エルステュディオインターナショナルがメディアプロデュースする現代アート画家 尾形純氏の絵画展『尾形純 絵画展「月冴ゆる庭」』が、韮崎大村美術館にて2023年12月2日(土)より開催されます。
韮崎大村美術館『尾形純 絵画展「月冴ゆる庭」』
■韮崎大村美術館企画展 尾形純 絵画展「月冴ゆる庭」 概要
会場 : 韮崎大村美術館
http://nirasakiomura-artmuseum.com/
内容 : 上記サイトの展覧会より確認してください。
会期 : 2023年12月2日(土)~ 2024年2月25日(日) 10:00~17:00
休館日: 水曜日、1月1日
現代アートの難しさを吹き飛ばす「色の立体感」。
抽象画というジャンルに、日本の伝統的な色彩・景色を籠める画風の尾形純氏。
尾形氏の絵は、≪枯れては巡る、季節の美しさ≫を表すように、年を経ていくことで風合いを変えていきます。
そんな、まるで日本庭園のように有機的なアート作品。
その源流は、意外にも「西洋的な裏打ちされた技術」にあるといいます。
先月韓国光州のアートフェアでの展示を終え、既に2024年も多くの海外展・国内博物館への参加が決定するなど画家として活躍する尾形氏。
修復家としての顔も持つ彼の、その独特な「庭」を思わせる作風のルーツに迫ります。
古色を作る、西洋画的なルーツとは?
尾形純氏と言えば、「古色」と呼ばれる日本独自の色彩・和の色が特徴だが、意外なことにそのルーツは伝統的な西洋画にあるといいます。
元々が油画志望だったこともありますが、東京藝術大学の大学院の坂本一道教授の研究室での影響も大きい。
15~17世紀の西洋の古典技法を研究する中で、「手板」と言って、ファンアイクやルーベンス、レンブラントなどの地塗りや描画のサンプルを作って学びました。
「当時の巨匠は真っ白いキャンバスではなく、先に【有色の地塗り】を施していました。
最初に塗った色彩に対して、色の吸収や反射を見て、色を活かし、作品を作りあげていく……元の色にどうやったって影響される。
塗り重ねると更に表情が変わります」
例えば、銀色の地塗りに赤を入れることで現れるピンクと、元から塗るために作ったピンクでは、全くニュアンスは違います。
色に対する考え方や手法で、一番影響が濃いのはこの【地塗り】だと、尾形氏は言います。
塗った色のポテンシャル、色彩力が発揮されていくその原理を意識して形成していった結果、今のスタイルが出来ました。
もう一つ、尾形作品のルーツには【修復家としての技術と感性】があります。
尾形氏は学生時代の恩師の紹介で修復の工房に入門し、その後、文化庁の在外研修でニューヨークに渡るという稀な経歴を持ちます。
これらの経歴の中で磨いた技術も、【地塗り】の話と地続きです。
そして、修復家に必要とされるのは、「必要な色」「欲しい色」を的確に作ることです。
「新しいものに古来の良さが必ずあります。
歴史的・古典的な美術スキルを勉強しないと得られない『深さ』を実感しました」
地塗りを知り、修復家として活動したことで「美術史に残る名画の見方」はがらりと変わりました。
同時に、画家としての【キャンバスの捉え方】にも大いに影響したといいます。
「こうしたい」「こうじゃない」と悩みながら描く中で、尾形氏は、確かな手ごたえを感じるようになりました。
脳裏に浮かべた情景に見合う色にたどり着くことができるようになったのです。
これは、「自分の考えに、技術がマッチしたから」であり、その根底に、「修復で培った感性」があるといいます。
修復家としての自分がアーティストとしての自分を更に育て、相乗効果を生んでいます。
尾形作品のガイド、「和の庭の見立て」~絵を理解するための【はしご】とは~
「伝統の世界には詰将棋みたいな厳しさ、描写への追求があり、それに取り憑かれた時期もあります。
ただ私は描き途中に現れる、不明瞭なゆらゆらした画面に惹きつけられました」
やがて抽象画・現代アートへと舵を切ったのは、予測できる世界のリアリティを追求する絵ではないものが描きたくなったから。
巨匠の後追いではなく、自分だけの絵があるのではないかと迷う中で確立した「色」。
その色が「和」に結びつき、「和の庭の見立て」にたどり着くまでには、ある画商との出会いがありました。
画商は、英語のタイトルを付けていた尾形氏の絵に「どうみても和の色だから」と別の提案をしました。
「こぼれ剥ぎ」や「花筏(はないかだ)」などの和菓子のような名前です。
のちに、この理由が、「画商が実は茶人であったため」だったことを、尾形氏は知ります。
更に、画商は「花影(かえい)」という言葉を持ち出し、「桜の花の影は見る人の心によって、いろいろなものに見えます。
その様子が尾形さんの絵にぴったりだ」と告げました。
これこそが、実は、作品群『花影』シリーズの由来になるエピソードなのです。
また『禅之庭』(会場:インターコンチネンタルホテル)というイベントを行ったことも、尾形作品と「和」「庭」の親和性を深める切っ掛けになりました。
「海外からの来客が多いイベントで『貴方の絵は日本庭園だね』と言われました。
そこで、改めて庭園を訪れて散歩したり、また古典作品を手に取ったり、僧侶と出会ったりするうちに『確かに』と思う節が出てきました」
尾形氏自身、作品を庭に見立ててみれば、しっくりときました。
また画家として最初こそ「言葉にすること」に違和感があったが、直に説明することの重要性に気づきました。
「例えば『この絵は雪の景色だ』と伝えると、(鑑賞していたお客さんが)『あー、私も雪の日のお寺でこの雪景色、見たことある』と自分の体験と重ねることがあります。
色面だけの画面でも色のソースを伝えることで、見る人は自分自身の経験を絵に投影して解釈することが出来る……そうなれば、見ている方は僕の世界に、はしごを渡るみたいに入ってきてくれます。
庭に見立てることは、自分の作品を理解してもらうための【はしご】だと気づきました」
「庭の見立て」で深い理解を得られるようになれば、例え表現が抽象的であっても、そのまま「色」を受け取ることができるようになります。
そのときに成立する【作る者と鑑賞する者との相互理解】を尾形氏は大事にしています。
庭に見立てて作品を描くことの多い尾形氏ですが、実在の庭を念頭に置くというより、心象風景や空気感をそのままに作品に籠めています。
そんな尾形氏の次の挑戦が、実際の庭とのコラボレーションです。
舞台になる韮崎市韮崎大村美術館は韮崎大村記念公園内に建てられ、園内には「創新苑」という庭園が造成されています。
この実際の庭園と、そこからインスピレーションを得て創作する「心象風景としての庭園(絵画)」を双方楽しむことが出来る仕掛けです。
尾形氏の作品は、時に凹凸のある立体的なシリーズも含めて、昼夜、また時の流れ、時節柄の光の差によって、絵の表情や見栄えが変化し、その状況に馴染んでいくことを善しとして「日々目にさらされ、一緒に過ごす」前提で創作されます。
環境による表情の変化も含め、その場を彩る尾形氏の現代アートは、存在自体が「中庭」のような魅力を持っています。
そうして時に住民の、時にお客様のコミュニケーションのツールともなる作品だからこそ、パブリックアートとして迎えられることも多い。
今回は絵画展でもあり、訪れる場所ありきのパブリックアートイベントとしても楽しめる稀有な催しもの。
場合によっては、インスタレーションのような見方もできます。
実際の冬の庭とともに、尾形純の世界の「庭」、その不思議な色・風合いを楽しむまたとない機会です。
同時に、年明けには【大村智館長と尾形純氏の対談】も決定。
創新苑の傍らに静かに佇む館長の生家を改築した蛍雪寮にての、またとない機会に注目が集まります。
その他、節分にはアーティストトーク・作品解説あり。
プロフィール
尾形純 現代アート画家
東京都出身。
東京藝術大学大学院美術研究科修了。
恩師の紹介で修復の工房に入門し、文化庁の在外研修でニューヨークへ留学。
Rustin Levenson Art Conservation Associates Ltd.にてインターンを経験。
以降、数々の名画修復に携わる修復家としても活躍。
画家としては、日本の伝統色を思わせる落ち着いた色彩を基調にし、庭や自然風景を見立てた作風で脚光を浴びる。
国内の個展に加え、ニューヨーク、ロンドンなどのセレクト展、その後、シンガポール・東南アジアへと活躍の場を広げ、今に至る。
2019年ベトナム政府主催「The Exhibition of Finest Art Works From Representative Asian Artist in Hanoi - Vietnam 2019 」では、アジア圏各国の作家を一堂に会する中、唯一の日本人作家として招聘された。
また近年は、ホテルやレジデンス、レストランなどの【パブリックスペースのアート制作】にも注力している(代表:銀座ミシュラン一つ星レストラン REIKASAI GINZA、グランフロント大阪オーナーズタワー、琉球ホテル&リゾート 名城ビーチ、ホテルメトロポリタン鎌倉など)。
作品集 「十の庭 庭に宿る抽象」(2021年)、作品集 GOKUSUI 「曲水」(尾形仮山名義・2022年)を出版。
尾形純氏の作品に関する問い合わせ先
メール: [email protected]
HP : https://jun-ogata.com/japanese/