JMDCと住友生命は、健康・生活習慣と熱中症の関係性を示す調査を行い、その結果をまとめた「熱中症白書」を公表※1いたしました
JMDC/住友生命「熱中症白書」
JMDCと住友生命は、健康・生活習慣と熱中症の関係性を示す調査を行い、その結果をまとめた「熱中症白書」を公表。
「熱中症白書」は、JMDCが有する国内最大級の医療ビッグデータ・解析力・臨床目線を組み合わせ、熱中症の発症・重症化予防に資するエビデンスを提供することを目的としています。1,000万人を超える医療ビッグデータを用いた分析であり、リスク因子として、高血圧等の生活習慣病および歩行や睡眠等の生活習慣を用いています。また、キャッシュレス決済サービス「PayPay」アプリ内の「PayPayほけん」専用商品として提供している「熱中症お見舞い金」のデータも参照しており、医療ビッグデータだけでは得られない示唆を日々の気温や保険申込み、保険金請求状況といったリアルタイムデータで補完しています。
日本では平均気温が上昇しており、2024年の平均気温は1989年の統計開始以降で最高となりました。温室効果ガスの排出削減が喫緊の課題とされていますが、被害を防止または最小化する適応対策および適応でも防げない損失に対処するための保障も重要です。「熱中症お見舞金」はこのような社会課題を背景に、お客さまニーズにあわせた保障を提供する商品として、ご好評いただいています。
※1 「熱中症白書」全編は下記URLよりご参照ください。
https://www.jmdc.co.jp/terms/heatstroke_white_paper_202504.pdf
1. 調査結果の概要
a. 熱中症リスクについて
生活習慣病を持つ人は、持たない人に比べて、熱中症リスクが大幅に増加することが確認されました。熱中症予防には、良質な睡眠の確保や夜遅くの夕食を避けるなど、健康的な生活を送ることが重要です。また、継続的な歩行習慣は、身体を暑さに慣らすことで、熱中症の重症化を防ぐ効果を持つ可能性が示されました。
熱中症リスク1
熱中症リスク2
b. 熱中症の発生時間帯
熱中症の発生は午後に多く見られ、特に昼過ぎに多発しています。
発生時間帯
c. 熱中症発生の経年変化
経年変化を見ると、記録的な猛暑だった2018年に熱中症リスクが上昇していますが、2020年以降は新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛等によりリスクが低下しています。
経年変化
d. 年代別のリスク
年代別にみると、10代と高齢層で熱中症の診断リスクが高くなっています。
年代別
e. 地域別発生分布※2
地域別にみると、西高東低の傾向が観察されます。また、関東圏の発生率の低さが目立ちますが、これはライフスタイル・行動特性の影響だけでなく、気候変動への適応(公共交通網やエアコンの整備等)が進んでいることが影響していると考えられます。
地域別
※2 これは熱中症リスクをヒートマップで可視化したもので、リスクが高い都道府県を赤色で、リスクが低い都道府県を青色で表示しています。
2. 有識者からのコメント
慶應義塾大学 名誉教授 小暮 厚之氏
本白書は、統計学的な観点から見ても非常に興味深い内容となっています。特に、健康診断結果や生活習慣データに加え、気象データという多様なデータソースを統合して分析している点に特徴があります。
多面的なデータ分析により、熱中症予防・重症化予防に資するエビデンスを提供している点が本白書の強みなのだと思います。統計学的手法を用いた分析結果が、今後の熱中症リスク対策に寄与することを期待しています。
青山学院大学 教授 伊藤 晴祥氏
今回の白書は、日本における気候変動の影響を考慮に入れて熱中症のリスクについて議論している点が独創的で、学術的にも実務的にも価値が高い点です。
今後、さらなる気温上昇が懸念される中で、熱中症の罹患率が高まる可能性があり、この白書は、熱中症のリスク分析において新たな知見を提供しています。
ビッグデータを用いた分析により書かれたこの白書は、今後、保険会社や事業会社が、気候適応戦略を立てる上で重要な参考資料となります。
日本社会が、気候変動リスクに対し具体的な対策を講じるための根拠となる実証研究である点でも、この白書の貢献は高いです。