養バラエティだ。