企業倫理・コンプライアンス(E&C)分野のリーディングカンパニーであるLRNは、日本のビジネス環境に特化した「2025年行動規範レポート(日本版)」を公開しました。
本レポートは、日本を代表する32社の行動規範のレビューや従業員140名への意識調査に基づき、グローバル水準と比較した日本企業の課題と機会を明確に示しています。
急速な技術革新や職場の多様化が進む現代において、行動規範の重要性が高まっています。
LRN「2025年行動規範レポート(日本版)」
世界的な混乱や急速な技術革新の中、行動規範は単なる法令順守の文書ではなく、企業の価値観や倫理的指針を映し出すものとして機能が求められています。
本レポートでは、2023年時点の規範との比較検証も含まれており、日本市場のトレンドが浮き彫りになりました。
1. 新たなリスクへの対応:AIに関する指針の追加
AI技術の急速な進化に伴い、日本の行動規範でも倫理的なリスクへの対応が見られ始めました。
日本企業の行動規範における人工知能(AI)の記載は、2023年には0%でしたが、2025年には13%へと増加!
しかし、調査対象の87%がいまだにAIの責任ある利用に関する具体的な指針を明記しておらず、普及率はまだ初期段階にあることが示されました。
2. 通報と説明責任の強化:企業文化を支える制度的基盤
従業員が安心して懸念を表明できる「声を上げる文化」を醸成するための制度的枠組みは、着実に強化されています。
報告窓口や相談先などのリソースを明確に記載している行動規範の割合は、2023年の75%から2025年には97%へと22ポイント増加!
また、通報者への報復に対する懲戒措置や法的影響を明確に記載している企業も、63%から83%へと20ポイント増加し、内部通報者保護の強化が示されました。
3. 従業員の意識と活用の課題:行動規範の実効性
構造的な改善が進む一方で、行動規範が現場レベルで「生きた」リソースとして機能しているかという点において、日本はグローバルと大きなギャップがあることが明らかになりました。
自社の行動規範へのアクセスが容易であると回答した割合は、日本では52%に留まり、グローバル全体の81%と比べて29ポイント低い水準です。
また、倫理的なジレンマに直面した際に、行動規範を参照リソースとして活用したと回答した日本の従業員は49%に過ぎず、グローバル全体の70%と比較して実用的なガイドとして機能していない現状が浮き彫りになりました。
4. 行動規範の更新頻度:時代への適応の遅れ
調査対象となった日本企業32社のうち、行動規範が過去2~3年の間に更新されていたのは53%でした。
残りの47%は2023年時点と全く同じ内容のままであり、機動的な更新が求められています。
LRNが提言する「優れた行動規範」の8要素
LRNは、行動規範が真に実効性を持つために考慮すべき8つの重要な要素を提言しています。
1. 目的と価値観の重視:企業が目指す理念と価値観を明確に反映させる。
2. 声を上げる文化:従業員が懸念を報告できる文化と仕組みを確立する。
3. 利便性(アクセシビリティ):PC、スマートフォンなどあらゆるデバイスから簡単にアクセスできるウェブベースの設計にする。
4. 見た目と使いやすさ:デザイン性とユーザー体験(UX)を重視し、従業員が読みたくなるような工夫を施す。
特に日本企業は「利便性(アクセシビリティ)」の強化が、行動規範をより実用的なものにする鍵となります。
本レポートは、行動規範の構造的・形式的な側面は改善傾向にあるものの、真の課題は「それを組織に浸透させ、倫理的な意思決定に活用させることにある」と結論付けています。
日本の企業は、高い水準で整備された行動規範を、従業員にとって「使いやすく、頼りになる」ツールへと進化させることが期待されます!
LRNが公開した「2025年行動規範レポート(日本版)」の紹介でした。