長野県で地域お土産品の製造販売を行う株式会社マツザワが、これまで食用利用されず放棄されてきた『摘果リンゴ』をお菓子の原料として活用する取り組みを紹介します。
2010年から始まったこのプロジェクトは、2025年には約80tを集荷、累計使用量は1,000tを超えるまでに成長し、食品ロス削減と農家の収入増を両立する地域創生モデルとして注目されています。
マツザワ「摘果リンゴ」活用プロジェクト
株式会社マツザワが、長野県飯田下伊那地域(南信州)で進める「摘果リンゴ」の活用プロジェクト。
“もったいない”という想いから始まったこの取り組みは、地域の新たな産業として成長し、持続可能な地域社会の実現に貢献しています。
“もったいない”から生まれた地域創生
リンゴ栽培では、大きな果実を実らせるために余分な実を間引く「摘果(てきか)」という作業が行われます。
しかし、農薬取締法により食用利用が厳しく制限されていたため、握りこぶしほどの大きさに育った「摘果リンゴ」も、これまでは全て放棄されてきました。
この「もったいない」状況を解決するため、株式会社マツザワは地域のリンゴ生産者やJAと共同で、消毒の種類やタイミングを見直した新たな防除体系を構築し、摘果リンゴを食用利用する仕組みをつくりあげました。
農家の収入増と誇りを育む仕組み
このプロジェクトでは、廃棄されるはずだった摘果リンゴを、マツザワが通常の加工用リンゴよりも高い1Kgあたり50円~70円で買い取っています。
これにより、約50軒のリンゴ生産者にとって新たな収入源が生まれました。
生産者からは「棄てられるはずの摘果リンゴを高く買い取ってもらえてありがたい」といった喜びの声のほか、「おいしいお菓子の原料をつくっている」と、仕事へのやりがいや誇りにも繋がっています。
摘果リンゴから生まれる人気商品
集荷された摘果リンゴは、様々なお土産品に姿を変えて多くの人に喜ばれています。
代表的な商品が、薄焼きクッキー「りんご乙女」です。
「りんご乙女」は、味覚に特化した国際コンテストiTiにおいて2009年から2025年まで17年連続で最高位3つ星を受賞。
その確かな美味しさから、台湾などからのインバウンド客にも「日本みやげ」として人気を博しています。
ほかにも、「リンゴスティックパイ果の山」や「輪切りドライフルーツさわやか青リンゴ」、「APPOシードル」など、多彩な商品が開発されています。
主な受賞歴
この取り組みは、各方面から高い評価を受けています。
2018年 農林水産省 もったいない大賞 審査委員会委員長賞 受賞
2023年 オルタナ サステナブル セレクション 最高位 3つ星 受賞
2024年 ソトコト ウェルビーイング未来アワード 受賞
2009年~2025年 iTi国際優秀味覚コンテスト 最高位 3つ星 連続受賞(りんご乙女)
誰もが不可能と思っていた摘果リンゴの食用利用を、地域の連携によって実現したこのプロジェクト。
食品ロス削減、農家の所得向上、新たな産業の創出という複数の価値を生み出す、サステナブルなモデルとなっています。
株式会社マツザワによる、摘果リンゴを活用した地域創生の取り組みの紹介でした!