GSアライアンスは、リチウムイオン電池から取り出されるブラックマスと呼ばれるリサイクル材料を用いたリチウムイオン電池を開発!
コバルトやニッケルなどの金属を抽出して電池を再生する現行の方法ではなく、直接、独自の加工手法により作成された正極を用いたリチウムイオン電池です。
GSアライアンス「リチウムイオン電池」
GSアライアンスは、リチウムイオン電池から取り出されるブラックマスと呼ばれるリサイクル材料を用いたリチウムイオン電池を開発しました。
コバルトやニッケルなどの金属を抽出して電池を再生する現行の方法ではなく、直接、独自の加工手法により作成された正極を用いたリチウムイオン電池。
ブラックマスとは、リチウムイオン電池から取り出されるリサイクル材料。
見かけは黒い粉体であり、コバルト・ニッケル・マンガン・リチウムなどのレアメタルを含んでいます。
リチウムイオン電池に必要なコバルト、ニッケルなどのレアメタルの産出はロシア、中国、アフリカなどの特定の地域に偏在していて、政治的供給不安や価格変動のリスクが常にあります。
よって、リチウムイオン電池をリサイクルすることが理想。
現在では、ブラックマスから硫酸、塩酸などの危険な化学物質を用いてコバルト、ニッケルなどの金属を抽出して、再びリチウムイオン電池の正極とするなどの検討が行われています。
ですが、この工程は作業員に対して危険で、機械設備、環境にも負担がかかります。
この金属抽出過程を経ることなく、ブラックマスから独自工程により直接正極を作成し、それを用いたリチウムイオン電池を開発。
携帯電話、スマホ、タブレット、電気自動車などの、世の中のあらゆる電子機器に使用されているリチウムイオン電池の、大幅なコストダウンが期待される電池です。
研究の内容
GSアライアンスの森良平博士(工学)は、硫酸などを用いる金属抽出の工程を経ることなく、ブラックマスから直接、新しい正極材料を作り直し、そのような正極を用いたリチウムイオン電池を開発。
開発したリチウムイオン電池は、市販のNMC111(LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2)と呼ばれる正極材料を用いたリチウムイオン電池と比較して、約85%の初期的電池容量を示しました。
またサイクル安定性も、市販のNMC111に匹敵する良好な結果に。
このようにして作るリチウムイオン電池は、金属抽出工程を省くことができ、環境への負荷も下がり、また、ブラックマス自体の価格もリサイクル材料であり安くなります。
リチウムイオン電池の価格構成を大きく占める正極材料としての価格も、汎用の半分以下の価格にすることが可能です。
今後は、電池容量、サイクル安定性のさらなる向上、そして、これらのブラックマスを用いたリチウムイオン電池関連製品を、国内外の顧客へサンプル供給される予定です。
開発の社会的背景
人口爆発による地球温暖化(沸騰化)、森林の消滅、砂漠化、生物種の絶滅、水汚染、プラスチック汚染などの環境破壊は深刻になってきています。
地球温暖化の主な原因は、メタンやCO2などの温暖化ガスの急増といわれています。
今後は太陽光発電や風力発電などの石油、石炭などの化石燃料に依存しない、再生可能エネルギーを利用することが理想。
しかしながら太陽光発電や風力発電は曇り、雨や夜の時間、風が吹かない時間などは発電しにくく、電気供給が不安定。
よって、電気をためることができる蓄電が非常に重要になります。
蓄電池(二次電池)を社会に普及させれば、持続可能な開発成長を目標とする(SDGs)社会のための、クリーンな再生可能エネルギーに依存する世の中の構築も可能に。
代表的な蓄電池である現行のリチウムイオン電池は価格が高く、また原料であるコバルト・ニッケル・マンガン・リチウムなどのレアメタルの産出はロシア、中国、アフリカ、南米などの特定の地域に偏在しており、供給不安や価格変動のリスクが常にあります。
例えばコバルトにおいては、コンゴ民主共和国が世界の産出量の約半分を産出していますが、政治的不安定性から生じる供給不安や、児童労働搾取、コバルト鉱石の大量掘削作業による水質汚染、土壌汚染などが課題となっています。
よって、リチウムイオン電池をリサイクルして再生する試みが世界中の大学、研究機関、企業で検討され始めています。
欧州連合(EU)においては、蓄電池のリサイクルを域内で義務づける規制を導入し、主要材料のリチウムは使用済み電池から2027年までに50%、31年までに80%を再資源化される計画です。
GSアライアンスが開発した「リチウムイオン電池」の紹介でした。