TRデータテクノロジーは、昨今急増しているホスピス型住宅※の開設傾向について、2025年1月に引き続き再調査を行った。
TRデータテクノロジー「ホスピス型住宅※の開設傾向」について
TRデータテクノロジーは、昨今急増しているホスピス型住宅※の開設傾向について、2025年1月に引き続き再調査を行いました。
結果は下記のとおりです。
2025年8月1日には「福祉施設・高齢者住宅Data Base」の最新版をリリースしました。
※ホスピス型住宅:主に入居者をがん末期の患者などに絞り、専門のケアを提供する民間ホームの通称。
主に介護付有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(以下、介護付、住宅型、サ高住)で運営しているケースが多く、行政上の届出や規制は無い。
1)主に「がん末期や難病患者向け」ホームを運営する大手事業者
【業界最大手はアンビス、2位にスタッフシュウエイが上昇】
表1は主に「がん末期や難病患者向け」ホームを運営する事業者のホーム数上位5社である。
ほとんどが、がん末期の患者を対象としたホスピス型住宅で、特に株式会社スタッフシュウエイは前回4位から2位に急増している。
なお、株式会社サンウェルズはパーキンソン病専門のホーム「PDハウス」を運営しており、他社とは運営コンセプトが異なる。
(表1)大手事業者一覧
2)新規開設ホームに占めるホスピス型住宅の割合
【新規開設ホームの約1割がホスピス型住宅に相当】
図1は、ホスピス型住宅及びその他ホーム※の新規開設ホームの推移と、毎年の開設数に占めるホスピス型住宅の割合を示したグラフである。
※その他ホーム:ホスピス住宅以外の要介護者を主な入居対象とした介護付、住宅型、サ高住
2019年以降の新規開設ホーム数は全体で1,000ヶ所未満/年と、ほぼ横ばいで推移している。
一方、ホスピス型住宅は年々増加しており、2024年は約100ヶ所が新たに開設された(同年の新設ホームの10%に相当)。
(図1)開設数推移
3)ホスピス型住宅のエリア傾向
【約8割が関東エリアをはじめとする東日本で開設】
図2は、全国6エリアにおけるホスピス型住宅の開設地をエリアごとに分類したグラフである。
関東エリアが43%と最も多く、次いで北陸・中部エリアの28%と続く。
このように、開発エリアは関東を中心とした東日本が80%を占めており、大きな地域差が見られる(前回調査では関東エリアの割合は40%で、今回調査で3ポイント増加)。
(図2)開設エリア
4)ホスピス型住宅の商品傾向
【低廉な月額費且つ小ぶりな居室の住宅型が主流。
訪問看護は約半数に併設】
表2は、ホスピス型住宅とその他ホームの商品性を比較した一覧表である。
ホスピス型住宅は約8割を住宅型が占め、その他ホームと比べて月額費が低く、居室面積が小さい傾向が見られた。
一方で、平均要介護度はホスピス型住宅のほうが高く、約半数に訪問看護が併設/近接していることが分かった。
(表2)商品性比較
参考)緩和ケア病棟の新設数減少が背景に
※緩和ケア病棟:1990年から制度化。
がん末期や治癒が困難な病気を抱える患者に対して、身体的・精神的な苦痛を和らげるための専門的なケアを提供する病棟。
※緩和ケア病棟のベッド数出典:NPO法人日本ホスピス緩和ケア協会の公開情報より(2024年6月15日時点)。
※ホスピス型住宅は2024年6月15日時点で開設しているホームに限る。
また、他の統計と異なり、年度単位で計算。
右図は緩和ケア病棟とホスピス型住宅のベッド数/定員数の累計グラフである。
2022年度にホスピス型住宅の定員数が緩和ケア病棟のベッド数を大きく上回った。
ホスピス型住宅の近年の開設傾向は、医療の受け皿である緩和ケア病棟の伸び率の低さも要因のひとつとして考えられる。
(参考)緩和ケア病棟との比較
【調査対象の類型】全国の介護付、住宅型、サ高住
【データ出典元】福祉施設・高齢者住宅Data Base2025年度版(調査時点2025年2~7月で同社が入手できた情報に限る)。
出典元は介護サービス情報公表システム(厚労省)、サ高住情報提供システム、重要事項説明書(入手可能なホームに限る)。
【ホスピス型住宅の定義】次の条件により同社が独自に設定。
(1)ホスピスを標ぼうしている運営事業者およびホーム名や広告内容などから同社が独自に判断したホーム (2)ホスピス型住宅以外で死亡退去率が50%超のホーム((1)で抽出したホームの死亡退去率と同水準以上)。
【その他ホームの定義】同社が定義する要介護者をメインターゲットとしたホームで、ホスピス型住宅以外のホーム。
ホスピス型住宅の定義要件に必要な現入居者数や前年の退去者数が不明のホームも含む。
【死亡退去率の算出方法】前年の死亡退去者数÷(現入居者数+前年の全退去者数)
【平均要介護度の算出方法】各区分の在籍人数に等級値(要支援1・2=0.375、要介護1~5=1~5)を乗じて合計し、総入居者数で除して算出。
【訪問看護の併設/近接】訪問看護と対象ホームが同地番の場合(併設)と、半径40m圏内に訪問看護が立地しているホーム(近接)を含む。
※その他:開業予定ホーム含む/調査時点の違いにより現状の数値と異なる場合あり/最多月額費は月払い方式の場合で各固定費の合計。
自己負担額は除く。