神奈川大学の菊地恵太教授登場!ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所 インタビュー記

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ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所は、グローバル化社会における幼児期からの英語教育の有効性や重要性に関する情報を、IBSのホームページ上で定期的に発信しています。

今回は、「demotivation(学習意欲の減退)」という分野で日本を代表する研究者、菊地 恵太教授(神奈川大学)にお話を伺いました。

 

ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所 インタビュー

 

 

<インタビュー記事のまとめ>

●モチベーションが下がる外的要因は、教師に関する要因、授業の内容や特質、授業環境や教材など。

内的要因は、学習者の失敗経験、学習者の英語に対する興味の欠如など。

さまざまな要因が絡み合って学習意欲の減退につながる。

 

●それぞれのdemotivator(学習意欲を減退させる要因)にどれくらい敏感に反応するかは、学習者によって異なる。

また、学習者は変化していく。

一人の学習者や一時点の状態を見て決めつけないように注意しなければならない。

 

●生徒の「自律性・有能感・関係性」という三つの欲求をバランス良く満たすカリキュラム構築や授業実践は、生徒のモチベーション低下について教師ができることの一つ。

また、ポジティブ感情を育てて幸福感を得られるものの幅を広げることは、英語学習のモチベーションにつながる可能性がある。

 

 

■モチベーションが下がるのはなぜ?「やる気がない」「原因はこれ」と決めつけないように注意

「がんばりたいと思っていたのに、いまは当時ほどやる気がない」。

そんなふうに英語学習のモチベーションが下がってしまったとき、どのような要因が関係しているのでしょうか。

菊地教授の研究では、外的要因(教師に関する要因、授業の内容や特質、授業環境や教材など)や内的要因(学習者の失敗経験、学習者の英語に対する興味の欠如など)が明らかになり、さまざまな要因が絡み合ってモチベーションの減退に影響することがわかりました。

「それぞれの要因の重要さは、目の前にいる一人ひとりの学習者の反応を見ながら考えていくことでもあります」と話す菊地教授。

demotivator(学習意欲を減退させる要因)があったとしても、それに敏感に反応してやる気が低くなる生徒もいれば、やる気に影響しない生徒もいるからです。

さらに、学習者が変化することも明らかになり、「この子はやる気がない」とラベル付けをして「学習者の特定化」をしないよう気をつけなければならない、とのこと。

「研究を重ねていくうちに、『この生徒はいまはやる気が低くなっているけれど、今後はどうなるのかな』という観点を持たなければならないと思うようになりました」と話します。

 

 

■モチベーションが下がらないように教師ができることはある?

菊地教授によると、学生たちの「自律性」や「有能感」、「関係性」という欲求(※)をバランス良く満たせるよう考えながらカリキュラムを構築したり、授業を実践したりすることは一つの方法です。

「先生に名前を覚えてほしい」、「全員の名前を覚えてくれる先生はすごく記憶に残る」という「関係性」の欲求を満たすことでモチベーションが低下しない、という大学生の意見を聞き、「なるほどと思いました」と話す菊地教授。

「私の場合は、褒めるというよりも『気にかけている』ということを伝えるようにしています。

また、『今日はここが良かった』と具体性を持ったフィードバックを与えることも心がけています」と話します。

また近年は、ポジティブ心理学を活用した授業も実践。

「アルバイトに力を注いでいる学生のように、お金を稼ぐことで幸福感を得ている人に対して「英語を学びなさい」と言っても、英語学習のモチベーションは上がらないですよね。

いろいろなことに対して幸福感が増えて、幸福感を得られるものの中に英語学習が入っていればいいわけなんです。

ですから、『学習意欲が減退しないようにする』ということよりも、『学習者のポジティブ感情をどう増やすか』ということを考えています」とのこと。

授業の実践例も紹介いただきました。

(※)自律性は、自分の学習に関することは自分で決めたいという欲求。

有能感は、学習で求められる目標を達成できることへの欲求。

関係性は、自分の学習に対する環境に関わる人(教師やクラスメートなど)と良い関係でいたいという欲求(Ryan & Deci, 2000)。

 

 

取材後記:英語学習そのものではなく「幸福感」にアプローチ

日本では、英語を学ぶ最大のモチベーションが高校や大学の入学試験になっている人が多いでしょう。

そのため、比較的英語力が高い学生が集まる大学や学部であっても、入学後にモチベーションが下がり、英語学習のやる気が下がっていく学生がいるようです。

菊地教授の研究成果やお話からは、日本の大学生たちの本音が垣間見え、いかに日本で英語学習のモチベーションを維持することが難しいか、いかに教師が生徒のモチベーションをコントロールすることが難しいかがわかります。

ポジティブ心理学を取り入れた菊地教授の考え方は、多くの英語学習者や教師・親にとって新鮮なのではないでしょうか。

どんなに忙しくても、自分がポジティブな気持ちになれることや幸せを感じられることに気づいたり自分で見つけたりしてやろうとする。

そういう人が英語を学んでいるときにも幸福感を感じられるのであれば、英語学習のモチベーションにつながる。

「英語学習」だけではなく、日常生活に目を向けてみると、そこにモチベーションを維持するヒントがあるのかもしれません。

(取材:IBS研究員 佐藤 有里)

 

 

【菊地 恵太教授Profile】

神奈川大学 国際日本学部 国際文化交流学科 菊地 恵太教授

専門は、英語教育、教育心理学(特に英語学習者の個人差)。

主に、日本の学習者を対象とした英語教育の方法について研究。

現在は、英語学習者へのアンケート調査やインタビューをもとに、学習者のモチベーションを中心に研究しながら、教員が学習者の心理をどのように理解し、教室内でどのようにふるまうべきか、また、カリキュラムをどのように構築するべきか、といったテーマに取り組んでいる。

ハワイ大学マノア校にてM.A. [修士] in ESL [第二言語としての英語]、テンプル大学にてEd.D. [博士(教育)], Curriculum, Instruction, and Technology in Education with Specialization in TESOL [TESOLを専門とした教育におけるカリキュラム、指導、テクノロジー] 取得。

早稲田大学 国際教養学部 客員講師(専任扱い)、東海大学 外国語教育センター 専任講師・准教授、神奈川大学 外国語学部 准教授・教授を経て、2023年度より現職。

 

※詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記の記事を確認してください。

前編:

英語学習のモチベーションが下がってしまうのはなぜ?〜神奈川大学 菊地 恵太教授インタビュー(前編)〜

後編:

英語学習のモチベーションが下がってしまうのはなぜ?〜神奈川大学 菊地 恵太教授インタビュー(後編)〜

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