土屋は2025年4月11日、ALSの方を描いた映画『杳かなる』の宍戸監督を招き、映画にちなんだトークイベントを京都市内で開催しました。
土屋『杳かなる』
開催日 :2025年4月11日
登壇者 :宍戸大裕(映像作家)
星敬太郎(ホームケア土屋ゼネラルマネージャー)
主催 :株式会社土屋
開催場所:イベントホール洛央
実施形式:会場とオンラインのハイブリッド開催
参加者 :会場40名 オンライン384名
土屋は2025年4月11日、ALSの方を描いた映画『杳かなる』の宍戸監督を招き、映画にちなんだトークイベントを京都市内で開催。
映画『杳かなる』を通じて、重度訪問介護の存在や、難病と共に懸命に生きる方々の日常をより多くの方々に知っていただくとともに、宍戸監督が様々な人との交流で得られた思いを共有していただきたいという願いから、同社では京都での映画公開日に合わせて本イベントを企画。
多くの参加者が集まる中、宍戸監督と同社ホームケア土屋ゼネラルマネージャー・星敬太郎による対談が行われました。
対談の模様・宍戸監督(右)
対談の模様:星敬太郎
■宍戸大裕監督の経歴
1982年、宮城県に生まれる。
学生時代、東京の自然豊かな山、高尾山へのトンネル開発とそれに反対する地元の人びとを描いたドキュメンタリー映画『高尾山 二十四年目の記憶』(2008年)を製作。
これまでの作品に、人工呼吸器を使いながら地域で生活する人を描いた『風は生きよという』や、知的障害がある人の入所施設での人生を描いた『百葉の栞 さやま園の日日』、自閉症と知的障害のある青年が地域で介助者と暮らす日常を見つめた『道草』などがある。
■映画『杳かなる』について
全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)当事者の歩みを記録したドキュメンタリー映画です。
■当日のイベント内容の概要
<ALSの人を撮るのではなく、一人の人の生きざまを撮りたい>
『杳かなる』を作るきっかけが、2019年に起きた京都のALS患者嘱託殺人事件の衝撃にあったと語る宍戸監督は、当時自分の心をよぎった様々な思いとは裏腹に、インターネット上に溢れる“難病や障害を負うということに対しての否定的な言葉”や“社会が眼差す目線”に愕然としたといいます。
同時に、「生きる」ということが“個人の問題”とされ、“自己責任”の名のもとに一括りにされる社会のあり方や、人を“生産性”で判断する価値観などに疑問を感じ、その中で苦しさを抱えて孤立している人に向けて「何が本人にとって、うつむいていた顔をあげるきっかけになるのかを考えてもらえるような映画を作りたい」と撮影を開始します。
「孤立している、孤独感を持っている人、世の中にたくさんいる人に向けてなんですけど、誰か一人にこの映画を届けたい。
どこかにいる、うつむいている一人に届けられるような映画にしたいということを思って作ってきました」(宍戸監督)
本対談では、“生きること”、そして常に“生きる意味”を突き付けられる障害当事者について、ホームケア土屋ゼネラルマネージャー・星敬太郎との白熱したトークが繰り広げられました。
言葉を介さないALS当事者とヘルパーとのコミュニケーションに深い感銘を受けたという宍戸監督に対し、20年来の介護の知見を持つ星からは、重度訪問介護に携わるヘルパーのひた向きなケアの在りようと共に、「(ALSの方は)最後の最後まで自身の思うこと、考えることはしっかりと保たれている。
この機会に多くの人にお伝えしたい」との言葉がありました。
また質疑応答では、具体的な介護制度のシステムや地域間格差の問題、ALS患者の人工呼吸器装着率や安楽死問題など、トークイベントの流れをそのまま受け継いだかのような真摯な質問が多く出され、星から地方における事業所・ヘルパー不足などの介護業界の現状と課題が示されるとともに、宍戸監督からは 安楽死問題に関連して“緩和ケアが難病当事者の場合にあまりにも立ち遅れている”という実情が語られるなど、本作品『杳かなる』の一端を垣間見させる、「生きる」ことの意味を改めて考えさせられるイベントとなりました。