記事ポイント
- 谷誠著の書籍が2026年10月に重版
- 水源山地の豪雨時の流出は鉛直浸透流によると世界で初めて解明
- 本体3,000円(+税10%)、A5判272頁
鹿島出版会が、谷誠(たに・まこと)著『豪雨災害の水文学 流域治水に必要な流出モデルのパラダイムシフト』を重版しました。
2026年5月に刊行された本書は、水害・土砂災害の発生メカニズムに関する最新の科学成果を解説しています。
豪雨時に雨水が川へ流れ出る仕組みを、現場観測と理論的解析の両面から読み解けます。
鹿島出版会『豪雨災害の水文学 流域治水に必要な流出モデルのパラダイムシフト』

- 書名:『豪雨災害の水文学 流域治水に必要な流出モデルのパラダイムシフト』
- 著者:谷 誠
- 出版社:鹿島出版会
- 刊行・重版:2026年5月刊、2026年10月重版
- 価格:3,000円(+税10%)
- ISBN:9784306025288
- 体裁:A5・272頁
鹿島出版会は、京都大学名誉教授で水文・水資源学会元会長の谷誠さんが著した『豪雨災害の水文学 流域治水に必要な流出モデルのパラダイムシフト』を、2026年10月に重版しました。
2026年は豪雨によって全国各地で川の氾濫や土砂くずれが起こり、甚大な被害が繰り返されました。
温暖化によって豪雨の規模が大きくなり、発生頻度も高まってきたことは、多くの人が実感しているところです。
減災の工夫には正しい科学知見が欠かせず、降雨条件を予測する気象学に加えて、水源山地に降った雨水がどう流れ下って災害をもたらすかを明らかにする「水文学」の重要性が増しています。
本書の最大のトピックは、水源山地に激しい雨が降るとただちに川の氾濫や土砂崩れが起こる現象を説明する、雨水の流出メカニズムです。

従来は、雨水が斜面の地表面を一気に流れ下る地表流のメカニズムが考えられていました。
本書は、土壌層の中に雨水が鉛直に浸みこんでから、パイプ状の水みちを通って速やかに排水される鉛直浸透流のメカニズムによるとの知見を、現場観測と理論的解析の両面から世界で初めて明らかにしました。

雨水が地表を流れず土壌層を通過するため、大雨の場合でも、森林土壌が川のピーク流量を低くする「緑のダム」のはたらきは発揮され続けます。
降雨条件と総流量が同じでも、土壌の種類による間隙サイズの分布の違いで、流量の時間変化やピーク流量の高さが異なることが、シミュレーション結果で示されています。

急斜面試験地では土壌層内の水の動きが観測され、この流出メカニズムの根拠が土壌物理学の理論とあわせて示されています。
試験地は40°を超える急斜面ですが、落葉の流亡や表土の侵食は見られず、雨水は土壌に浸透してほとんど地表流が発生しません。
斜面下端の風化基岩から流出する湧水量と、土壌層内の水分量の時間変化は、それぞれ測定装置で観測されています。
大雨時の川のピーク流量を低くする森林のはたらき、流域条件の洪水ピーク流量への影響評価、土砂災害発生危険度を知らせる土壌雨量指数の3点は、著者が解説しています。
本書の新しい知見の概要は、Wileyの国際科学雑誌「Hydrological Processes」にも掲載されています。
国土交通省は、堤防・ダム・砂防ダム等のインフラ整備だけでは十分ではないとして、集水域から氾濫域にわたる流域のあらゆる利害関係者の協力を得る「流域治水」を推進しています。
その基礎として、線状降水帯の発生など降雨の予測に加え、川の氾濫や斜面崩壊の発生メカニズムの解明が欠かせません。
地殻変動帯にある日本では、水源山地の急斜面での雨水の流出メカニズムの研究が特に重要です。
森林の保水機能や崩壊防止機能、都市開発やメガソーラー開発が災害を大きくする恐れに関心を持つ人も多く、地質・地形・土壌・植生などの流域条件が及ぼす影響を科学する水文学は、災害対策で重要な社会的役割を担います。
治水対策の実用面では、降雨条件に対する川の流量の時間変化を計算する「流出モデル」が重要な役割を果たします。
本書の新しい知見をふまえた、副題どおりの「流域治水に必要な流出モデルのパラダイムシフト」が求められています。
著者の谷誠さんは1950年大阪市生まれで、1973年に京都大学農学部林学科を卒業し、1980年に京都大学農学博士を取得しました。
1981年に農林水産省林野庁に入省し、1999年に京都大学大学院農学研究科森林水文学分野教授、2016年に京都大学名誉教授となり、2016~2021年は人間環境大学特任教授も務めました。
2012~14年に水文・水資源学会会長、2014年に日本地球惑星科学連合(JpGU)フェロー、2020年に水文・水資源学会功績賞、2022年に日本農学賞・読売農学賞、2024年に水文・水資源学会論文賞を受けています。
単著に『水と土と森の科学』(2016年、京都大学学術出版会)、『矛盾の水害対策』(2023年、新泉社)があり、2026年に本書『豪雨災害の水文学』(鹿島出版会)が加わりました。
共著には『森林水文学』(1992年、文永堂出版)、『緑のダムの科学』(2014年、築地書館)、『森林と災害』(2018年、共立出版)などがあります。

『豪雨災害の水文学 流域治水に必要な流出モデルのパラダイムシフト』は、豪雨時に川の氾濫や土砂くずれが起こる仕組みを、現場観測と理論の両面から読み解ける一冊です。
流域治水や森林の役割に関心のある方が、最新の科学知見を一冊で押さえられます。








