記事ポイント
- 鹿児島大学「系外惑星PDS70c」の周惑星円盤にダストリングが存在する可能性を理論モデルで示しました。
- アルマ望遠鏡の多波長観測データはドリフトモデルでは再現できず、リングモデルでのみ説明できることが分かりました。
- ダストリングが衛星形成の材料となりうることを示し、謎多い衛星の形成過程に新たな手がかりを与えました。
鹿児島大学は、大学院理工学研究科の特任助教・芝池諭人氏らの研究グループが、形成中の系外惑星「PDS70c」の周囲に塵の輪「ダストリング」が存在する可能性を理論モデルで示したと発表しました。
アルマ望遠鏡による多波長観測データは、従来の周惑星円盤モデルでは再現できず、ダストリングを仮定したモデルでのみ説明できることが分かりました。
本研究は学術誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載され、アメリカ天文学会からハイライト論文に選出されました。
鹿児島大学「系外惑星PDS70c」

- 発表機関:鹿児島大学大学院理工学研究科 天の川銀河研究センター
- 研究代表者:特任助教 芝池諭人
- 掲載誌:The Astrophysical Journal Letters
- 論文名:Interpreting ALMA Multiwavelength Continuum Observations of PDS 70c: An Optically Thick Dust Ring in the Circumplanetary Disk
- 著者:Yuhito Shibaike, Satoshi Okuzumi, Takahiro Ueda, Kiyoaki Doi, and Misato Fukagawa
- 発表日:2026年9月1日
「PDS70c」は、若いTタウリ型星PDS70を周回する、いままさに形成されている最中の系外惑星です。
木星や土星と同じくガス惑星と考えられ、周囲の原始惑星系円盤からガスを集積している最中で、アルマ望遠鏡がサブミリ・ミリ波で検出した唯一の系外惑星です。
この惑星の周囲には、ガス集積に伴って形成される小さな円盤「周惑星円盤」が存在し、そこに含まれるダストが放つ熱放射がアルマ望遠鏡で捉えられています。
近年の多波長観測では、円盤の反対側を見通せないほどダストが存在する「光学的に厚い」状態が示唆され、ダストが惑星へ落下すると予測する従来の理論モデルでは説明が難しい結果でした。
「ダストリングモデル」による観測結果の再現

研究グループは、周惑星円盤内に光学的に厚いダストリングが存在すると仮定する「リングモデル」を作成し、従来の「ドリフトモデル」と比較しながら、周惑星円盤全体からのフラックス密度の波長依存性を調べました。
その結果、ドリフトモデルではアルマ望遠鏡による幅広い波長帯の観測データを再現できない一方、リングモデルでは観測結果を再現できることが分かりました。
パラメーターを幅広い値で変動させた検証でも、ドリフトモデルは周惑星円盤に流入するダストガス質量フラックス比が0.1以上という極端な状況を仮定しない限り観測値を再現できないのに対し、リングモデルはダスト/ガス面密度比が0.003以上であれば観測を再現できる可能性が示されました。
「ダストリング」が示す衛星形成への手がかり

木星や土星の周囲にある氷と岩石でできた巨大衛星は、周惑星円盤内でダストが集まって形成されたと考えられており、「衛星形成論」の文脈ではダスト落下を回避する仕組みとしてダストリングの存在がこれまでも検討されてきました。
今回PDS70cの観測から示唆されたダストリングは、この衛星形成の数値シミュレーション結果を支持する結果となりました。
研究グループはさらに、観測を再現するダストリングが、その後の衛星形成に繋がるほど十分なダストを集めている可能性を示しました。
将来のngVLA望遠鏡による観測では、このダストリングをより明瞭に捉えられると期待されています。
系外惑星の形成過程を追ったこの研究成果は、太陽系の惑星や衛星がどのように生まれたかを考えるヒントになります。
アルマ望遠鏡とngVLA望遠鏡による観測の進展から、今後さらに詳細な周惑星円盤の姿が明らかになることが期待されます。
鹿児島大学「系外惑星PDS70c」の紹介でした。
よくある質問
「PDS70c」とはどのような天体ですか?
若いTタウリ型星PDS70を周回する、いままさに形成されている最中の系外惑星です。
木星や土星と同様のガス惑星と考えられ、周囲の原始惑星系円盤からガスを集積している段階で、アルマ望遠鏡がサブミリ・ミリ波で検出した唯一の系外惑星です。
「ダストリング」とはどのようなものですか?
周惑星円盤の一部にダストが集中して分布する、光学的に厚いリング状の構造です。
円盤全体にダストが充満しなくても、この部分だけで観測結果を説明できることが理論モデルで示されました。
今回の研究はどこに発表されましたか?
学術誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載され、アメリカ天文学会(AAS)からハイライト論文に選出されました。
このダストリングは衛星の形成とどのような関係がありますか?
木星や土星の巨大衛星がダストの集積で形成されたとされる「衛星形成論」において、ダストリングは材料となるダストの欠乏を回避する仕組みとして検討されてきました。
今回の観測結果はこの理論を支持する手がかりとなりました。







