1位「信越化学工業」、2位「任天堂」!リスクモンスター第12回「金持ち企業ランキング」調査

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リスクモンスターは、第12回「金持ち企業ランキング」調査結果を発表しました。

 

リスクモンスター第12回「金持ち企業ランキング」調査

 

・調査名称   :第12回「金持ち企業ランキング」調査

・調査方法   :決算書の分析結果に基づく調査

・調査対象決算期:2023年7月1日時点で開示されていた

2022年4月期決算以降の最新決算

・調査対象企業 :金融機関(銀行、証券会社、保険会社等)を除く、

決算短信提出企業

・調査対象企業数:3,192社

 

リスクモンスターは、第12回「金持ち企業ランキング」調査結果を発表。

第12回「金持ち企業ランキング」は、1位「信越化学工業」、2位「任天堂」、3位「ファーストリテイリング」となりました。

2023年3月期決算における上場企業の純利益合計は2期連続で最高益を更新しており、好調な業績推移が見られますが、今回調査対象企業3,192社のNetCashの増減を集計したところ、前回調査から11.3ポイント増加の50.6%の企業においてNetCashが減少した結果となりました。

また、ランキング上位100社の約9割で株主還元策を強化していることがわかりました。

これは、前回調査時点では「企業業績は好調だが、事業環境が不透明であるためNetCashを積み増そう」と考えていた企業の一部が、今回調査では、コロナ禍の終息などにより事業環境が好転するという見込みから、「設備投資や株主還元を進めたことでNetCashが減少した」という動きに転じたものと推定されます。

企業が事業の成長を促進するために、有利子負債などの他人資本を用いて、積極的に投資を行っていくという手法は、経済全体における資金循環量の増加につながり、景気の底上げに寄与しうる取り組みとも言えます。

「Cash is King」という言葉があるように、現金の保有は企業経営において最重要といえる要素ですが、企業や経済の成長のためには、カネを循環させるという考え方もまた非常に重要です。

本ランキング上位企業には、自社の安定と成長のバランスを取りながらも、日本経済への積極的な貢献を期待します。

▼本調査の結果は以下掲載サイトでも見ることができます。

https://www.riskmonster.co.jp/study/research/

▼動画版はこちら「YouTube リスモンちゃんねる」

[調査結果]

(1) 上位20社のうち14社でNetCashが増加

上場企業の決算短信(金融機関除く)の記載に基づきNetCash(※)を算出した結果、「金持ち企業ランキング」の1位は「信越化学工業」(NetCash1兆4,198億円)でした。

次いで「任天堂」が2位(同1兆2,637億円)、「ファーストリテイリング」が3位(同9,080億円)となり、以下「リクルートホールディングス」(同8,421億円)、「SUBARU」(同6,669億円)、「SMC」(同5,914億円)、「ファナック」(同5,125億円)と続きました。

「信越化学工業」は、2023年3月期決算における大幅増収増益によってNetCashが増加した結果、2018年実施の第6回調査以来の1位となりました。

上位20社にランクインした企業のうち14社において、前回調査よりもNetCashが増加しており、2社(信越化学工業、任天堂)が1兆円の大台を超えています。

前回順位との比較では、「東京エレクトロン」(前回20位→今回9位)や「日揮ホールディングス」(同33位→同19位)がランクアップしています。

「日揮ホールディングス」は、前期の赤字から今期300億円の黒字に回復し、多額のCashを獲得したことで上位進出となりました。

(図表A)

図表A

※日本会計基準:

NetCash=現預金 - (短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + 一年以内返済の長期借入金 + 一年以内償還の社債 + 割引手形)

※国際財務報告基準:

NetCash=(1)現預金 - 有利子負債 または、(2)現預金 - (借入金 + 社債 + 割引手形)または、(3)現預金 - (短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + 一年以内返済の長期借入金 + 一年以内償還の社債 + 割引手形)のいずれかで算出。

なお、トップ100については、図表Bにまとめました。

(図表B)

図表B

(2) 20社のうち6社が無借金経営!

金持ち企業ランキング上位20社の「現預金」、「有利子負債」、「営業キャッシュフロー」について、それぞれ集計したところ、現預金では、「信越化学工業」、「任天堂」、「ファーストリテイリング」、「リクルートホールディングス」、「SUBARU」が上位となりました。

有利子負債においては、「任天堂」、「ファナック」、「東京エレクトロン」、「キーエンス」、「ネクソン」、「塩野義製薬」の6社が0円であり、営業キャッシュフローでは、「信越化学工業」、「SUBARU」、「リクルートホールディングス」、「ファーストリテイリング」、「東京エレクトロン」の順に多い結果となっています。

有利子負債1,000億円超の企業は4社のみとなっており、多額の現預金を有するだけでなく、有利子負債の少なさが金持ち企業ランキング上位の要因となっています。

(図表C)

図表C

(3) 業績好調推移の影響か、有利子負債・株主還元実施企業が増加

NetCashの増減について集計を行ったところ、調査対象3,192社のうち、50.6%の企業においてNetCashが減少しており、前回調査(39.3%)から11.3ポイント増加する結果となっています。

また、ランキング上位100社においても、NetCashが減少した企業は43.0%となっており、前回調査(21.0%)から22.0ポイント増加しています。

現預金の増減について集計を行ったところ、3,192社のうち、1,722社(53.9%)において現預金が増加しており、現預金が減少した企業は半数以下に留まっています。

2023年3月期決算における上場企業の純利益合計は、2期連続で最高益を更新しており、好調な業績推移に伴って現預金が積み上がったとみられます。

他方、有利子負債の増減について集計を行ったところ、3,192社のうち、1,847社(57.8%)において有利子負債が増加していることが明らかとなりました。

(図表D)

図表D

また、前回ランキング上位100社に対し、現預金の増減と株主還元策の関係について調査したところ、自社株買いおよび増配などの株主還元策を実施している企業は、100社中89社(89%)となっています。

2022年における上場企業の自社株買いは、過去最高の9兆3,900億円を計上していることから、利益の株主還元が進んだこともNetCashが減少した一因であると考えられます。

(図表E)

図表E

[総評]

第12回金持ち企業ランキングは、第8回から第11回まで4回連続2位の「信越化学工業」が第6回調査以来の1位となりました。

ランキング上位企業の特徴として、多額の現預金を保有している点や、有利子負債が手元の現預金で返済可能な範囲に留まっている点が挙げられます。

また、多くの企業において事業拡大の方法として、借入により手元の現預金を増やす(財務レバレッジを効かせる)ことで、本来の体力よりも大きな投資を行い、それによってより多くの利益を獲得する方法が採られている中、ランキング上位企業は、有利子負債が少ない状態ながら、20社すべてにおいて営業キャッシュフローを創出できています。

今回の調査結果において、前回まで増加傾向にあったNetCashが減少傾向に転じた点については、前回調査時点で「企業業績は好調だが、事業環境が不透明であるためNetCashを積み増そう」と考えていた企業のうちの一部が、今回調査では、コロナ禍の終息などにより事業環境が好転するという見込みから、「設備投資や株主還元を進めたことでNetCashが減少した」という動きに転じたものと推定されます。

企業が一定の現預金水準を保ちながら、営業キャッシュフローの中で新たな事業展開を推し進めていくという手法は、企業の安全性を高め、安定的な事業運営を進めていく意味では重要な考え方と言えます。

他方で、企業が事業の成長を促進するために、有利子負債などの他人資本を用いて、積極的に投資を行っていくという手法は、経済全体における資金循環量の増加につながり、景気の底上げに寄与しうる取組みでもあるため、今回の調査結果におけるNetCashの減少傾向は、決して悪い傾向ではないと考えられます。

「Cash is King」という言葉があるように、現金の保有は企業経営において最重要といえる要素ですが、企業や経済の成長のためには、カネを循環させるという考え方もまた非常に重要です。

その観点で、本ランキングの上位企業には、自社の安定と成長のバランスを取りながらも、日本経済への積極的な貢献も期待されます。

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