記事ポイント
- 表面粗さが耐食性を最も強く左右
- ランダムフォレストがR2=0.670を達成
- 膜厚約2,200 nmを境に粗さの役割が反転
芝浦工業大学の研究グループは、アルミニウム合金上のベーマイト皮膜について、サビにくさを決める構造的特徴をAIで定量的に解明しました。
膜厚と表面粗さの組み合わせにより、粗さの役割が保護から腐食因子の侵入経路へ変わる現象を世界で初めて発見・実証しています。
芝浦工業大学『アルミニウム合金コーティングの 「サビにくさの理由」』

- 研究機関:芝浦工業大学 工学部 石崎貴裕教授(先端材料研究室)の研究グループ
- 対象:蒸気コーティング法でアルミニウム合金上に形成したベーマイト皮膜
- 掲載日:2026年8月18日(火)
- 掲載誌:『npj Materials Degradation』(オンライン)
- 論文タイトル:Interpretable Machine Learning Reveals a Morphological Regime Shift Governing Pitting Resistance in Steam-Coated Boehmite Films
- DOI:10.1038/s41529-026-00862-0
アルミニウム合金は航空宇宙や自動車などで使われる軽量材料ですが、塩化物環境下などで局所的に進行する孔食が耐久性の課題となっています。
研究対象となったベーマイト皮膜は、水蒸気のみを用いる蒸気コーティング法で形成されます。
従来は製造条件と耐食性を結び付ける評価が主流でしたが、今回は皮膜と基板そのものの物理的特徴から耐食性を予測し、根拠まで説明する解析手法を確立しました。
本成果は、Nature Portfolioが発行するオープンアクセス誌『npj Materials Degradation』に掲載されました。
ランダムフォレストによる耐食性予測

- 膜厚
- 表面粗さ
- 結晶子サイズ
- 基板の欠陥密度
4つの物理記述子を学習させた5種類の機械学習手法を、繰り返しネスト交差検証で比較しました。
ランダムフォレストは決定係数R2=0.670となり、従来の製造条件のみを使うモデルのR2=0.557を上回りました。

SHAP解析では、サビにくさを最も強く左右する要素が表面粗さ、次いで膜厚であることが示されました。
基板の欠陥密度や結晶子サイズよりも、皮膜の形態的特徴が支配的でした。
表面粗さと膜厚は値が大きいほどサビにくさを高める一方、基板の欠陥密度が高いほど低下させる関係も捉えています。
形態的レジームシフト(Morphological Regime Shift)

1次元ALE解析では、表面粗さが約500 nmを超えると耐食性が急上昇しました。
膜厚の効果はおよそ2,200 nmを超えると急上昇し、約3,880 nmでピークに達した後に低下しています。
基板の欠陥密度が増すと耐性は急激に低下し、結晶子サイズは約15 nmが最適という結果でした。
各要素を1つずつ除外した検証では、表面粗さを除いた場合にのみ予測精度が大きく低下しました。

2次元ALE解析により、表面粗さの効果は膜厚との組み合わせで変化することが明らかになりました。
表面粗さが大きい皮膜では、膜厚2,200 nm未満のときは粗さが被覆形成と保護に働きます。
膜厚が約2,200 nm以上になると、粗さは欠陥を介した腐食因子の侵入経路へと役割を変えます。
研究グループは、この役割の切り替わりを「形態的レジームシフト(Morphological Regime Shift)」と名付けました。
物理的特徴を基準とするため、製造装置や試作スケールが変わっても共通して使える品質評価と設計指針への活用が期待されています。
説明可能なAIにより、皮膜の形態と耐食性の関係を製造条件に依存しない指標で捉えた研究成果です。







