たばこと塩の博物館では、2023年12月2日(土)から2024年1月28日(日)まで、「見て楽し 遊んで楽し 江戸のおもちゃ絵 Part2」展を開催します。
たばこと塩の博物館「見て楽し 遊んで楽し 江戸のおもちゃ絵 Part2」
名称 : 「見て楽し 遊んで楽し 江戸のおもちゃ絵 Part2 」
ヨミ : ミテタノシアソンデタノシエドノオモチャエパート2
会期 : 2023年12月2日(土)~2024年1月28日(日)
第一部:12月2日(土)~12月27日(水)
第二部:1月4日(木)~1月28日(日)
主催 : たばこと塩の博物館
会場 : たばこと塩の博物館 2階特別展示室
所在地 : 東京都墨田区横川1-16-3(とうきょうスカイツリー駅から徒歩10分)
電話 : 03-3622-8801
FAX : 03-3622-8807
URL :
https://www.tabashio.jp
入館料 : 大人・大学生:100円/65歳以上の方:50円/小・中・高校生:50円
開館時間: 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 : 月曜日(ただし、1月8日は開館)、
12月28日(木)~1月3日(水)、1月9日(火)
※やむをえず開館時間や休館日を変更する場合があります。
江戸から明治にかけて、おもちゃ絵と呼ばれる主に子ども向けの浮世絵が作られていました。
おもちゃ絵には、“虫尽くし”や“道具尽くし”といった同じカテゴリーのものを一枚に集めて描いた「物尽くし」、昔話など話の起承転結を一枚の絵にまとめた「物語」、切り抜いたり組み立てたりする現在のペーパークラフトのような「細工物」、絵双六や十六むさしといった「ゲーム」と、大きく4つのジャンルがあります。
同館では浮世絵の多彩さ、江戸時代の出版文化の豊かさを伝えるものとしておもちゃ絵に注目しており、2020年度には「見て楽し 遊んで楽し 江戸のおもちゃ絵 Part1」を開催します。
その第二弾となる本展では、会期を二部に分け、合わせて約300点のおもちゃ絵を展示し、その魅力的な世界を楽しめます。
第一部では、天神様、祭礼、相撲、役者、忠臣蔵などをテーマにしたさまざまなジャンルのおもちゃ絵を展示します。
第二部では、児童文学研究者で法政大学名誉教授であったアン・ヘリング氏のコレクションから、ヘリング氏が特に大切にしていた桃太郎関係のおもちゃ絵、猫の絵、組上げ灯籠などを展示します。
展示を通して、おもちゃ絵そのものの魅力とともに、早くからおもちゃ絵に注目し、収集してきたヘリング氏についても紹介します。
手前に切り抜かれたおもちゃ絵が描かれており、当時の人々の日常に溶け込んでいたことが窺えます。
■展示作品紹介
<第一部〔12月2日(土)~12月27日(水)〕の展示作品>
第一部では、天神様、祭礼、相撲、役者、忠臣蔵などをテーマにしたものや、おもちゃ絵を多数出版した版元にスポットを当て、物尽くしや細工物、物語、ゲームなど、さまざまなジャンルのおもちゃ絵約170点を紹介します。
【廻り灯籠(細工物)】
廻り灯籠は、ペーパークラフトのように組み立てた後、内側にロウソクを灯すと、その熱の上昇気流を上部に付けた風車が受けて内側の影絵がゆっくりと動く仕掛けです。
この廻り灯籠は、2階が影絵で、1階では踊り騒ぐ宴会が繰り広げられる楽しいもの。
2階の芸者の手も動くようになっています。
【役者のおもちゃ絵(細工物/衣装つけ)】
人気役者・三代目中村歌右衛門の衣装つけ。
さまざまな演目の衣装に着せ替えることができます。
【おもちゃ絵を多数出版した版元の作品(細工物/写し絵)】
おもちゃ絵の出版が特に盛んになるのは、19世紀半ば以降と思われますが、それ以前におもちゃ絵の版元として目立つのは「江崎屋辰蔵(江辰)」です。
文政から天保にかけて、写し絵のおもちゃ絵が流行しました。
黒い背景に丸枠で小さな絵が描かれているのは、幻灯機のレンズの形に由来しているようです。
おもちゃ絵の画面に、覗き台が一緒に描かれているものは、そこに描かれた丸をくり抜いて絵をのぞかせて遊んだのでしょう。
対のようにも見えるこの2点は、江崎屋辰蔵が出版したものです。
【天神様のおもちゃ絵(物尽くし)】
三十六面に区切られた天神尽くし。
幼少の頃から晩年の荒ぶる様子まで、さまざまな菅原道真像が描かれています。
この作品も江崎屋辰蔵版です。
【お面のおもちゃ絵(物尽くし)】
能面、七福神、天狗、昔話の主人公、おかめひょっとこなどのお面が並びます。
面尽くしもおなじみのおもちゃ絵で、画面を細かく仕切って多数のお面を並べた作品が多いなか、本作では一つ一つのお面が大きく描かれています。
この作品も江崎屋辰蔵版です。
【仕掛け絵】
吹矢で的を射るとお化けが出るという仕掛けのおもちゃ絵です。
折変わりや引き抜きで、場面を変えることができるよう工夫されています。
この作品は自分で組み立てる細工物ではなく、この状態で売られていたと思われます。
【凧屋の仕掛け絵】
葦簀張(よしずばり)の凧屋と獅子舞が表裏で描かれているおもちゃ絵です。
写真は組み上げた状態ですが、畳むこともできます。
後世まで残ることが少ないおもちゃ絵の中で、一部欠けはあるものの、当時のままの形で残った珍しい例です。
この作品は自分で組み立てる細工物ではなく、この状態で売られていたと思われます。
<第二部〔1月4日(木)~1月28日(日)〕の展示作品>
第二部で紹介する作品は、全て、長年おもちゃ絵を収集されてきたアン・ヘリング氏(法政大学名誉教授/1938-2021)のコレクションから選びました。
へリング氏が特に大切にしていた桃太郎に関係する作品をはじめ、猫の絵、組上げ灯籠、双六といったおもちゃ絵約110点を取り上げます。
作品と合わせて、早くからおもちゃ絵に着目し、収集してきたヘリング氏についても紹介します。
【桃太郎のおもちゃ絵(物語)】
おばあさんが川で洗濯していると桃が流れてくるところ、成長して鬼退治に行くところ、そして帰還まで、桃太郎の物語が一枚の絵に描かれています。
【猫のおもちゃ絵】
擬人化した猫の絵ですが、着物を脱いだ猫がより猫らしく見える楽しい作品。
猫がお湯に入っている絵はほかにも数多く出版されています。
着物を着た擬人化された猫と、猫らしい猫が混在していて楽しい作品。
【金太郎のおもちゃ絵(細工物/衣装つけ)】
金太郎の衣装つけ。
衣装つけは、“姉様尽くし”や役者のものが多く見られますが、幼い子ども向けに、昔話の主人公のものも作られていたことがわかります。
【化け物のおもちゃ絵(物尽くし)】
お化けはおもちゃ絵の題材によく取り上げられます。
上から二段目には「悪」の顔をした生き物が二体描かれています。
これは、人の心のありようを表す魂で、悪魂(悪玉)に取り憑かれると人は悪行を重ねるという考えによるもの。
悪魂もお化けとして取り上げられています。
【双六】
花咲爺、分福茶釜、桃太郎、猿蟹合戦、狐の嫁入りなど、昔話のさまざまな場面がマスになっている双六です。
【組上げ灯籠】
二枚で鵯越の坂落しで有名な一ノ谷合戦の様子を作り上げるため、人物などは小さく、坂落しの場面も小さすぎてよくわからないのが残念ですが、完成すると楽しいものです。
■アン・ヘリング氏について■
1938年オレゴン州ポートランド生まれ。
文楽のアメリカ公演を見て衝撃を受け、ワシントン大学にて日本語を学びます。
その後来日し、法政大学で教鞭をとりつつ、日本のおもちゃ絵や児童文学に関する一大コレクションを築きました。
ヘリング氏と当館との関わりは、1985年に始まります。
「企画展 江戸の遊び絵」(1986年1月4日~2月16日)で、ヘリング氏所蔵のおもちゃ絵を多数展示し、以後、おもちゃ絵に関わる展覧会を開催するたびにヘリング氏の協力を受けてきました。
また、当館の1988年度版常設展示室ガイドブック英語版はヘリング氏による翻訳ですし、1999年には、ヘリング氏の紹介がきっかけとなってセップ・リンハルト氏(ウィーン大学教授)とともに特別展「拳の文化史」を開催するなど、長年にわたって当館の協力者でした。
今回の「江戸のおもちゃ絵 Part2」展においても、展示に向けての事前調査をヘリング氏と重ねていましたが、2021年、氏は急逝されました。
そのため、関係者と相談の上、ヘリング氏のコレクションを一時的にお預かりして、当館で整理することとなりました。
本展は、当初、ヘリング氏のコレクションを一部借用展示するという構想でしたが、ヘリング氏のおもちゃ絵コレクションをほぼ全点お預かりしたことにより、第二部(1月4日~1月28日)は、氏のコレクションのみで構成することとしました。
第一部・第二部と合わせ、計166点の氏のコレクションを紹介していますが、ヘリング氏が収集したおもちゃ絵は文字通り膨大で多岐にわたるため、本展で紹介できたのはコレクションのごく一部です。