記事ポイント
- 岡山理科大学と新潟県村上市の共同研究で、好適環境水センターにてシロザケの陸上養殖がスタート
- 2025年の新潟県のサケ単純回帰率は0.06%と過去最低水準に落ち込み、陸上養殖で地域復興を図る
- 発眼卵から親魚まで育てる世界初の「完全養殖」の実現を目標に、2,080匹が35㌧水槽で育成中
岡山理科大学と新潟県村上市の共同研究により、シロザケの陸上養殖プロジェクトが動き始めています。
同大学の好適環境水センターで育てられている稚魚は平均体重23㌘・体長13㌢にまで成長し、2,080匹が35㌧水槽を元気よく泳いでいます。
発眼卵から親魚を育てて採卵し人工種苗を育て続ける「完全養殖」が実現すれば、世界初の画期的な成果となります。
岡山理科大学「好適環境水センター」

- 研究機関:岡山理科大学 好適環境水センター
- 共同研究先:新潟県村上市
- 養殖魚:シロザケ
- 現在の飼育数:2,080匹
- 現在の成育状況:平均体重23㌘・体長13㌢
- 使用水槽:35㌧水槽
- 担当:山本俊政准教授(生物科学科)ほか
好適環境水センターは、岡山理科大学が独自に開発した特殊な人工水「好適環境水」を使って魚を陸上で育てる研究施設です。
今回は生物科学科の山本俊政准教授が中心となり、村上市から届いた2,500匹の稚魚の陸上養殖に取り組んでいます。
稚魚は体長8〜9㌢・体重5㌘ほどに育った段階で小水槽から7㌧水槽へ移され、平均体長13㌢に達した2026年5月4日に35㌧水槽へと収容されました。
村上市は平安時代から日本海側有数のサケの産地として知られる町です。
しかし近年、温暖化の影響で北上してきたブリやサワラが放流した稚魚を食べてしまうケースが増えており、川に戻る個体数は激減しています。
国立研究開発法人水産研究・教育機構の調査では、2025年のサケの単純回帰率は全国平均が0.66%(1989年以降最低)を記録し、新潟県では0.06%にまで落ち込んでいます。
こうした状況を受けて村上市は陸上養殖に活路を見出し、サケの町の再興を山本准教授に託します。
育成チームと養殖の現況

35㌧水槽の前に並ぶのは、(左から)山本准教授、技術員の齊藤華緒里さん、津村誠一・好適環境水センター招聘教授、技術員の山内啓誠さんです。
この4名が養殖の中心を担っており、日々の飼育管理を行っています。
現在2,080匹が生残しており、1年で体重1㌔、2年で1.5〜3㌔ほどに成長するとみられています。
センターが目指す「完全養殖」は、発眼卵から親魚を育てて採卵し、さらに人工種苗を育てるサイクルを陸上で完結させるもので、シロザケでの実現は世界にまだ例がありません。
2015年の実績——「トキシラズ」の誕生

2015年、山本准教授は同センターでシロザケ数十匹の陸上養殖をすでに手がけており、脂の乗った高品質なシロザケ「トキシラズ」が体重1.2㌔まで育ちます。
「トキシラズ」とは、産卵前に脂がたっぷりと乗った状態のシロザケを指す呼称で、市場でも高く評価される品質です。

2015年の養殖では「トキシラズ」の試食会も実施されます。
この成功体験が今回の完全養殖プロジェクトへの確信を裏付けており、山本准教授は「陸上で持続的に育てていくことが可能になれば、世界の漁業に与えるインパクトは計り知れない」と述べています。
温暖化の影響で回帰率0.06%にまで落ち込んだ新潟県産シロザケの危機に対し、好適環境水センターでは2,080匹の稚魚が着実に育ちつつあります。
世界初の完全養殖が実現した場合、海に依存しない持続的な水産生産モデルとして国際的な注目を集める技術となります。
岡山理科大学「好適環境水センター」の紹介でした。
よくある質問
Q. シロザケの「完全養殖」とはどのような方法ですか?
A. 発眼卵から親魚まで陸上で育て、その親魚から採卵して人工種苗をさらに育てるサイクルを陸上環境内で完結させる養殖方法です。
シロザケでのこの方式の実現は世界にまだ例がなく、今回のプロジェクトが達成すれば世界初の成果となります。
Q. シロザケはどのくらいの大きさまで成長しますか?
A. 好適環境水センターで育てられているシロザケは、1年で体重約1㌔、2年で1.5〜3㌔ほどに成長するとみられています。
2015年の養殖では体重1.2㌔の「トキシラズ」が誕生した実績があります。