ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所は、グローバル化社会における幼児期からの英語教育の有効性や重要性に関する情報を定期的に発信。
今回は、外国語能力・スキルの熟達化と関連が深い第二言語習得における「自動化」を研究する神奈川大学の「鈴木祐一」准教授のインタビューを紹介します!
ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所「鈴木祐一氏インタビュー」
ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所は、外国語能力・スキルの熟達化と関連が深い第二言語習得における「自動化」を研究する神奈川大学の「鈴木祐一」准教授のインタビューを公開。
なぜ英語習得は難しいのか、どうしたら習得できるのか、という疑問を出発点に、「鈴木祐一」先生は第二言語習得における「自動化」についての研究を開始。
研究により、スピーキングのパフォーマンスによってネイティブ・スピーカーと上級レベルの学習者を見分けることは難しいものの、それぞれが持っている知識(前者は暗示的知識、後者は自動化された明示的知識)は区別できることがわかったそうです。
意識的に学んだ知識も素早く使えるようになる、つまり、「自動化」が起こる、ということです。
「以前は、『ネイティブ・スピーカーが持つような暗示的知識をどのように身につけられるか』という視点から第二言語習得の研究が行われていました。でも、明示的知識であっても自動的に使えるようになればコミュニケーションを取れる、というもう一つの習得プロセスも重要であるという考えに基づく研究が少しずつ増えてきています。」とも「鈴木祐一」先生は言います。
また、日本語のネイティブ・スピーカーと学習者(中国人留学生)の脳活動をMRIで調べた共同研究(Suzuki et al., 2022)では、文法的に間違っている文を聞いたときに活動する脳領域が違うことが判明。
ネイティブ・スピーカーは「運動前野」が活動し、学習者は「大脳基底核」が活動していました。
どちらも「手続き的知識」に関わる脳領域。
手続き的知識は、ことばで説明できないようなタイプの知識で、何回も繰り返し使うことで自動的に、無意識に、瞬時に使えるようになります。
日本語が上級レベルの中国人留学生は、学んだ知識を少し自動的に使えるようになっているけれど、ネイティブ・スピーカーが使っていない大脳基底核を使っているので、まだ完全な手続き的知識にはなっていない、ということです。
そのため、「ネイティブ・スピーカーのような暗示的知識」ではなく、「意識的に学習した知識を素早く使える手続き的知識(完全に自動化する前段階)にする」が第一のゴール地点、という考え方もできる、と話す「鈴木祐一」先生。
機械的なドリル練習(穴埋め問題、並び替え問題、和文英訳などのパターン・プラクティス)で終わるのではなく、ドリル練習で覚えた知識を使う活動やタスクを行うことが大切とのこと。
「似たような語彙や文法をいろいろな状況で繰り返し使ったり集中的に使ったりする環境を整えることが一番重要なのではないかと思います。暗示的学習と明示的学習のどちらかが効果的か、片方の学習方法だけでやったほうがいい、ということではなく、うまく組み合わせながら最適な条件をつくっていくことが重要なのではないでしょうか。」と「鈴木祐一」先生はおっしゃっています。
主に教室で英語を学ぶ日本のような環境では、知識の「自動化」を第一ゴールとして、「覚える」と「使う」をうまく組み合わせて相乗効果を生み出す「練習」が重要に。
ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所が実施した、神奈川大学准教授の「鈴木祐一」氏インタビューの紹介でした。