記事ポイント
- 英国発の世界的デザインメディアDezeenが選ぶ「注目の若手デザイナー10組」に、日本人デザイナーの山崎タクマが選出されます
- イタリア・ミラノのSaloneSatelliteで合計約43時間、自身が"モノ"として座り続ける「物座」を実践した作品「Becoming Object」が国際的に評価されます
- 約10年にわたる研究プロジェクト「Bio-Vide」の新作として、モノと生命の境界を身体で問い続けています
「モノの側に立つことでしか得られない知覚がある」――そんな問いを10年にわたり追い続けてきた日本人デザイナーが、世界的な注目を集めています。
物質調律家・山崎タクマは、英国発のデザインメディアDezeenが発表した「Ten young designers and studios to watch from Salone Satellite 2026」において、注目すべき若手デザイナー10組の一つに選ばれます。
世界39カ国から約130組のデザイナーと22のデザイン教育機関が参加する国際舞台での選出です。
山崎タクマ「Becoming Object」

- デザイナー:山崎タクマ(TAKUMA YAMAZAKI DESIGN 合同会社)
- プロジェクト:Bio-Vide 新作「Becoming Object」
- 展示:SaloneSatellite 2026(Salone del Mobile.Milano 内・イタリア・ミラノ)
- 選出:Dezeen「Ten young designers and studios to watch from Salone Satellite 2026」
- 問い合わせ:[email protected]
Dezeenに評価されたのは、山崎が約10年にわたり継続してきたプロジェクト「Bio-Vide」の新作「Becoming Object」です。
イタリア・ミラノで開催されたSalone del Mobile.Milano内の若手部門SaloneSatelliteに出展したこの作品で、山崎は会期中に合計約43時間、自身が"モノ"として座り続ける「物座」と呼ぶ実践を行います。
Dezeenは「ミラノ・サローネでは、日本人デザイナーの山崎タクマが何時間も座り続け、まるでマリーナ・アブラモヴィッチのような瞬間が生まれた」と評しています。
「Bio-Vide」は、モノと生命の境界を生物学的な定義ではなく「有生性(アニマシー)」の観点から探るプロジェクトです。
人がどのように生命を感じ、どこでモノとして認識するのか、その曖昧な境界を素材開発や作品制作を通じて追い続けてきています。
「Becoming Object」では、これまで"生命側"から語られてきた視点を反転させ、作家自身がモノの側に立つという試みを本格的に展開しています。
43時間「物座」の実践

山崎は自身が開発した落ち葉を再構成した板材を用いて、高さ約1700mmの双子の椅子を制作します。
その一脚に、落ち葉で構成された仮面を装着した状態で会期中合計約43時間にわたり座り続け、空間の中で静的な"モノ"として自らを配置する実践を行います。
この行為について山崎は「初日は、自分が花のように感じられます。5時間も動かないと身体が痺れて感覚が不在になるので、モノと生物の間にいるような感覚です」と振り返っています。
数日後には「モノは死体なのではないか」という感覚にも至り、その過程を経て「人間の思考の忙しなさや意味付けの多さと、モノと生命のあいだに絶対的な境界はそもそも存在せず、両者ともただ在るだけ」という認識に辿り着いたと語っています。
落ち葉の椅子と生成AIの植物像

鱗状に天然素材が貼り付けられた縦長の柱のような椅子の中央には、植物標本を収めた額縁状の開口部が設けられています。
双子の椅子のもう一脚には、生成AIを活用した作品「PromPlant / HeartBeat」が展示されます。
山崎自身の心拍データをもとに生成された植物像が配置され、身体・データ・物質という異なる三つの層が空間の中で対比される構成になっています。
Dezeenはこれまでの「Bio-Vide」の取り組みについて、牛骨や皮、リズミカルに膨張するバルーンなどを用いた素材実験を通じて、人間が何を「生きている」と認識するのかを探ってきたと紹介しています。
現在多くのデザイナーが人間と他の生き物との関係性を探求する中で、「逆側からの視点で興味深いアプローチ」と位置づけています。
デザイナー・山崎タクマの経歴
1990年北海道生まれの山崎タクマは、多摩美術大学プロダクトデザイン専攻(Studio 3)を次席で卒業後、キヤノンに入社し、一眼レフカメラやレンズのボディデザインを担います。
2019年にTAKUMA YAMAZAKI DESIGN を設立し独立します。
Lexus Design Award 2016(73カ国・1,232作品)、KOKUYO Design Award 2018グランプリ(46カ国・1,289作品)をはじめ、ドイツ・韓国・イタリア・香港・米国など世界各地のデザインアワードを受賞しています。
精密機器のインダストリアルデザインと哲学的な芸術実践を横断する「Industrial Artistry」を提唱し、2025年にはニューヨークのギャラリーと契約してマンハッタンで個展「Industrial Artistry」を開催します。
2023年以降は宇宙船デザインやスペースコロニー構想など地球外環境における人間と物質の関係性をテーマに活動領域を広げ、ロボットデザインや映像・音楽・ファッション・絵本制作へも展開しています。
「物の側の感覚を知りたかった」という動機から始まった「Becoming Object」の実践は、43時間の「物座」を経て「生命の一瞬の輝きを支えるモノをつくる」という山崎自身のスタンスを明確にする旅となります。
落ち葉の板材から生まれた高さ約1700mmの椅子とともに静かに座り続けた仮面姿の作家が、世界39カ国から集まったデザイナーの中でDezeenの目に留まります。
山崎タクマ「Becoming Object」の紹介でした。
よくある質問
Q. Dezeenとはどのようなメディアですか。
A. Dezeenは英国発の世界的なデザイン・建築専門メディアです。
「Ten young designers and studios to watch from Salone Satellite 2026」は、Salone del Mobile.Milano内で開催された若手デザイナー部門SaloneSatelliteの出展者の中から、編集部の視点で特に注目すべき10組を選出した特集記事として公開されています。
Q. SaloneSatelliteとSalone del Mobile.Milanoの違いは何ですか。
A. Salone del Mobile.Milanoはイタリア・ミラノで開催される世界最大級の家具・デザイン見本市です。
SaloneSatelliteはその中に設けられた若手デザイナー専門の部門で、今回は世界39カ国から約130組のデザイナーと22のデザイン教育機関が参加します。