日本城郭協会が第2回日本城郭協会大賞の選定を行い、日本城郭協会大賞に「久野城址保存会」の受賞を決定。
併せて城郭城址の維持・整備を自主的に行うボランティア団体等を賞する日本城郭文化振興賞に「可児市山城連絡協議会」を、城郭文化の普及に寄与した個人・団体を賞する特別賞を「香川元太郎氏」と「島充氏」に授与。
また、今回から城郭管理者として特筆すべき成果を挙げた自治体等を別枠で顕彰することとなり、「福島県白河市」と「福山城」に調査・整備・活用賞を授与することを決定し、発表しました。
日本城郭協会「第2回日本城郭協会大賞」
第2回日本城郭協会大賞審査員:
- 小和田哲男(協会理事長・文学博士・静岡大学名誉教授)
- 三浦正幸(協会評議員・工学博士・広島大学名誉教授)
- 千田嘉博(協会理事・文学博士・奈良大学教授)
- 中井均(協会評議員・滋賀県立大学名誉教授)
- 加藤理文(協会理事・文学博士)
- 小和田泰経(協会理事・静岡英和学院大学非常勤講師)
- 萩原さちこ(協会理事・城郭ライター)
- 安形哲夫(協会会員・株式会社ジェイテクト前社長)
- 森忠彦(毎日新聞元編集委員)
- 宮代栄一(朝日新聞編集委員)
- 多可政史(読売新聞文化部)
2022年に公益財団法人移行10周年を記念して城郭文化の振興に貢献した団体・個人を顕彰する制度として創設された「日本城郭協会大賞」
小和田理事長を審査員長とする審査会にて「第2回日本城郭協会大賞」の選定を行い、日本城郭協会大賞に「久野城址保存会」の受賞が決定しました。
併せて城郭城址の維持・整備を自主的に行うボランティア団体等を賞する日本城郭文化振興賞に「可児市山城連絡協議会」を、城郭文化の普及に寄与した個人・団体を賞する特別賞を「香川元太郎氏」と「島充氏」に授与することを決定。
また、今回から城郭管理者として特筆すべき成果を挙げた自治体等を別枠で顕彰することとなり、「福島県白河市」と「福山城」に調査・整備・活用賞を授与することを決定し、城の日である4月6日に発表しました。
「日本城郭協会大賞」久野城址保存会(静岡県袋井市)
昭和52年に宅地造成計画が持ち上がった城址を残すべく、当時約200人の地元有志で結成された久野城址保存会。
袋井市指定史跡化を目指した活動の結果、昭和54年に認定されました。
史跡化が実現して以降は、単に城址の保存と顕彰だけを目的とするのではなく、城址を地域のシンボルとして、地域活動や地域づくりの核と位置づけました。
平成元年からは市全域の保存会へと飛躍・発展させるため、法人会員を募集する等、組織の強化・拡大を図るとともに、会員自らの会費により保存会活動を展開。
団体結成以来、地元の北小学校6年生を対象にした久野城教室を毎年開催したり、年数度の広大な城址の草刈りを行うなど、長きにわたる地道な取り組みが評価されました。
「日本城郭文化振興賞」可児市山城連絡協議会(岐阜県可児市)
小さな村の城から地域支配の拠点となった大規模な城まで多様な城跡が残っている、岐阜県可児市。
とりわけ天正12年(1584)の小牧・長久手の戦いの際に改修された遺構が良好な状態で残っている城跡が多く、その特性を地域団体がよく理解し、継続的な整備活動が行われています。
山城を地域の誇りとなる資源としてとらえる行政(文化財課・観光交流課)と連携し、保存と活用のバランスを考えた整備活動に取り組んでいるのが可児市山城連絡協議会です。
城跡の持つ魅力や整備活動の成果を多くの方に知ってもらう機会として、行政や専門家、企業や他地域の城跡の整備に関わる団体、山城ファンが一体となったイベント「山城に行こう」を開催しており、保存整備・活用のあり方のモデルとして評価されました。
特別賞 香川元太郎(かがわ げんたろう)氏(イラストレーター)
香川元太郎氏の姿なき戦国時代の山城を見事に可視化した鳥瞰イラストは、城ファンの理解の手助けになり、今や城の本質に迫るための教科書となっています。
緻密で丁寧な作品群は専門家から信頼も厚く、イラストの範疇を超えた学術資料に匹敵すると評価する。同氏の長年にわたる膨大な山城イラスト作品制作実績が評価されました。
特別賞 島充(しま みつる)氏(模型作家)
城郭模型の製作を長年にわたって行っており、多くの作品が各地で常設展示あるいは巡回展示されている島充氏。
島氏が製作した城郭模型は、天守や城郭建造物、あるいは城郭全体を対象としたものであり、その模型は復元模型・破損状況模型・再建工事中模型など多岐にわたります。
特に天守および城郭復元模型は学術的成果物として他の模型製作者と一線を画すものです。
復元模型の制作にあたって、島氏は古写真や古絵図などの各種資料を渉猟し、それをもとにして綿密な復元考察を行っています。
その研究成果物である城郭復元模型は、それまでの復元研究で見落とされてきた点や誤って復元された点が完璧に修正されたもの。
また、模型の製作技術は全国一と高く評価され、城郭のもつ荘厳さや華麗さにおいて実物を目の当たりにしているがごとくに詳細かつ写実的に再現しており、芸術作品としての価値をも示すものであります。
城郭復元模型の価値を学術的かつ芸術的水準に高めた点において、島充氏の業績は並ぶ者がないと高く評価されました。
調査・整備・活用賞 福島県白河市
史跡指定後の2011年3月11日に発生した東日本大震災で、東北地方の城郭の中でも最大級の被害を受けた白河小峰城。
2022年に本丸西側から北側にかけて取り囲む「帯曲輪」の整備が完了し、一般公開が始まりました。
石垣の再建は難しい作業となりましたが、震災から11年を経て完全復活を果たしました。
江戸時代の伝統工法を用いつつ、大きさや形状、加工の痕跡を記録する「カルテ」も作成。
これらの手法は、熊本地震で石垣が大破した熊本城(熊本県)、西日本を襲った豪雨や台風の被害を受けた丸亀城(香川県)などの修復にも参考とされ、石垣復旧のモデルケースとして認知されています。
災害大国の日本で、大震災による苦難を経つつ、石垣という文化財を後世に守り伝える取り組みが評価されました。
調査・整備・活用賞 福山城
福山城の城郭自体は戦後の復元城ではありますが、福山藩の城下町としての町おこしが熱心で、市役所を中心に、市民も参加し、近年、オペラなどの文化事業にも取り組んでいます。
2022年の事業の中心である「令和の大普請」の目玉として、かつて天守北側に張られていた黒塗り鉄板を復元。2022年8月、77年ぶりに真っ黒の頑丈そうな重みのある城壁が完成。
報道にも大々的に取り上げられ、全国に城郭の話題を提供した功績が評価されました。
受賞者の表彰は6月の日本城郭協会総会にて執り行われる予定です。
また、年末にパシフィコ横浜にて開催される「お城EXPO2023」(主催:お城EXPO実行委員会)にて受賞者による記念講演等を予定しています。
日本城郭協会が発表した「第2回日本城郭協会大賞」の紹介でした。