環境・エネルギー分野の最先端技術を研究開発するGSアライアンス株式会社は、負極にアルミニウム、電解質に水系電解液を用いた「アルミニウムイオン電池(二次電池)」を開発しました。
資源が豊富で安全性が高く、さらに製造コストを大幅に下げられる可能性を秘めた、次世代の二次電池として注目されます。
GSアライアンス 水系電解液を用いた「アルミニウムイオン電池」を開発

今回開発された「アルミニウムイオン電池」は、現在主流のリチウムイオン電池が持つ課題の多くを解決する可能性を秘めています。
理論的にはリチウムイオン電池(200 - 243 Wh/Kg)の10倍以上となる2980 Ah/Kgという高い電池容量を持つポテンシャルがあります。
また、負極に用いるアルミニウムは、資源高騰が懸念されるリチウムと比較して地殻中に豊富に存在し、地球上で最も多くリサイクルされている金属であるため、電池の低コスト化が期待できます。
安全性も大きな特徴で、アルミニウムは空気中でも安定しており毒性がありません。電解質も不安定な物質を一切使用しておらず、全ての構成材料が安全なため、リチウムイオン電池などで懸念される爆発や燃焼の心配がないとされています。
「水系電解液」採用による製造コストの革新
最大のメリットとして、電解質に「水系電解液」を用いている点が挙げられます。
これまで研究されてきたアルミニウムイオン電池の多くは電解質にイオン液体を用いており、製造時に窒素やアルゴンなどの不活性な特殊ガス中や極乾燥空気中で組み立てる必要がありました。
今回開発された水系の電解液を用いたアルミニウムイオン電池は、通常の大気中で製造することが可能です。
これにより、電極や電解液などの構成材料費だけでなく、製造工程を含めて、従来の二次電池よりも圧倒的に安くなる可能性があります。

水系の電解液を用いることは、安全で環境にも優しいというメリットにも繋がります。
研究内容と今後の課題
試作されたアルミニウムイオン電池は、現時点において、通常の室温大気下、0.025Cの充放電下で初期容量約52 mAhg-1を示しました。
50サイクルまでの電池容量はほぼ一定でしたが、その後劣化がみられたため、サイクル特性の向上が今後の課題です。
また、電池容量も理論値よりはまだ低いため増やす必要があり、電圧も0.7 - 0.8Vとリチウムイオン電池より低いものの、こちらは直列回路を増やすことで対応が可能とされています。
同社は、電池性能は改良が必要としつつも、圧倒的に安価で不燃性・安全であることから、まずはセンサーなどへの用途が期待できるとしています。
英国王立化学会(Royal Society of Chemistry)の学術誌に掲載
今回の水系電解液を用いるアルミニウムイオン電池の開発者である森 良平博士(工学)は、自身の一連の研究を含めた内容を総説にまとめています。
“Aqueous rechargeable aluminum battery - a mini review”というタイトルの論文は、英国王立化学会(Royal Society of Chemistry)の論文『Energy Advances』に受理され、表紙にも採用されました。
GSアライアンスは、今後も研究開発を継続し、電池性能を改良することで、将来的にはEVなどへの応用も目指します。
次世代のエネルギー課題解決に貢献する、GSアライアンスの「アルミニウムイオン電池」開発の紹介でした。