株式会社土屋 医療的ケア児地域生活推進委員会は2024年3月、医療的ケア児の現状や実際のケアの様子を知り、一人でも多くの支援者や仲間を増やすことを目的に初のイベントを開催しました。
土屋・医療的ケア児地域生活推進委員会『医療的ケア児の“ホント”を知ろう』
株式会社土屋・土屋グループは、重度の障害をお持ちの方に対する訪問介護サービスを全国で展開し、高齢者向けサービス(デイサービス・グループホーム)や定期巡回、訪問看護などを行うソーシャルビジネス企業です。
2023年11月に発足した医療的ケア児地域生活推進委員会(委員長:委員会推進室副室長・澤田由香)では、今回初となるイベント「医療的ケア児と向き合う当事者が語る『医療的ケア児の“ホント”を知ろう』」の開催に当たり、医療的ケア児の母であり、重症児デイサービスの管理者である海谷由希氏を講師に迎え、同社からは医療的ケア児の支援に携わっているエリアマネージャー・大元克也が登壇しました。
医療的ケア児のご家族ならびに現場ワーカーという二つの視点から、「医療的ケア児の現状と未来」について考察しました。
■開催概要
主催 :株式会社土屋 医療的ケア児地域生活推進委員会
目的 :医療的ケア児についての周知ならびに支援者の育成
テーマ :医療的ケア児と向き合う当事者が語る
『医療的ケア児の“ホント”を知ろう』
開催日時:2024年3月1日
開催場所:オンライン
対象 :株式会社土屋の全職員および外部
■登壇者
海谷由希(特定非営利活動法人 ソルウェイズ 重症児デイサービス あいキッズ管理者)
大元克也(ホームケア土屋 中国ブロック エリアマネージャー)
■イベント概要
第一部 海谷由希:医療的ケア児ってなんだろう?
第一部では医療的ケア児の母であり、重症児デイサービスの管理者でもある海谷由希氏に、普段なかなか目にすることのない医療的ケア児のリアルな生活を、多くの子どもたちの笑顔を通して、いきいきと語っていただきました。
第二部 大元克也:医療的ケア児支援事例共有
第二部では、医療的ケア児の支援に携わっている同社ホームケア土屋 エリアマネージャー・大元克也より、事例共有を通じて具体的な支援内容や変わりゆくケアの形についての紹介がなされました。
HP掲載・医療的ケア児イベントのリンク:
■医療的ケア児の現状と課題
医療的ケア児とは、身体障害や知的障害の有無に関わらず、生きるために医療的なケアと医療機器を必要とする18歳未満の子どもを言います。
主な医療的ケアとして、人工呼吸器の管理や胃ろう等の経管栄養、喀痰吸引や排泄援助があります。
厚生労働省によると、全国の在宅における医療的ケア児の数は現時点で2万人を超えており、新生児医療の進歩により今後ますます増加すると考えられます。
しかし、医療的ケア児は重度訪問介護の利用対象外であり、かつ福祉サービスを提供する事業者の不足も相まって、サービスを受けたくても受けられない方がほとんどです。
そのため、ほぼすべてのケアをご家族が24時間365日担っており、孤立状態の中で睡眠時間もわずかしか取れずに疲弊しているのが現状です。
■医療的ケア児地域生活推進委員会の取組み
現在、国も医療的ケア児に目を向け、家族介護から脱却する方針を打ち出していますが、こうした流れの中で、土屋グループでも2023年11月、医療的ケア児を取り巻く様々な課題を解決するために「医療的ケア児地域生活推進委員会」を立ち上げました。
まずは情報収集と、医療的ケア児について広く知ってもらうための活動からスタートしています。
具体的には、医療的ケア児に関するトークイベント(障害者・高齢者福祉イノベーションリビングラボ主催)における同社代表取締役・高浜敏之と衆議院議員・野田聖子氏との対談。
また、医療的ケア児の問題を考える第2回「全国医療的ケアライン」主催のフォーラムに参加し、家族団体等から情報収集および意見交換を行っています。
そして今回、医療的ケア児に関する周知活動の一環として、「医療的ケア児と向き合う当事者が語る『医療的ケア児の“ホント”を知ろう』」と題したイベントを開催しました。
今後は、『医療的ケア児にどうすれば積極的に携わることができるのか?』『学びを深めるためにアテンダントに何を知ってもらう必要があるのか?』といった観点から、様々な意見交換の場を設けていく方針です。
■委員長・澤田由香のメッセージ
医療的ケア児に対する社会課題は世の中で認知されてから日が浅く、制度が不十分であったり、地域で格差が生じていたりするなどの課題があります。
とりわけ医療的ケア児には「18歳の壁」があり、18歳以下では重度訪問介護が使えず、居宅介護等の短時間サービスしか使えないのが現状です。
今後、土屋グループでは日中短時間サービスで医療的ケア児の支援を行っていく方針ですが、そのためにも現場のアテンダント(ヘルパー)が医療的ケア児に対する知見や理解を深めることが必要です。
当委員会内には、当事者・ケアの経験者等、様々な知見を持つメンバーがいることから、彼らを中心に、医療的ケア児に関するイベントやセミナー、研修会等を定期的に実施し、医療的ケア児を取り巻く環境や必要とされていること、ご家族の考えやケア児との向き合い方に理解を深めていく所存です。
医療的ケア児の支援に関わっている介助者やご家族の声を聴きながらアテンダントの理解を促進し、難易度の高いケア児に対する支援技術の向上に注力しつつ、段階的に次のステップである「支援構築」につなげていきたいと考えています。
同時に、「18歳以下は重度訪問介護を使えない」という制度自体の見直しに向けて働きかけていくことも重要だと感じています。
本イベントでは、医療的ケア児の生き生きと活動する姿や表情の豊かさ、笑顔を通じて、医療的ケア児の支援の必要性だけではなく、支援の楽しさややりがいについて知っていただけたと思います。
ただ、新生児医療の進歩と共に、医療的ケア児の数は増え続けると予想されており、助かった命を私たちが社会全体で守り抜き、明るい未来へと導く仕組みづくりに向き合っていくためにも、当委員会では今後も様々なイベントを企画し、医療的ケア児に関する周知を行うとともに支援の拡大を図り、医療的ケア児・ご家族が地域で暮らす上での環境を少しでも改善しながら、ご家族とともにケア児の成長を見守り、支えていきたいと考えます。