記事ポイント
- 東京工芸大学の学生8名が大川小学校の津波事故をテーマに体験型企画展を開催中
- 来場者が「住民」として避難を疑似体験できるインタラクティブ作品「記憶と選択」を展示
- AI技術で再現した大川小壁画を来場者が"修復"する参加型インスタレーション「拓く」も登場
東日本大震災から15年が経つ今、その記憶をどう語り継ぐかを問う企画展が東京で開催されています。
東京工芸大学インタラクティブメディア学科アート&メディア研究室の学生8名が、大川小学校の津波事故をテーマに制作した体験型作品と多彩なアーカイブを紹介する企画展「語りにくさを語る―大川小をめぐる15年の対話」が、2026年3月22日まで同大学中野キャンパスで開催中です。
東京工芸大学「語りにくさを語る―大川小をめぐる15年の対話」展

- 会場:東京工芸大学 中野キャンパス6号館(東京都中野区弥生町1丁目10)
- 展示期間:2026年3月10日(火)〜3月22日(日)
- 休館日:2026年3月16日(月)
- 開館時間:11:00〜18:00(土・日・祝日は19:00まで)
- 入場料:無料
震災当時はまだ幼かった大学生たちが約1年をかけてフィールドワークや対話を重ね、自らの言葉と表現で作り上げた展示です。
宮城県仙台市・南三陸町・気仙沼市・石巻市、福島県双葉町などの震災遺構や伝承館を実際に訪れ、地域住民との対話を積み重ねながら「大川小の津波事故」への理解を深めています。
展示では、遺族らによる伝承活動の記録や書籍のアーカイブ、対話型プログラムなど多彩な表現が紹介されています。
震災伝承施設の来訪者数が年々減少傾向にある中、「困難な遺産(Difficult Heritage)をどのように未来の知恵へとつないでいくか」という問いが、展示全体の軸となっています。
インタラクティブ作品「記憶と選択」
「もし自分がこの街に住んでいたら?」という問いを出発点に、来場者が宮城県石巻市の"住民"として参加するインタラクティブ作品です。
外から眺める傍観者ではなく、当事者として選択を重ねながら、災害の事前準備から災害発生までを疑似体験できます。
参加型映像インスタレーション「拓く」
大川小学校の壁画を実寸高で投影する参加型映像インスタレーションです。
現在風化が進む壁画をAI技術などを用いて完成当時の姿へ再現し、来場者が壁画を"修復する"体験を通して震災の記憶と言葉に向き合い、未来への願いを共に育む場が創出されています。
学生たちは宮城県石巻市の旧大川小学校を実際に訪れ、その場所が持つ重みを肌で感じながら作品制作に臨んでいます。
映像インスタレーション「51分と13年」ほかアーカイブ展示
野口靖教授が2024年に発表した映像インスタレーション「51分と13年」の再演作品も展示されています。
俳優による再演映像とドキュメントを並置し、事故に内在する問題を提示する構成で、2024年版に新コンテンツが加わっています。
「大川伝承の会」による伝承活動紹介展示では、児童の遺品やアーカイブなど遺族による震災伝承館の展示空間が再現されています。
書籍展示とワークショップを組み合わせた企画では、来場者が選書された本の中から一節を拾い上げ、言葉と向き合う体験ができます。
会期中のイベント
会期中はトークショーやワークショップなど多彩なイベントが予定されています。
3月14日(土)のオープニングトーク1「15年の対話 語りの多声性と当事者性」や、3月21日(土)の学生によるギャラリーツアー、ロールプレイ「51分と13年」など、参加無料のプログラムが揃っています。
映画上映も実施されており、裁判の10年にわたる闘いの記録である『「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち』や、監督自身の体験をもとに描かれた『春をかさねて』『あなたの瞳に話せたら』が会期中に上映されます。
3月22日(日)にはクロージングトークも予定されており、登壇者と学生たちが15日間の展示を振り返ります。
学生たちの対話と思考の記録である「継ぐ言葉」も展示されており、震災の表現と向き合った若い世代の視点が伝わってきます。
1923年創立の東京工芸大学は、テクノロジーとアートを融合した表現を追究し続けており、今回の企画展もその精神を体現する取り組みとなっています。
震災から15年が経ち、社会の関心が薄れゆく中で、この企画展は「語りにくさ」そのものと向き合う場を提供しています。
遺族による伝承活動と学生のアートが交差することで、多層的・多声的な記憶の語りが生まれています。