リスクモンスターチャイナは、利墨リスモン調べ「第2回中国における日系ITサービス業の市場動向」を発表しました。
リスクモンスターチャイナ「第2回中国における日系ITサービス業の市場動向」
・調査方法 :中国における日系企業の法人登記情報に基づく調査
・調査対象時期 :2025年4月時点で開示されていた法人登記情報
・調査対象企業 :中国全土で登記されている日本企業出資の中国企業及び
そのグループ企業(株式保有率50%以上の会社及び
その会社が支配している会社(50%)をグループ会社とする)の内、
通信・ソフトウェア・情報技術サービス業に分類される企業
・調査対象企業数:1,005社
リスクモンスターチャイナは、利墨リスモン調べ「第2回中国における日系ITサービス業の市場動向」を発表。
「利墨リスモン調べ」は、リスクモンスターチャイナが独自に収集した中国の日系企業データベースや業界情報を基に調査・分析したレポートです。
今回は、2025年4月時点で開示されていた中国全土の法人登記情報を基に、日本企業が出資する中国企業およびグループ企業のうち、通信・ソフトウェア・情報技術サービス業に分類される企業1,005社を対象に調査しました。
■「情報技術コンサルティングサービス」の構成比が増加
前回調査(2023年3月時点のデータに基づく調査、2024年11月発表)から2年が経過し、デジタルサービス需要の高まりやAI技術の世界的な普及など、中国での事業環境の変化がみられます。
これらを踏まえ、中国における日系ITサービス業の市場動向を把握するために調査を実施しました。
「通信・ソフトウェア・情報技術サービス業」に分類される企業は1,005社で、日系企業全体(27,148社)の3.7%を占めました。
前回(898社、3.2%)と比べると、企業数・構成比ともに増加しています。
細分類業種別では、「ソフトウェア開発」(501社、49.9%)が引き続き最多で、2位はコールセンター等を含む「その他情報技術サービス」(158社、15.7%)となりました。
3位の「情報技術コンサルティングサービス」(92社、9.2%)は前回(65社、7.2%)から2ポイント上昇し、構成比が増加しています。
これらの分野は中国市場での高度IT人材の確保やサービス差別化に向けた戦略領域として、今後さらに重要性が増すと考えられます。
図1 中国日系ITサービス業の細分類業種分布
※業種分類は「中国産業分類基準」(GB/T4757-2017)に基づく
■企業数最多は「株式会社NTTデータグループ」
日本の親会社別に集計したところ、「株式会社NTTデータグループ」が最多となりました。
(表1)
2025年5月発表「第2回中国日系企業の関連企業数調査」で増加数が1位となった「ワンドット株式会社」が2位に浮上し、3位には「日本電気株式会社(NEC)」が続きました。
表1 中国日系ITサービス業の親会社別企業数ランキング 1~8位
※同率順位の企業は売上の高い順にて掲載。
※今回、中国日系企業に対して中核親会社グループの集計対象を変更。
■日系ITサービス業、成熟地域から他地域への分布へシフト
日系ITサービス業における地域別分布では、企業数がほぼ全ての地域で増加したものの、構成比に変化が見られました。
上位3地域(上海市、遼寧省、広東省)のシェア率は56.3%で、前回調査(60.4%)より4.1ポイント減少している一方で、他地域では企業数の増加が顕著な結果となりました。
(表2)このことから、日系ITサービス業が集中している地域から、別の地域へ分散してきていることが伺えます。
表2 中国日系ITサービス業の地域別企業数ランキング 1~10位
■新設企業は「四川省」「広東省」「江蘇省」に集中
2023年から2024年にかけて新設された日系ITサービス企業の地域別分布では、「四川省」(14社)が最多でした。
しかし、ワンドット株式会社が四川省(6社)、北京市(6社)に関連企業を設立した影響を除くと、新設企業が多い地域は「広東省」(8社)、「江蘇省」(8社)、「四川省」(8社)となります。
これら地域はIT産業の基盤が整備され、集積効果が期待できる点が評価されていると考えられます。
加えて、2025年8月発表の「第2回中国日系企業の地域分布ランキング」においても、江蘇省、広東省は上海市に次いで日系企業が多く集まっている地域であり、日系ITサービス企業の新たな進出地域として注目されています。
【地域別の産業特徴】
・広東省:AI関連企業が多数。
電子情報産業の売上は全国トップ。
IT人材需要が高く、多くのIT企業が進出。
・江蘇省:IT産業規模は全国上位。
2024年時点でデジタル経済コア産業の付加価値がGDPの11.8%を占める。
政策支援が手厚く、重点大学の集中により人材確保力も高い。
・四川省:中国西部の経済中心地。
人件費・エネルギーコストが沿海地域より低く、内陸進出拠点として注目度が上昇。
図2 中国日系ITサービス業の新設企業地域分布
■まとめ
デジタル化の加速に伴い、企業のデジタルサービス需要は拡大を続けています。
IT技術は製造業からサービス業まで広く応用され、デジタルトランスフォーメーションやハイテク製造業、高度サービス業などで重要な役割を果たしています。
前回調査と比較すると、日系IT企業数は増加を続け、特に「情報技術コンサルティングサービス」と「ソフトウェア開発」の伸びが顕著です。
ITサービス業の拡大は、IT産業の活力の高さと多様な発展の方向性を示しています。
また、地域展開では、江蘇省・広東省・四川省といったIT関連で優位性のある拠点への集中が進み、現地の人材・産業資源の活用を重視する傾向が強まっています。
今後、日系企業はサービス品質向上、現地化管理、人材確保、高付加価値サービスの提供など、戦略・技術・組織面での一層の対応が求められます。