神戸大学、同志社大学、大阪市総合教育センターの研究チームが、大阪市の小・中学校を対象とした実証分析の結果を発表。
家庭の社会経済背景(SES)によって生じる学力格差が、「授業改善」を中心とした教育施策によって緩和されることを明らかにしました。
研究チーム「授業改善による格差是正の持続的効果」

論文公開日:2025年12月3日
発表者:神戸大学、同志社大学、大阪市総合教育センター
使用データ:全国学力・学習状況調査、大阪市 子どもの生活に関する実態調査
子どもの貧困や家庭環境による「教育格差の連鎖」が社会問題となる中、大阪市が進めてきた教育改革の効果を検証した研究結果。
特別な予算を必要とせず、教員の指導力向上や授業設計の工夫を行う「授業改善」が、経済的に厳しい家庭環境にある子どもの学力底上げに寄与することを示唆しています。
社会経済的背景と学力の関係
研究では、保護者調査データを基に家庭の社会経済的背景(SES)指標を作成し、学力との関係を分析。
2017年、2024年、2025年の調査結果において、SESと学力には相関があり、家庭の経済状況が厳しい学校ほど成績が低い傾向にあることが確認されました。
全レベルでの学力向上を確認

大阪市が2018年から推進してきた学力向上施策導入後の変化を分析。
SESの高低で分類した4つのグループすべてにおいて、施策導入後の学力が有意に上昇していることが判明しました。
小学校の国語・算数だけでなく、中学校の国語・数学においても改善が見られ、施策が全体の学力底上げに寄与したことがわかります。
厳しい環境下での高い改善効果
特に注目すべき点は、家庭の経済状況が最も厳しい「レベル1」の学校群における変化です。
2024年の全教科において、レベル1の学校群の成績増加率が他のレベルを上回る結果となりました。
この傾向は2025年も続き、授業改善が家庭の経済格差を補う「教育の補償機能」として実効性を持つことが実証されました。
教育格差の是正に向けた、具体的かつ効果的なアプローチを示す重要な研究成果。
すべての子どもが質の高い教育を受けられる環境づくりへ、希望となるデータです。
神戸大学、同志社大学、大阪市総合教育センターによる研究結果の紹介でした。