人とおもちゃの絆をコミカルかつドラマティックに描いたピクサーの大人気シリーズ「トイ・ストーリー」
「ウッディ」と「バズ・ライトイヤー」を中心に、たくさんのおもちゃが登場し大冒険を繰り広げる、大人から子供まで楽しめる究極のエンターテイメント作品です。
2019年7月12日にはシリーズ最新作『トイ・ストーリー4』が公開され、世界中を感動の渦で包み込んでいます。
今回は、そんなピクサー『トイ・ストーリー4』の制作に携わった日本人スタッフの小西園子さんにインタビュー。
これまでほぼ全てのピクサーの長編作品に参加された小西さんに、最新作『トイ・ストーリー4』のみどころや、過去の作品への思い入れなど、貴重なお話を伺いました☆
ピクサー『トイ・ストーリー4』インタビュー
今回お話を伺ったのは、ピクサー・アニメーション・スタジオのテクニカル・ディレクターを務める小西園子(こにし・そのこ)さん。
1994年8月にピクサーに入社、シリーズ最初の作品である「トイ・ストーリー」のセット・ドレッシングとライティング、そしてコマーシャルを担当されました。
その後、ピクサーのほぼ全ての長編作品に参加され、ピクサー作品の歴史とともに歩んでいる小西さんですが、『トイ・ストーリー4』の制作決定の一報をうけた時には驚きを隠せなかったようです。
小西さん:
率直に、「トイ・ストーリー3」よりも面白い作品を作りたいと思いました。
「トイ・ストーリー3」よりも面白い作品でなければ、作る意味がない。みんなで意見を言いあって、これは面白そうだと思えるまで、納得のいくまで話し合いました。
ストーリーが良くなければ作る必要がないと割り切っているのがピクサースタジオ。
自信を持って世に送り出せる作品ができたと思っています。
キャラクターの髪や服を動かす「シミュレーション」でリアルさを追求
大きくわけて8つの工程にわたってアニメーション制作をしていくピクサー。
『トイ・ストーリー4』において、小西さんはキャラクターの髪や服を動かす「シミュレーション」というセクションを担当しています。
プログラムを使って衣服や髪の毛を本物のように動かす「シミュレーション」は、アニメーション制作の現場とは思えない「リアル」な手法によって行われていました。
小西さん:
『トイ・ストーリー4』では、“テーラリング”と呼ばれる、衣服の部分に携わりました。
いまの「ウッディ」たちの持ち主である「ボニー」や幼稚園の子どもたちの服を作ったんです。
手法としては、画面上のマネキンに衣装を着せて、「このシーンではこんな感じに動く」というのをプログラムしていくのですが、これが結構大変でした。
「ボニー」は走ったり飛び回ったりと動きのあるシーンが多かったのですが、子供服はピチッと体型に密着しているものが一般的で、生地に余裕がないので、リアルに表現するのが難しかったですね。
技術の進化によっておもちゃの“素材感”をよりリアルに再現できるように
前作「トイ・ストーリー3」が公開されたのが既に9年前。
20年以上にわたり愛されている「トイ・ストーリー」シリーズですが、CGアニメーションの制作環境にもめまぐるしい変化があったといいます。
小西さん:
実は、“シミュレーション”という技術が、「トイ・ストーリー」と「トイ・ストーリー2」の時代には存在していなかったんです。
いまでこそ、“シミュレーション”によって髪や衣服などを本物のように動かすことができるのですが、「トイ・ストーリー2」までは衣服のシワなどは全て手で入れていたんですね。それは本当に大変な作業でした。
やがて、“シミュレーション”という技術ができて、服や髪の毛に動きをつけたり、時間の流れを表現したり、動きをデザインすることが可能になりました。
そうすると、キャラクターの感情もより繊細に表現できるようになりましたね。
逆に、技術が進化したことによって、「もっといいものをつくろう」「先のことを考えよう」と、これからもっともっと挑戦できることがたくさんあると思わされました。
CGであることを忘れてしまうような、リアルな映像美の『トイ・ストーリー4』
テクノロジーの進化によって、CGだからこそ実現できたこともあると話します。
小西さん:
あえてCGらしく見せるということはないのですが、CGだから実現できたのは、「ボー・ピープ」の歩き方。
『トイ・ストーリー4』では、陶器の人形らしくカクカクした歩き方で表現されています。
これまでの作品では人間のようになめらかな動きだったのですが、『トイ・ストーリー4』では腕などはあまり動かさないようにしたり、しなやか過ぎないように表現しています。
素材に忠実な動きを、よりリアルに再現できるようになったということですね。
技術の進化によって、シリーズを重ねるごとにおもちゃたちの素材感を忠実に再現できるようになっていった「トイ・ストーリー」
小西さんは、『トイ・ストーリー4』では「ダッキー&バニー」のふわふわ感がお気に入りと話します。
小西さん:
『トイ・ストーリー4』では「ダッキー&バニー」のあのふわふわとした可愛いキャラクターが好きですね。
特に、ふわふわなキャラクターがポコポコと喧嘩をしたり、飛びかかったりしているところがものすごくよくできているので、楽しく何回でも見直してしまいます。
アンティークショップの中も、ものすごくリアルにできていて、まるで匂いまでしてきそうな雰囲気は本当にすごいなと思いました。
これまでの作品は決して過去のものではない
20年以上にわたり愛されている「トイ・ストーリー」シリーズですが、これまでの作品は決して過去のものではないと小西さんは話します。
小西さん:
映像の美しさで言えば、当然ながら「トイ・ストーリー」と『トイ・ストーリー4』では全然違います。
でも、ストーリーはタイムレスですから、作品の魅力や価値は変わらないと思っています。
ピクサーの作品はポップカルチャーを取り入れないのがひとつの特徴で、いつの時代にも作品の魅力をタイムレスに感じることができるんです。
シリーズ最初の「トイ・ストーリー」を公開時に観たときと、大人になってから今観たときでは、感じるものが違うのではないでしょうか。
「トイ・ストーリー」シリーズを、2世代、3世代で愛してくれる人もいると思いますが、世代をまたいで何度も観てくれることで、深みがでてくる作品だと考えています。
最後に、小西さんからメッセージをいただきました。
小西さん:
『トイ・ストーリー4』は、「トイ・ストーリー3」を越えている作品です。
これまでは子供たちの物語の中のおもちゃという視点だったように感じましたが、今回は「ウッディ」を主軸にしたストーリー。
「トイ・ストーリー」シリーズに携わってきたメンバーと完成した作品を観たときに、こういう人生もあるんだってお互いに考えてしまいました。
夜のカーニバルのシーンはものすごくロマンティックで素敵なので、ぜひ観ていただきたいと思います。
『トイ・ストーリー4』にテクニカル・ディレクターとして参加された小西園子さん。
最新作『トイ・ストーリー4』のみどころだけでなく、「トイ・ストーリー」「トイ・ストーリー2」「トイ・ストーリー3」の制作の舞台裏までお話してくださりました。
小西さんが『トイ・ストーリー4』で手がけた「シミュレーション」をはじめとしたピクサー映画の制作の裏側について学ぶことのできる展示会を、東京・六本木ヒルズにて開催中。
これまでの「トイ・ストーリー」シリーズ作品を大迫力の映像美で楽しめる4K UHDブルーレイも発売されています。
最新作『トイ・ストーリー4』とあわせてチェックしてみてくださいね!
「PIXARのひみつ展 いのちを生みだすサイエンス」開催情報
会期:2019年4月13日(土)〜9月16日(月・祝) ※会期中無休
会場:六本木ヒルズ展望台 東京シティビュー 六本木ヒルズ森タワー52階
開館時間:10時00分〜22時00分(最終入館21時30分)
入場料:【一般】1,800 円、【高校生・大学生】1,200 円、【4歳〜中学生】600 円、【シニア(65歳以上)】1,500 円
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会場限定ピクサーグッズも登場!「PIXARのひみつ展 いのちを生みだすサイエンス」
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こちらで詳しく紹介しています!
「トイ・ストーリー」シリーズ 4K UHDブルーレイ
これまでのブルーレイをより進化させ、より臨場感溢れるエキサイティングな映像体験を約束する新しいメディア<4K UHD = 4K Ultra HD>ブルーレイ。
“映像革命”ともいえる圧倒的なクオリティーを誇るメディアフォーマットで、「トイ・ストーリー」シリーズ3作品が登場しています☆
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取材協力:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2019 Disney/Pixar