シマニシ科研は、シーマロックス液肥によるセンチュウの抑制効果が判明したことを発表しました。
また、本実験結果は、ホームページに掲載予定です。
シーマロックス液肥土壌潅水によるセンチュウ抑制効果について
詳細URL: https://shimanishi-kaken.com/senchu
■背景
国内の食料自給率の向上が大きなテーマであるなか、市場は見た目も味もよい農作物を求める傾向が、また、消費者は減農薬・無農薬の農作物を好む志向があります。
一方、農業を営む方の悩みの一つとして「センチュウ害」があります。
「線形動物門」に属する動物類の総称であるセンチュウは、土壌中に生息し農作物の品質・収量低下の被害をもたらします。
土壌中のミネラルバランスや細菌叢を良好にすることでセンチュウ害を減らすことができるのではないかと考え、東京農工大学 豊田研究室に実験の依頼をしました。
■研究結果について
*シーマロックス液肥単体での試験
シーマロックス液肥は酸性度の高く・ミネラルが豊富に含まれた製品です。
この液性や含まれるミネラルが害をもたらす植物寄生性センチュウに抑制効果があるか実験をしました。
(1) サツマイモネコブセンチュウへの殺虫効果
・実験方法
12℃で保存しておいたサツマイモネコブセンチュウ卵のうを25℃に移し、4日間培養することで孵化してきた二期幼虫を集めて、適宜希釈したシーマロックス液肥と混合し、24時間後に顕微鏡下で二期幼虫の動きを確認。
運動性あり:確実に生きている
運動性なし:死んでいるとまでは断言できないが確実に活動性が低下していたと判断できる
・結果
100倍希釈液に浸漬したところ、24時間後にはすべての個体が全く動かなくなり、殺虫効果が非常に高いと判断される。
この原因にはpH2.8という強酸性ということがあげられるが、鉄やマンガンイオンの毒性が高いことが知られるので、微量濃度の重金属が影響した可能性も考えられる。
サツマイモネコブセンチュウに対する影響
(2) ダイズシストセンチュウへの殺菌効果
・実験方法
サツマイモネコブセンチュウと同様の実験をダイズシストセンチュウの二期幼虫を用いて実施した。
・結果
ダイズシストセンチュウは100倍希釈液でも1日後に約7割の二期幼虫が運動性を示し、サツマイモネコブセンチュウよりも強いことを示唆した。
培養4日後には100倍希釈液ではほとんど死滅したが、300倍以上の希釈液では水道水と同程度であった。
ダイズシストセンチュウに対する影響
(3) 考察
シーマロックス液肥の殺センチュウ活性は植物寄生性センチュウの種ごとに異なると考えられた。
ダイズシストセンチュウは大豆しか犯さないのに対して、サツマイモネコブセンチュウは多くの作物を犯す、そのセンチュウに対してより高い効果が見られたことは、農業利用の点では有望である。
(4) 土壌中のサツマイモネコブセンチュウに対する効果測定
・実験方法
茨城県神栖市のピーマン栽培生産者よりサツマイモネコブセンチュウ汚染土壌を採取した。
その汚染土100gに100倍、300倍、500倍、1,000倍、水道水を10ml添加混合し、25℃で5週間培養後、サツマイモネコブセンチュウ数をリアルタイムPCR法(卵や休眠状態を含むサツマイモネコブセンチュウ)を用いて計測するとともに、2週間後及び5週間後にベルマン法によりセンチュウを分離し、食性ごとに分類し、液肥のセンチュウ群集への影響を詳細に評価した。
5週間後のサツマイモネコブセンチュウ密度
・結果
サツマイモネコブセンチュウ濃度は約半減し100倍および300倍希釈液を施用することで有意な差が見られた。
シーマロックス液肥は土壌中のサツマイモネコブセンチュウ密度を低減させる効果があることが判明した。
土壌中のセンチュウ数の推移
シーマロックス液肥を1,000倍希釈から100倍希釈し、土壌に混和し、5週間培養することで、土壌センチュウ群集に及ぼす影響を評価した。
細菌食性、藻類食性の自活性センチュウ数は、培養2週間後および5週間後のいずれにおいても減少しておらず、また、100倍希釈液を施用した2週間後のみ、雑食性センチュウ数が約1/4に減少していたが、その他の処理区ならびに5週間後では雑食性センチュウに対するマイナスの影響は見られなかった。
したがって、自活性センチュウ数に対するマイナスの影響はないことが分かり、本液肥を施用することで、植物寄生性センチュウのサツマイモネコブセンチュウ密度は減少するものの、自活性センチュウ数は減少させないことが判明した。
ベルマン法ではセンチュウ以外にヒメミミズも計数できるが、ヒメミミズに対しても死滅させるような影響は見られなかった。
カビ食性センチュウが培養に伴い激減したが、これは対照区でも見られており、シーマロックス液肥の影響ではないと考えられる。
なぜ密度が激減したのかは不明である。
画像「サツマイモネコブセンチュウに対する影響」で示しているリアルタイムPCR法で測定したサツマイモネコブセンチュウ密度はシーマロックス液肥の施用で減少したが、ベルマン法ではそうした傾向は見られなかった。
ベルマン法は運動性のあるセンチュウのみを計数する方法で、サツマイモネコブセンチュウ数を過小評価することが分かっている。
2週間後のサツマイモネコブセンチュウ数はシーマロックス液肥施用で高くなっており、サツマイモネコブセンチュウの孵化を促進した可能性がある。
本実験は植物を栽培していない条件で行ったため、孵化したセンチュウは宿主がないために、餓死し、そのために5週間後の密度が減少したと考えられた。