ディズニー・アニメーションや映画、テーマパークの名曲の数々を、スクリーンに映し出される映像やスペクタクルな演出とともに、ニューヨークで活躍するヴォーカリストたちと、フルオーケストラによる演奏でお贈りする大人のための音楽会「ディズニー・オン・クラシック」
2018年9月からの「ディズニー・オン・クラシック 〜まほうの夜の音楽会 2018」がブラッド・ケリー氏のラストツアーとなることが発表され、ファンの間で大きな話題となっています。
今回、ブラッド・ケリー氏および2019年からの新指揮者となるリチャード・カーシー氏の両名へDtimes編集部がインタビューを実施。
お二人のディズニー・オン・クラシックへの想いや裏話、ブラッド氏の次なるプロジェクトについてお話を伺いました☆
ブラッド・ケリー氏&リチャード・カーシー氏「ディズニー・オン・クラシック」「ディズニー・ワールド・ビート!」インタビュー
「ディズニー・オン・クラシック」制作のハーモニージャパン様の協力のもと、ブラッド・ケリー氏とリチャード・カーシー氏にインタビューさせていただきました。
2002年の「ディズニー・オン・クラシック」初演から15年にわたり指揮者を務めているブラッド・ケリー氏が2018年秋のツアーを最後に勇退、新しいディズニーコンサート「ディズニー・ワールド・ビート!」を立ち上げることが発表されました。
バトンを受け継ぐのは、「ディズニー・オン・クラシック」のヴォーカリストたちの音楽ディレクターを担当してきたリチャード・カーシー氏。
- ブラッド氏とディズニー・オン・クラシック
- リチャード氏とディズニー・オン・クラシック
- ブラッド氏の新プロジェクト「ディズニー・ワールド・ビート!」について
の3つの視点でお話を伺いました。
ブラッド氏とディズニー・オン・クラシック
ー次回、2018年9月からのツアーがラストツアーとなることが発表され、早くもディズニーファンの間で話題になっていますが、注目の演目について教えてください。
東京ディスニーリゾート35周年のテーマソング「Brand New Day」はオーケストラ用に自分がアレンジしたものに、リチャードさんがヴォーカルのハーモニーをつけ、一緒に作ったものです。春の音楽祭でも演奏しましたが、今回も演奏します。
生誕90周年を迎えるミッキーマウスのスクリーンデビュー作「蒸気船ウィリー」の全編をオリジナルに近い形で演奏します。
これは自分の知る限りでは世界で初めての試みではないかと思います。
その後はアラン・メンケンの名曲セレクションということで、ヒット曲のオンパレードとなります。ファンが聞いて喜ぶ名曲揃いなので期待していていいと思います。
第2部では同じくアラン・メンケンが作曲を担当した「ヘラクレス」をメイン演目とし、ブラックゴスペルの名曲をフルオーケストラで再現していきます。10年近くブラックゴスペルに携わっていたということもありますが、素敵な曲が揃っているので楽しみにしていてください。
ー「ディズニー・オン・クラシック」で演奏される曲目は、フルオーケストラで作曲された楽曲ばかりではないと思います。ブラッドさんは自らの手で編曲も手がけられていると伺いました。
例えば、“春の音楽祭”の1曲目で演奏した「動物の謝肉祭」はそのまま演奏できる譜面でした。
しかし、中にはかなり手を加えてディズニー・オン・クラシックの楽器編成に合わせて作り直す作業がでてきたり、実際に譜面を探したらなかった、抜けていた、などもあり、そういう部分を書き加えていったものもあります。「ライオン・キング」は完全に作りなおさねばオーケストラでは演奏できず、かなり手を加えた内容でした。
ー編曲にあたり、やりがいのあった楽曲は?
前述のとおり、「ライオン・キング」は書くことにかなりの時間を費やしました。一から組曲を作る作業は確かに大変さはありますが、自分のアプローチで作れる自由さはあります。
挑戦という意味では、「パイレーツ・オブ・カリビアン」はとても大変でした。というのも、サウンドトラックで音を聞くと、譜面上にはかなりのものが記されていないことに気づいたのです。パーカッションやハープ、キーボードなどの音、音響効果が譜面上に記されていなかったため、作曲家の想いを想像しながら書き起こす難しさを感じました。
ー俗にいう「耳コピ」ですね!
「聴いたものをそのまま書き起こせるように耳を鍛たえること、練習をすること」、「音楽理論をきっちり勉強すること」この2点は大学などでスピーチする際には必ず話しています。ちなみに、“春の音楽祭”でも演奏した『ターザン』の「You'll be in My Heart」は全く譜面がなく、自分がイチから書き起こしたものなんですよ!
ー「ディズニー・オン・クラシック」の15年の節目に勇退を発表されましたが、特に思い入れのある公演や演目を教えてください。
いい楽曲を演奏すると、オーケストラのメンバー全員が特に気合いをいれて取り組むので、記憶にも残ります。
ディズニーの中でも屈指の名曲といわれているフロリダのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートのエプコットで人気のショー「イルミネーションズ」の「リフレクション・オブ・アース」や、『ファンタジア2000』の「火の鳥」などが自分の記憶に残っています。
ーブラッドさんにとって「ディズニー・オン・クラシック」とはどのような存在でしたか。
素敵な映画やパークの楽曲を演奏できるということは、素敵な食材を使って料理をしていいよと言われたシェフのような気持ちです。もうひとつ、人というところです。ディズニー・オン・クラシックは人と人との温かさを大切にしてきていて、お客さんも我々も大切に思ってくれている、そういう関係性が培われてきて、とても楽しい経験をさせていただいたと思います。
リチャード氏とディズニー・オン・クラシック
ーブラッドさんからバトンを受け継ぎ、2019年のツアーから「ディズニー・オン・クラシック」の指揮者に就任されるわけですが、率直なお気持ちをおきかせください。
光栄なことだと思います。同時にブラッドさんがいままで作り上げてきたオーケストラ、お客さんとの関係を受け継いで行くことの責任、それだけでなく自分のパーソナリティーもくわえて行かなければならないなという責任を感じています。
今回の交替はディズニー・オン・クラシックの状況がよくないとか、そういうことでは全くなくて、すごくうまくいっている素晴らしい状態で受け継げるというのは、とても素敵な贈りものをいただいたような気持ちでいます。
ー「ディズニー・オン・クラシック」でチャレンジしてみたい楽曲は?
たくさんあるのですが、アラン・メンケンが作曲した『ノートルダムの鐘』はぜひいつかやりたい楽曲です。また、日本で比較的知名度が高くなくても素敵な楽曲がたくさんあるので、そういったものを紹介できたらとても楽しいだろうなと思います。『ポカホンタス』の「カラー・オブ・ザ・ウィンド」を指揮できたら感極まって泣いてしまうかもしれないですね(笑)
ーブラッドさんから受け継いでいきたい「ディズニー・オン・クラシック」のエッセンスがあれば教えてください。
ブラッド氏:これはしないほうがいいという反面教師的なことばかりじゃないのかい?(笑)
(笑)指揮者というのは個性がそのまま出てくると思うのですが、ブラッドさんのオーケストラやお客さんとの関係性・付き合いかたは鑑にできるのではないかと思っています。
“春の音楽祭”の最終日、舞台袖で公演を見ていたのですが、ブラッドさんの顔を見るとオーケストラとブラッドさんの関係性というか、愛情というのがよく伝わってきました。客席からは見えないのが残念ですが、そこはきっちりと受け継いで行きたいと思います。
ーでは、ブラッドさんは、リチャードさんにどんな活躍を期待しますか?
お互いのことを話し合うというのはとても面白いね!
リチャードさんには絶大な信頼を置いているので、何も心配はしていません。彼は経験豊富な指揮者であり、音楽性や人間性、経験、どれをとっても何も心配することはなく任せていける人間です。
ディズニー・オン・クラシックというのは「仕事」とは違った存在で、長い期間をかけて作り上げていくチーム内の人間関係がとても大切です。リチャードさんは相手を知ろうとする力や育てる力、音楽を通じてコミュニケーションする力が備わっています。とてもうまくいくだろうと確信しています。
ブラッド氏の新プロジェクト「ディズニー・ワールド・ビート!」について
ー勇退のニュースと同時に、ジャズを中心とした新プロジェクト「ディズニー・ワールド・ビート」の立ち上げが発表されました。東京ディズニーシーではジャズをメインとしたショーが人気ということもあり、ディズニーファンの間では「ディズニー・ワールド・ビート!」に早くも期待の声が上がっています。
それは安心しました!(笑)
いいショーというのは、音楽だけでなくストーリーも大切だと思っています。実はディズニーとジャズにはとても深い共通点があって、どちらも1920年代にアメリカで生まれ、ともに発展してきました。ウォルト・ディズニーも映画のなかでジャズを起用してきたこともありました。プリンセスとオーケストラの組み合わせというのもとても素敵なのですが、今回はジャズならではの味わいをお送りする機会を与えていただいたと思っています。
『おしゃれキャット』や『ダンボ』、『101匹わんちゃん』などまだ紹介されていない素敵な楽曲をジャズというフォーマットでお送りしていきたいと思っています。
ディズニー・オン・クラシック同じように、コミュニケーションを大切にする温かいコンサートにしていきたいと考えています。18名のビッグバンド・メンバー、4名のヴォーカリスト、自分という、ディズニー・オン・クラシックよりかなり少ない人数構成となる予定なので、よりお客さんと近い距離感でお届けすることができると思います。
ージャズへの編曲も大変そうですね!
ディズニーの音楽には、既にジャズである曲のほか、「いつか王子様が」のようにジャズ楽曲として定番化している曲もあります。また、『アナと雪の女王』の「In Summer(夏に)」など少し手を加えただけでジャジーになる楽曲も多くあり、さまざまなアプローチで楽しめると思います。
ージャズの醍醐味は「即興」にあると思うのですが、全く同じ公演が2つとない楽しいコンサートになりそうです。
同じアレンジもありますが、ソリストがソロを行うパートももちろんあります。
「ディズニー・ワールド・ビート!」ではディズニーの音楽をジャズで演奏するので、ディズニーファンだけでなく、ジャズ好きのどちらにもアプローチできるのではないかと思います。
読者の皆様へメッセージ
最後に、ブラッド氏、リチャード氏両名より、Dtimesの読者の皆様へ向けたメッセージをいただきました!
ブラッド氏:Dtimesをご覧の皆さん。ディズニー・オン・クラシックは2018年で16年目を迎えました。とても素敵なプログラムをご用意しています。第一部はアラン・メンケン氏の楽曲ですし、第二部はヘラクレスの楽曲をご用意しています。ぜひ会場でお楽しみください。
リチャード氏:ハートをオープンにしてファンの皆さんとオーケストラ、そして音楽と向きあって行きたいと考えています。ツアー後半の数公演に参加する予定です。その公演では指揮をする予定でとても楽しみですが、その際にはブラッドさんはトロンボーンを演奏してくれたらいいなと思っています!
ブラッド・ケリー氏、リチャード・カーシー氏、おふたりから熱い想いを聞かせていただきました。
2018年9月からの「ディズニー・オン・クラシック 〜まほうの夜の音楽会 2018」、そしてブラッド・ケリー氏の新プロジェクト「ディズニー・ワールド・ビート!」も楽しみですね!
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