電波障害予測の精度向上へ!電子航法研究所・電気通信大学など「スポラディックE (Es)層」の詳細構造を解明

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海上・港湾・航空技術研究所 電子航法研究所、電気通信大学らの研究グループが、全球衛星航法システム(GNSS)受信機の超稠密ネットワークデータを使用し、2024年5月17日に日本上空で発生したスポラディックE (Es)層の詳細構造を明らかにしました。

Es層の生成から消滅に至る過程をこれまでの2倍の解像度で捉えることに成功し、これまで明確でなかった複雑な構造が明らかになりました。

 

電子航法研究所・電気通信大学など「スポラディックE (Es)層」の詳細構造を解明

 

左図.Es 層と電波の長距離異常伝播  右図.2024 年5月17日13時(日本時間)頃に東北地方上空で観測されたEs層

 

今回の観測結果は、電波の長距離異常伝播を引き起こすなど、電波利用の障害となるEs層の発生予測に必要な数値モデルの改良につながる新たな知見をもたらすものです。

また、Es層発生に関わる高度100km付近の風系や、下層大気と超高層大気の結合過程を明らかにする研究の一端となるとされています。

 

スポラディックE (Es)層は、高度100km付近の電離圏に突発的に発生する、非常に電子密度の高い層です。

通常は電離圏で反射されないVHF帯の電波も反射する性質を持ち、通常は届かない遠方まで電波を伝播させ、時に電波干渉の原因となることが知られています。

そのため、Es層の発生予測は社会的な課題として長年研究対象となってきました。

 

これまでの観測では空間的な解像度が十分ではなく、Es層がどのように現れ、移動し、消えていくのかは、よくわかっていませんでした。

今回の研究では、国土地理院が運用するGEONETネットワークの約1,300点のデータに加え、ソフトバンクが全国に展開する3,300点以上のGNSS独自基準点観測網のデータを活用。

GNSS電波の電離圏による伝播遅延の揺らぎ(Rate-of-TEC Index: ROTI)をマッピングすることにより、Es層の空間構造を既存のGNSSネットワーク観測に比べ2倍の解像度で可視化することに成功しました。

 

この高解像度化により、Es層が持つ、渦を巻いたり波紋状の構造を表したりといった複雑な構造がはっきりと捉えられるようになりました。

今回発見されたEs層は、関東北部で発生して東北地方を北上し、北海道上空で消滅していました。

これは、Es層の発生から消滅までの一連の過程が切れ目なく観測された初めての例となります。

 

研究グループは今後、さらに観測データを収集するとともに、Es層の数値シミュレーションの専門家とも協力し、Es層の発生予測モデルの改良に取り組んでいく予定です。

最終的な目標は、Es層の発生から消滅を予測し、電波伝播環境予報を実現することです。

 

研究グループによる、「スポラディックE (Es)層」の研究成果の紹介でした。

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