鎌倉の地で三代続く老舗印章店「鎌倉はんこ」の店主夫婦が、国内の印章技術を競う「中国印章競技会」において、史上初となる夫婦揃っての金賞受賞という快挙を成し遂げました。
デジタル化が進む現代において、あえて「手仕事」にこだわる同店の技術力と、その背景にある職人の想いをご紹介します。
鎌倉はんこ

印章彫刻の基礎技術を研鑽・競い合う国内競技会「中国印章競技会」。
熟練の職人から若手までが参加し、5部門121点の作品がエントリーしたこの大会で、「鎌倉はんこ」代表の月野允裕(つきの みつひろ)氏と、妻の千恵子(ちえこ)氏が、それぞれの部門で最高位となる金賞を受賞しました。
競技会において夫婦が同時に金賞を獲得するのは、史上初の出来事です。

受賞の内訳は以下の通りです。
・木口実印の部 金賞:月野 允裕氏(※木口角印小篆でも銀賞を同時受賞)
・木口角印古印体の部 金賞:月野 千恵子氏
特に木口彫刻において文字を手仕上げする技術には、高い芸術性と正確性が求められます。
今回の受賞は、日頃の地道な技術研鑽が結実した結果であり、職人としての卓越した技量が客観的に証明された形となりました。
全国で5組以下!「一級印章彫刻技能士」の職人夫婦

月野夫婦は、二人とも厚生労働省認定の国家検定資格「一級印章彫刻技能士」を保有しています。
この資格は7年以上の実務経験に加え、3年に一度しか開催されない難関試験を突破する必要があり、夫婦でこの資格を持つのは全国でも5組以下という極めて稀有な存在です。
「脱ハンコ」が叫ばれる昨今ですが、同店では「技術の維持と最高品質の保証」のため、一日に制作する印鑑をわずか5本に限定する完全予約制を徹底しています。
大量生産・効率化とは対極にある、一本一本に魂を込める姿勢こそが、多くの支持を集める理由です。
デジタル時代に輝く「手仕事」の芸術

同店では、伝統を守るだけでなく、日本の印章文化を世界へ伝える活動にも力を入れています。
英語による外国人向けワークショップを年間500組以上開催するなど、鎌倉という土地柄を活かし、海外に向けて「職人技の尊さ」を発信し続けています。
月野代表は今回の受賞に際し、「デジタル技術では決して生み出せない、職人の正確な手仕事が持つ温かさと芸術性を、後世に引き継いでいきたい」と語っています。
人生の節目に寄り添う大切な「印(しるし)」。
鎌倉を訪れた際は、歴史ある街並みの中で、世界に誇る日本の職人技に触れてみてはいかがきでしょうか。
「鎌倉はんこ」夫婦W金賞受賞の紹介でした。