天然素材を主成分にした体内で溶解するニードル!GSアライアンス「生分解性マイクロニードル」

投稿日:

脱炭素、カーボンニュートラル社会構築のための、環境、エネルギー分野向けの最先端技術を研究開発する「GSアライアンス」は、同社で開発している生分解性樹脂などの知見を応用して、人体に優しい天然素材を主成分として、体内で溶解する生分解性マイクロニードルを2024年1月に開発しました。

 

GSアライアンス 体内で溶解する生分解性マイクロニードルを開発

人体に優しい素材で作った、体内で溶解する生分解性マイクロニードル

 

薬の投与方法には、飲み薬などの経口手法、舌の下からの舌下投与、眼からの点眼、鼻の中に噴霧して鼻粘膜を通して吸収する経鼻、口から肺に吸い込む吸入、座薬などの直腸を通す経直腸投与、静脈、筋肉、脊髄まわりの皮膚に投与する注射、貼り薬や塗り薬などの経皮投与などがあります。

この中でも注射の技術は、直接血液中に薬を注入することができ、様々な治療場面において応用されている効果的な投与手法ですが、痛みが伴います。

それに対して、経皮的手法は、痛みを伴わずに投薬できる方法として注目されており、電気を使うエレクトロポレーション法、イオントフォレシス法、超音波を使用するソノフォレシス法、皮膚の角質層を水和(ふやけさせる)してから、投薬する閉鎖密封法など、様々な経皮薬物デリバリー技術が考案されてきました。

しかしながら、これらの手法はいずれも大型な電源装置を必要とするために汎用性に欠けるなどの課題を残しています。

このような状況の中、より簡便で安全に経皮吸収を達成できる技術としてマイクロニードルが注目されています。

マイクロニードル技術とは、微細針の先端部に薬剤を含有、もしくはコーティングし、皮膚に貼付することで薬剤を体内に投与する比較的新しい経皮吸収手法であり、マイクロメートルサイズの微細針を皮膚に適用することにより角質層に微小孔をあけ、物質の経皮送達効率を向上させる技術です。

非常に小さい微細針を用いるので、通常の注射と比較して、痛みが緩和され、無痛になりえる場合もあります。

 

これまで、シリコン、チタン、ステンレスなどの硬い金属素材や、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂で形成されたマイクロニードルで皮膚に傷をつけ、そこに薬剤を導入する治療法は検討されていました。

しかし、生体内で溶解も分解もしないため、皮膚内に挿入した際、微細針が皮膚内で折れて残留する危険性がある、接種が痛いなど、実用化するには多くの課題を抱えていました。

一方、生分解性の材料としてポリ乳酸(PLA)やポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)などの生分解性合成高分子を用いたマイクロニードルは、安全性が高く、射出成形、プレス成形など鋳型成形により作製され、大量製造にも適しています。

この他にも、ヒアルロン酸やデキストリンなどの多糖類、ゼラチンやコラーゲンなどのタンパク質などの生物由来の高分子もあり、鋳型成形などの手法により、大量生産に適しています。

 

このような状況の中、GSアライアンスは、ヒアルロン酸ではなく人体、生体にも優しい多糖類を主材料とする皮膚内溶解性材料からなるマイクロニードルを開発しました。

このような溶解型マイクロニードルは、次世代の経皮吸収技術として大変注目されており、体内へ安全で効率的に薬物や有効成分の浸透を促すドラッグデリバリーシステム(DDS:Drug Delivery System)にも応用できます。

このDDSの技術を応用して、種々の薬剤や有効成分を混合したものを、用途や目的に合わせて、皮膚に貼付することで、ニードルが直接皮膚の内部に入り、内部で溶解、浸透させることができ、薬剤を皮膚に塗布するよりも、はるかに効率的かつ多量の有効成分を伝達することが可能となります。

このように、生分解性溶解型マイクロニードルは、その効果はもとより、安全性や簡便性からも、注射に代わる剤型として、医薬分野だけでなく美容分野でも大変注目されています。

 

今後は、同社で合成している量子ドット、イオン液体などの先端材料とも組み合わせ、各種の医療、美容用途への検討を続けるとのことです。

Copyright© Dtimes , 2024 All Rights Reserved.