脳神経再生に効果が期待されるビタミンK誘導体を開発!芝浦工業大学

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芝浦工業大学システム理工学部の廣田佳久准教授(生化学研究室)と須原義智教授(創薬化学研究室)は、神経前駆細胞を神経細胞へ分化を促す新たなビタミンK誘導体を開発しました。

 

芝浦工業大学

 

ビタミンK誘導体はMK-4に変換される。 図中のグラフは、投与後24時間経過し誘導体の濃度が減衰した後でも、MK-4の濃度が高まっていることを示す

 

芝浦工業大学システム理工学部の廣田佳久准教授(生化学研究室)と須原義智教授(創薬化学研究室)は、神経前駆細胞を神経細胞へ分化を促す新たなビタミンK誘導体を開発。

この新しい化合物は、ビタミンKの側鎖構造に神経分化を促進することで知られるビタミンAの活性代謝物「レチノイン酸」の構造を組み込んだハイブリット型誘導体であり、それぞれの生理活性を有しています。

この誘導体は、血液脳関門を通過して脳内に移行し、天然のビタミンKと比較して神経前駆細胞を神経細胞へと著しく分化させることが分かりました。

また、脳内に移行後、時間の経過と共にもっとも活性の高いビタミンK2(MK-4)に変換されることが確認されました。

新たなビタミンK誘導体は長時間にわたって脳神経細胞に対して効果が継続します。

新しい化合物は神経細胞を失った脳の機能を回復させる可能性があり、治療薬が血液脳関門で阻害されることが課題のアルツハイマー病など、神経変性疾患に対する再生医療への応用が期待されます。

■ポイント

●誘導体として薬剤の到達を阻害する血液脳関門を通過し、脳内で神経分化を促進。

時間経過とともに MK-4へ変換され長時間効果が継続

●神経細胞の再生によって、神経変性疾患の進行抑制や治療への貢献に期待

■治療薬も阻害するバリアの存在が、治療の課題に

アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患では、脳の神経細胞が徐々に失われ、記憶障害や運動機能の低下を引き起こします。

これらの疾患は「血液脳関門」によって治療薬の到達が難しいという共通の課題を抱えています。

現在の治療法は症状を緩和しますが、根本的な治療には至っていません。

■脳に届いて、効果が長時間持続

芝浦工業大学の廣田佳久准教授と須原義智教授らの研究チームは、神経分化・保護への関与が示唆されているMK-4に、その活性を高めるためにレチノイン酸などを組み合わせ、「ハイブリッド型ビタミンK誘導体」を合成しました。

この新しい化合物は、有害物質だけでなく薬の脳への到達も阻害する血液脳関門を通過し、脳内で安定して働くことが実験で確認されました。

天然のビタミンKよりも効率的に、MK-4に変換されることも分かりました。

さらに神経前駆細胞を神経細胞へと分化させる力が非常に高く、MK-4の約3倍の効果を示しました。

これによって変換前後で長時間にわたって神経分化促進の効果が継続します。

ビタミンK誘導体はMK-4に変換される。

図中のグラフは、投与後24時間経過し誘導体の濃度が減衰した後でも、MK-4の濃度が高まっていることを示す

この研究は、アメリカ化学会「ACS Chemical Neuroscience」に掲載されました。

■将来の治療薬に期待大

この成果は、神経変性疾患の進行を遅らせたり、症状を改善したりする新しい治療薬の開発につながる可能性があります。

患者や家族の生活の質を向上させるだけでなく、医療費や長期介護といった社会的な負担の軽減にも貢献することが期待されます。

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