記事ポイント
- 薩南諸島でスズメダイ科の幼魚に寄生する新種を発見
- 白い卵のうが白髪のように見え、和名はスズメノワカシラガ
- マイクロCTで腎臓に食い込む様子を3Dで確認
鹿児島大学大学院理工学研究科の上野大輔教授と国立遺伝学研究所の前野哲輝技術専門職員の共同研究グループが、薩南諸島海域で新種のカイアシ類を発見しました。
スズメダイ科魚類の幼魚に多く寄生し、体外に伸びる白く細長い卵のうが白髪のように見えることから、標準和名をスズメノワカシラガと命名しました。
成果は2026年9月18日付でMarine Biodiversityのオンライン版に掲載されています。
鹿児島大学 新種寄生虫スズメノワカシラガ

- 標準和名:スズメノワカシラガ
- 学名:Cardiodectes laybackinabaueroides(カーディオデクテス・レイバックイナバウロイデス)
- 分類:ヒジキムシ科ウオノカンザシ属のカイアシ類
- 体長:雌成体で約8mm(卵のうを含まず)
- 分布:薩南諸島海域(三島村竹島から与論島海域)
- 研究者:上野大輔(鹿児島大学大学院理工学研究科・教授)、前野哲輝(国立遺伝学研究所・技術専門職員)
- 論文掲載:Marine Biodiversity(2026)56: 101、2026年9月18日オンライン公開、doi: 10.1007/s12526-026-01698-2
スズメノワカシラガは、スズメダイ科魚類の幼魚に多く寄生する新種のカイアシ類です。
上野教授は2015年の鹿児島大学着任を契機に、薩南諸島海域全域の海洋生物調査を11年以上続けてきました。
その調査でスズメダイ科魚類に外内部寄生するヒジキムシ科カイアシ類の1種が、薩南諸島に限って広域に分布することを確認しました。
上野教授が寄生虫の顕微鏡的な形態解析と新種記載を、前野氏がマイクロCT解析を主に担当しました。
この種は過去に記載された近縁種のいずれとも異なる形態的特徴を持つため、新種として記載されました。
ヒジキムシ科は魚や鯨類の寄生虫で、多くは前体部を宿主体内に深く穿孔させ、胴体と紐状の卵のうを体外へ露出させる外内部寄生を示します。
寄生された幼魚は、白髪のようにも見える細長い卵のうを体側にぶら下げます。
和名はこの姿に因みます。
写真はアマミスズメダイの幼魚で、卵のうとその付着部である胴体の後端部のみが体外に露出しています。

学名は、背側に大きく反り返り、頭部の背面が胴の背側に接触しそうに見える姿が、フィギュアスケートのレイバック・イナバウアーを連想させることに因みます。
雌成体の体長は卵のうを含めず約8mmで、2本の細長い部分が卵のうです。

宿主体内での寄生部位や様式を調べるため、マイクロCT解析から3Dモデルを構築しました。
その結果、本種の頭部は宿主魚の腎臓に深く食い込み、静脈血を摂食する可能性が示されました。
寄生部の腎臓は大きく膨れており、宿主魚への影響は甚大と予想されます。
これが、本種がほとんど幼魚に寄生する理由にもつながると考えられます。
様々なスズメダイ科魚類を宿主としますが、そのほとんどは未成熟の幼魚です。
本種は薩南諸島海域からのみ見つかっており、この海域が分布の中心と考えられ、生息域の狭い種とみられます。
与論島からトカラ列島の沿岸域はサンゴ礁が発達する国内有数の海域で、サンゴ礁は海洋生物多様性の25%を育むとも試算されています。
今回の発見は、鹿児島県海域の自然の豊かさと希少さを示す新たな根拠となります。
白髪のようにも見える細長い卵のうが、薩南諸島の幼魚に寄生する新種の目印です。
マイクロCTによる3Dモデルで腎臓に食い込む姿も捉えられ、サンゴ礁の海に残る未知の生物の存在を示す成果となりました。








