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英語学習のやる気についてインタビュー!ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所

投稿日:2022年12月19日 更新日:

ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所が、明治大学に所属する応用言語学、心理言語学、第二言語習得研究が専門の廣森友人教授にインタビュー!

「英語学習のやる気は伝染する?」などのテーマについて解説しています。

 

ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所 廣森教授インタビュー

 

 

「ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所」では、グローバル化社会における幼児期からの英語教育の有効性や重要性に関する情報を定期的に発信しています。

今回は、英語学習の動機づけの研究をしている明治大学の廣森友人教授に、「やる気が英語学習にどのように影響するか?」「日本の環境でやる気を高めたり維持したりするためには、どのような学習方法や授業が効果的か?」についてインタビュー。

廣森教授は、やる気は英語学習の成果に大きな影響を与える要因の一つで、「やる気がどれくらいあるか」(強さ)、「やる気がどこを向いているか」(方向性)は、学習の認知プロセスや学習の継続、学習方法等に影響することや、「英語を学びたい」(内発的動機づけ)を育てるためには、「自律性」、「有能感」、「関係性」という三つの心理的欲求をバランス良く満たすことが大切ということ、そしてペアワークやグループワークには、「やる気の伝染」という効果が期待できることを解説しました。

 

 

いろいろな個人差が「学習成果」の散らばりをどのくらい説明できるか(説明率)などを調べた先行研究によると、「言語適性」(言語を習得するために重要な認知的能力)は24%(Li, 2016)、「動機づけ」は14%(Masgoret & Gardner, 2003)。

つまり、言語適性に次いで動機づけが学習成果に強く影響する個人差要因であることがわかっています。

廣森教授は、変化する可能性がより高い学習動機や学習方略などの要因に注目して研究を始めました。

廣森教授によると、学習は、特定の情報への「気づき」→「理解」→「内在化」→「統合」というプロセスで進み、情報が長期記憶として蓄えられることでいつでも使える知識となります(廣森, 2015)。

この「気づき」のプロセスにモチベーションが関係することが明らかになっています(Schmidt,  2012)。

さらに、日本で英語を学ぶ場合、英語を話せなくても生活できる環境にあるため、英語圏で学ぶ場合よりもモチベーションの重要度が高いことを指摘。

実際に、モチベーションを低下させる要因(demotivation)を調べる研究において、日本は世界のトップを走っているとのことです。

また、モチベーションの違いによって学習方法や学習スタイルが変化することもあれば、逆に特定の学習方略を使うことで勉強がうまくいった成功体験がその後のモチベーションに影響を与えることがわかっています。

どのような動機づけが効果的な学習方法につながるか、という疑問については、「教科だけではなく、コミュニケーションの道具として使うという動機を持てると、アウトプットにも目が行き、インプットとアウトプットのバランスが取れた効果的な学習方法につながるのではないか」という見解を話しました。

 

 

廣森教授がいま関心を持って取り組んでいるのが「英語学習における『やる気の伝染』メカニズムの解明」という研究。

周りの人の行動を観察しながら、自分の価値観を内在化する「代理学習」は、英語学習でも起こるのではないかという発想がヒントになっています。

廣森教授は「日本は、良くも悪くも同調圧力が強い社会なので、ほかの文化圏と比べて周りの影響を受けやすいのではないかと思います。この社会的・文化的な特徴をうまく使って、例えば、周りに良い影響を与えられる学習者をクラスやグループの中に意図的に配置することで、グループ・ワークを活性化することができるか、ということを調べています。」とコメントしました。

英語の授業中にグループワークをする際、リーダー役の存在によって取り組みやパフォーマンスがどう変わるかを調べる実験を実施した結果、グループダイナミクス(集団力学)やグループのパフォーマンスに、ある程度の効果がある可能性が示されました(Hiromori et al., 2021)。

「従来は、いかに一人の先生が30〜40人の生徒のモチベーションを高めるかということを考えてきましたが、もし、学生同士がお互いにモチベーションを高め合える方法がわかってくれば、『やる気が高まる教室』が実現するのではないかと考えています。」と廣森教授は言います。

しかし、リーダー役にその役割を実際に果たしてもらうにはどうすればよいか、学習者のモチベーションや英語力をどのように組み合わせてグループ分けをするかなど、実験をデザインするうえで多くの課題が残っています。

このようなグループワークの研究は、変数が増えて複雑になるため、世界的に見ても研究数は多くありません。

「おそらく、親御さんにしても先生にしても、同じような感じで同じように教えているけれど、出てくる成果はまったく違う、ということはありますよね。私も、同じ学年で同じような英語力の学生に同じ授業を教えていても、『がんばろう』という雰囲気がクラスによって違うので、とてもおもしろい研究テーマだと思っています。」

日本では、2025年までに小学校の学級規模の標準を従来の40人から35人に引き下げることが決まりました。

少人数学級とICT活用の両輪で「個別最適な学びと協働的な学び」を実現しようとする計画です(文部科学省, 2022)。

一人の教師が大人数の生徒を相手に一斉授業を行う教育から、一人ひとりの個人差に合わせた学習、生徒同士が学び合う学習を重視する教育が強く求められるようになったことが伺えます。

「やる気が出ない」「やる気が低い」といった課題は、これまで本人の学習方法や教師の指導方法を変えることで解決しようとする考え方が主流でした。

しかし、「やる気の伝染」の仕組みが明らかになれば、生徒たちの個人差をポジティブに捉えてうまく活用し、あらゆる教師があらゆる教室でやる気が高まる授業を実現することができると予想されます。

廣森教授が取り組む「やる気の伝染」に関する研究は、英語教育に限らず、教師にとって現実的な解決策を提案してくれる可能性を秘め、今後ますます注目が高まることが考えられます。(取材:IBS研究員 佐藤 有里)

 

英語学習のやる気について分析。

ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所 廣森教授インタビューの紹介でした☆

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