TRデータテクノロジーは、昨今急増しているホスピス型住宅※の開設傾向について分析しました。
TRデータテクノロジー「がん末期や難病患者向けの老人ホーム」の動き
TRデータテクノロジーは、昨今急増しているホスピス型住宅※の開設傾向について分析。
結果は下記のとおりです。
同社は全国の介護施設並びに居宅サービスのビッグデータを所有、販売する介護分野に特化したデータ会社です。
※ホスピス型住宅:入居者をがん末期や難病患者などに絞り、専門のケアを提供する民間ホームの通称。
主に住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅でホスピスを標ぼうして運営するケースが多いが特に行政上の届出や規制は無い。
同社の独自基準は巻末に記載。
1)主に「がん末期や難病患者向け」ホームの運営を行う大手事業者
【業界最大手は株式会社アンビス】
表1は主に「がん末期や難病患者向け」ホームの運営を行う事業者の運営ホーム数上位5社である。
多くががん末期の患者を対象としたホスピス型住宅を運営し、近年急速に拠点数を増やしている。
この内、株式会社サンウェルズはパーキンソン病患専門のホーム「PDハウス」を運営しており、他社とは運営コンセプトが異なる。
2)緩和ケア病棟とホスピス型住宅の開設数推移
【緩和ケア病棟の新設数減少が背景に】
図1は緩和ケア病棟とホスピス型住宅の新設数推移である。
緩和ケア病棟は2013年をピークに減少基調で推移。
2021年以降は10ヶ所未満/年と低調が続く。
一方、ホスピス型住宅は、年々新設数が増加。
2020年以降では30ヶ所以上/年が開業しており、2023年は過去最大の61ヶ所となった。
図2はそれぞれのベッド数/定員数の累計を示したグラフだが、2022年にホスピス型住宅の定員数が緩和ケア病棟のベッド数を上回った。
このように、ホスピス型住宅急増の要因のひとつとして、緩和ケア病棟の供給量も影響していると考えられる。
※緩和ケア病棟:1990年から制度化。
がん末期や治癒が困難な病気を抱える患者に対して、身体的・精神的な苦痛を和らげるための専門的なケアを提供する病棟。
※緩和ケア病棟数およびベッド数出典:NPO法人日本ホスピス緩和ケア協会の公開情報より
3)ホスピス型住宅のエリア傾向
【全体の約8割が東日本の各エリアで開設】
図3は、全国6エリアにおけるホスピス型住宅の開設地をエリアごとに分類したグラフである。
関東エリアが40%と最も多く、次いで北陸・中部エリア、北海道・東北エリアが続く。
このように、関東を中心とした東日本が全体の8割を占めており、開設傾向には大きな地域差が見られる。
4)ホスピス型住宅の平均要介護度・年間退去率の傾向
【ホスピス型住宅/年間で入居者の6割以上が退去する実態】
図4は、施設タイプ別に、ホスピス型住宅とそれ以外に分類し、平均要介護度を比較したグラフである。
ホスピス型住宅の全体平均は3.4。
中でも住宅型が3.5と高く、ホスピス型住宅以外の平均要介護度を大きく上回る。
図5は、年間退去率を施設タイプ別に比較したグラフである。
ホスピス型住宅以外は全体平均で年に23%の入居者が退去している。
ホスピス型住宅の退去率はその約3倍に相当する63%と高く、特に住宅型は66%と突出している。
※サ高住:サービス付き高齢者向け住宅
介護付:介護付有料老人ホーム
住宅型:住宅型有料老人ホーム
【調査対象施設】全国の介護付有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅
【データ出典元】福祉施設・高齢者住宅Data Base2024年度版(調査時点2024年7~8月で同社が入手できた情報に限る)。
出典元は介護サービス情報公表システム(厚労省)、サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム、重要事項説明書(介護付、住宅型、サ高住で入手可能なホームに限る)。
【ホスピス型住宅の定義】次の条件により同社が独自に設定。
(1)ホスピス型住宅を運営している運営事業者(約15社)、ホーム名に「ホスピス」を称するホーム(ブランドやホーム単位)、(2)(1)で抽出したホームの平均退去率を参考にし、退去率が60%超のホーム
【ホスピス型住宅以外の定義】ホスピス型住宅以外で要介護者をメインターゲットとしたホーム
【退去率の算出方法】前年退去者数÷(現入居者数+前年退去者数)
※補足事項
(表1)開業予定ホームも含む。
調査時点の違いにより、現状とは異なる場合がある。
(図4)(図5)平均要介護度、年間退去率が入手できたホームに限る。
■福祉施設・高齢者住宅DataBaseの概要
全国の福祉施設の情報を収集して介護データベースを構築。
ホーム基本情報のほか入居率や利用料等の商品情報を法人向けに提供。
ホーム事業者や福祉機器メーカー、学術機関等の様々な分野で採用されている。