京都府立堂本印象美術館が、堂本印象の没後50年を記念した展覧会「特別企画展 モダンなときめき―智積院襖絵の魅力―」を2026年1月20日より開催。
寺院の襖絵としては型破りなモチーフで知られる智積院(ちしゃくいん)の襖絵をはじめ、印象が手掛けた茶道具やモダンな絵画作品が一堂に会します。
京都府立堂本印象美術館「〈没後50年記念〉特別企画展 モダンなときめき―智積院襖絵の魅力―」

会期:2026年1月20日(火)~3月22日(日)
会場:京都府立堂本印象美術館
入館料:一般800円ほか
日本画家・堂本印象(1891-1975)が昭和33年(1958)に手掛けた、京都・智積院の襖絵。
当時、智積院には長谷川等伯父子による国宝《楓図》《桜図》がありましたが、印象は「宗教活動は時勢と無縁であってはならない」という寺側の意向に応え、「百年ぐらいは悪口を言われるだろう」という覚悟のもと、極めてモダンな構想で制作に挑みました。
本展では、世間の批判を恐れず新しい表現を追求した印象の創作姿勢を伝える襖絵18面(通常非公開)を特別展示。
あわせて、茶の湯を愛した印象自らが制作した独創的な茶道具や、職員が選ぶ「ときめく」モダンな作品群も公開されます。
革新的な智積院襖絵

本展のハイライトとなるのが、智積院蔵の《婦女喫茶図》。
寺院の襖絵でありながら、描かれているのは野点(のだて)を楽しむ現代女性の姿です。
伝統的な空間に大胆な現代風俗を持ち込んだ本作は、当時の美術界や宗教界に大きな衝撃を与えました。

こちらは同じく智積院のために描かれた《松桜柳図》。
長谷川等伯父子の国宝障壁画を意識しつつも、印象ならではのモダンな意匠と筆致で表現された自然美。
常に新しい日本画の可能性を模索し続けた画家の気概が感じられる作品です。
印象によるモダンな茶道具

数寄者であった父の影響を受け、自邸に茶室を設けるほど茶の湯に親しんでいた堂本印象。
茶碗《雨もまたよし》に見られるように、彼は既存の型にとらわれない自由な発想で茶道具も制作していました。

新収蔵品となる茶杓《アビニオン》や茶入《豊穣》。
「精神修養に資する」として芸術活動の一環と捉えられた茶の湯の世界にも、印象独特の美意識が貫かれています。
職員が選ぶ「モダンなときめき」

伝統的な日本画の枠を超え、カラフルな抽象画や現代風俗を描いた作品も多数残した印象。
本展では美術館職員が選定した、思わず心がときめくようなモダンな作品たちも並びます。
《モンマルトルのバー》など、海外の風景を独自の色彩感覚で切り取った作品もその一つです。

没後50年を経てなお色褪せない、堂本印象の挑戦的な創作の軌跡。
智積院の襖絵というスケールの大きな仕事から、掌(てのひら)の中の茶道具に至るまで、画家の「モダンな魂」に触れられる貴重な機会。
京都府立堂本印象美術館「〈没後50年記念〉特別企画展 モダンなときめき―智積院襖絵の魅力―」の紹介でした。