東京書籍が「クラウド版デジタル教科書」の学習履歴データ活用に向けた共同実証研究の2021年度報告書を公開!
研究結果は、今後、教科書の内容向上や学習者用デジタル教科書の使いやすさの向上などにも役立てられます☆
東京書籍「学習者用デジタル教科書・教材から得られる学習履歴データ分析実証研究」2021年度報告書
実施期間:2021年10月~2022年3月末
実施機関:つくば市教育委員会、東北大学大学院 情報科学研究科 堀田龍也研究室、東京書籍、Lentrance
実証対象:つくば市立小学校7校、中学校5校(※義務教育学校含む)
実施方法:「Lentrance」および「Lentrance Analytics」(先行開発版)を用いて学習履歴データを収集・分析
実施教科:小学校 国語(1~6年) 社会(4~6年) 保健(3~6年)、中学校 英語(1~3年) 技術・家庭(技術分野)
※上記の内、小学校社会4年と中学校英語1年について詳細な調査を実施
調査項目:
(1)学習者用デジタル教科書の使用が児童生徒の学習に与える影響の検証
(2)学習履歴データの活用による学習行動の可視化
つくば市教育委員会、東北大学大学院 情報科学研究科 堀田龍也研究室、東京書籍、およびLentranceは、2021年10月より、GIGAスクール構想による学習者用端末と学習者用デジタル教科書の普及に対応し、学習者用デジタル教科書から得られる学習履歴の活用による指導改善や評価への活用の実現に向けた実証研究を行ってきました。
今回、2021年度の結果についての報告書を公開。
研究では、学習者用デジタル教科書の使用が児童生徒の学習に与える影響の検証と、学習履歴データの活用による学習行動の可視化が実施されました。
まず、学習者用デジタル教科書使用開始直後(10月)と4カ月後(2月)に実施した英語力の調査(Reading、Listening)では、全ての指標で2回目が1回目を上回る結果となりました。
また、合わせて実施をした英語学習に関するアンケート調査の結果からは、「英語の学習方法(学習方略)」「教科書観」などの項目については、前後で大きな変化は見られなかったものの、「英語の学習方法(学習方略)」の項目で、「英語の発音練習をする」における肯定的な回答の割合(「とてもよくあてはまる」+「まあ当てはまる」の%)が上昇していることが分かりました。
授業後に行ったアンケートからも、使用開始直後と、4カ月後では特に「単語の発音練習をする」「教科書本文の音読練習をする」などの項目で、学習者用デジタル教科書の使用が増えると同時に、「していない」の回答が減少。
学習者用デジタル教科書の導入により、発音練習や音読練習に対する意識が高まっていることが分かります。
一方で、「教科書の色々なページを見る」「教科書本文をノートに書く・写す」などの項目では前後で大きな変化はなく、紙かデジタルか一方ではなく、メディアの特性を生かして両方を使い分けている様子が見て取れます。
そして学習履歴データからは、教育委員会が実施した研修会後、操作回数、ユーザ数ともに増えている様子が確認できます。
学習者用デジタル教科書の活用の推進のためには、導入するだけではなく、研修会等で活用の仕方を周知していくことが重要であると言えます。
教科ごとの活用のされ方を詳しく見ると、中学校英語では、他教科と比較してデジタルコンテンツ(ネイティブ発音による朗読音声の再生など)の利用が多く、英語科においては朗読音声コンテンツの重要性が高いと考えられます。
また、放課後や長期休暇中などにも利用されており、授業中だけではなく、家庭学習においても活用されている様子が確認できます。
さらに、教科書のどの部分を使用したかを表すヒートマップでは、小学校5年生社会下巻では図版やコラムが多く、小学校6年社会歴史編では本文が多いなど、教科や学年による活用のされ方の違いが明らかになりました。
また、中学校英語においては、朗読音声の再生コンテンツよりも、本文の拡大表示の方が多く使われていることも明らかになっています。
今後は、これまで取得したデータを基に、実際の使用場面や教員の指導法・働きかけとも照らし合わせて、学習上の意味のある操作と意味のない操作の峻別や、学習者の行動パターンの類型化など、学習履歴データから学習の様子や学習者の特性を明らかにしていく手法の研究が進められていきます。
分析結果による新しい知見に関しては、東北大学 堀田研究室を中心に、学術研究としても公表される予定です。
また、合わせて、教科書の内容向上や学習者用デジタル教科書の使いやすさの向上などにも役立てられていきます。
小中校生の学習について調査。
東京書籍「学習者用デジタル教科書・教材から得られる学習履歴データ分析実証研究」2021年度報告書の紹介でした☆