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東京ディズニーシー誕生秘話も!元ウォルト・ディズニー・イマジニアリング プレジデント ボブ・ワイス氏「Dream Chasing」講演会

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世界有数のテーマパーク開発を手掛けたウォルト・ディズニー・イマジニアリングのイマジニア、ボブ・ウェイス氏。

東京ディズニーランドや、同氏がコンセプト設計から深く関わった東京ディズニーシーをはじめ、ディズニー・ハリウッド・スタジオ、ディズニー・カリフォルニア・アドベンチャー、上海ディズニーリゾートなど、グローバルな大規模プロジェクトを率いた人物です。

2016年から2021年にはウォルト・ディズニー・イマジニアリング社長、2022年には同社グローバル・イマジニアリング・アンバサダーを務め、2023年に退任しました。

そんなボブ・ウェイス氏が今回来日し、自著「Dream Chasing(ドリーム・チェイシング)」にまつわる特別トークセッションを開催。

世界中のファンを魅了してきた“空間に物語を描く”イマジニアリングの哲学を、直接語る貴重な機会となりました。

 

元ウォルト・ディズニー・イマジニアリング プレジデント ボブ・ワイス氏来日記念講演会

 

 

開催日:2025年9月

登壇者:ボブ・ワイス氏(元ウォルト・ディズニー・イマジニアリング プレジデント)

 

ウォルト・ディズニー・カンパニーで40年以上にわたり活躍し、東京ディズニーランド、東京ディズニーシー、上海ディズニーリゾートなど、世界中の象徴的なテーマパーク開発の中心的なリーダーを務めたボブ・ワイス氏。

 

 

今回、自身の著書「Dream Chasing」の出版を記念して来日し、特別講演会が開催されました。

講演会では、ディズニーの夢と魔法がどのようにして生み出されるのか、その裏側にある情熱や挑戦、そしてチームワークの重要性について、アメリカのテレビ番組に出演した際の映像や、貴重な資料なども交えながら、詳細に語られました。

 

講演「Dream Chasing」

 

 

ボブ・ワイス氏は、自身のキャリアを振り返りながら、著書「Dream Chasing」に込めた想いを語りました。

この本は単なる回顧録ではなく、「誰もが持つ夢や大きなアイデアを、いかにして実現可能な形にしていくか」を伝えるためのものであり、夢を追うすべての人を勇気づける内容になっています。

講演では、夢を育む環境の重要性や、不可能を可能にするためのチームの力について、自身の数々の経験を交えながら紹介したくださいました。

 

キャリアの始まりとイマジニアへの道

 

 

ボブ・ワイス氏のディズニーでのキャリアの第一歩は、大学時代に始めたディズニーランドでのポップコーン販売員のアルバイトでした。

「ポップコーン売り?と最初は思いましたが、すぐにこの仕事が大好きになりました」と語るワイス氏。

何年もかけてお金を貯めて来園するゲストの休暇を、自分のせいで台無しにしてはいけない、常に心からの喜びを持って接することの重要性を学んだと振り返ります。

この経験が、常にゲストを第一に考えるイマジニアとしての原点になりました。

 

 

大学卒業後、幸運にも東京ディズニーランドの建設プロジェクトに参加。

 

 

ウォルト・ディズニーと共に働いた第一世代の伝説的なイマジニアたちから直接指導を受け、何もない広大な土地に夢の国を創り上げるという、大きな挑戦に情熱を注ぎました。

「素晴らしいもの、不可能なものを創りたければ、多くの人々の助けが必要です。夢を共有し、皆で一緒に創り上げたんだ、と感じられるようにすることが大切なのです」と、チームワークの重要性を強調しました。

 

初めて責任者となったパークと「最大の隠れミッキー」

 

 

その後、フロリダのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートに建設された第3のテーマパーク「ディズニーMGMスタジオ(現:ディズニー・ハリウッド・スタジオ)」で、初めてクリエイティブの全責任者を任されます。

「非常に怖かった」と当時の心境を吐露しつつも、タイトなスケジュールの中でパークを完成させました。

ここには、ワイス氏が手掛けた「最大の隠れミッキー」があり、ヘリコプターからでないと見えない巨大なものがシアターの屋上にあるという秘話も披露されました。

 

失敗から生まれた「東京ディズニーシー」

 

 

講演の中でも特に時間を割いて語られたのが、東京ディズニーシーの誕生秘話です。

当初、ディズニー側は映画スタジオをテーマにしたパークをオリエンタルランド社(OLC)に提案しました。

しかし、OLCは「魔法の裏側を見せる」というコンセプトに難色を示します。

東京ディズニーランドが築き上げてきた純粋な魔法の世界観を大切にしたい、というOLCの強い想いから、1年半にわたる協議の末、この提案は正式に却下されました。

「心が折れるような出来事でした(It hits your heart)」とワイス氏は語ります。

プロジェクトは白紙に戻り、チームは解散、それぞれ別の仕事に就きました。

しかし、ワイス氏を含む数名のメンバーは諦めきれませんでした。

正規の業務ではないため、夜間や週末、昼休みといった時間を使って作業を続け、わずか3週間で全く新しいコンセプトを創り上げます。

それが、”水”をテーマに世界の港を巡る「東京ディズニーシー」の原型でした。

 

 

この新しい提案はOLCに高く評価され、世界で唯一無二のパークの建設へと繋がっていきます。

 

 

「失敗は終わりではなく、新しい夢の始まりでもあるのです。素晴らしい夢は、そう簡単には諦めません」と力強く語りました。

 

世界中での挑戦と学び

 

 

ワイス氏の挑戦は日本だけにとどまりません。

 

 

ディズニー・カリフォルニア・アドベンチャー・パークの大規模リニューアルでは、「ワールド・オブ・カラー」を導入して夜の魅力を高め、「カーズランド」やマーベルをテーマにしたエリアを追加することで、ゲストとの繋がりを深めることに成功しました。

 

 

上海ディズニーランドの建設は、全く新しいチーム、政府、請負業者との仕事であり、まさにゼロからの挑戦でした。

 

 

現場では泥まみれになりながら建設を進め、『カリブの海賊』を最新技術で一から作り直し、『トロン』では剥き出しのバイク型ライドでスリルを追求するなど、数々の革新的な試みが行われました。

あるフォーカスグループで、中国のゲストから「ディズニーはアメリカのものではありません。ディズニーは世界のものなのです」と言われたエピソードを披露し、この言葉が常に心にあると語りました。

 

困難を乗り越えて

 

 

『スター・ウォーズ:ギャラクシーズ・エッジ』のオープン直前のチーム集合写真を見せ、「彼らは疲れ切っていますが、その顔には情熱が溢れています。不可能をやり遂げたのです」とその功績を讃えました。

 

 

また、「ファンタジースプリングス」や3隻のディズニー・クルーズラインの船は、コロナ禍という前代未聞の状況で建設が進められました。

建設の中断や安全な作業方法の模索など、多くの困難を乗り越えてプロジェクトを完遂させたイマジニアたちの努力にも触れました。

 

質疑応答

 

 

講演後には、参加者からの質問に答える時間が設けられました。

 

Q. 東京ディズニーシーの具体的なアイデアはどのように生まれたのですか?

 

パークの立地が東京湾に隣接していたことから「水」が unifying element(全体を一つにまとめる要素)になりました。

そこから「もしこの水路がイタリアのポルトフィーノに繋がっていたら?」「ニューヨークのウォーターフロントだったら?」「南米のジャングルだったら?」と想像を膨らませました。

ジュール・ヴェルヌの小説に出てくるような、水浸しになった火山の中というアイデアも生まれました。

実際に世界中の水辺の風景を集めた雑誌の切り抜きを大きなテーブルに貼り合わせ、コラージュのようにして全体の構成を練り上げていったそうです。

 

Q. 隠れミッキーやバッググラウンドストーリーはいつどのように考えているのですか?

 

イマジニアはゲームやパズルが大好きです。

ゲスト、特に熱心なファンが気づいてくれるような、ちょっとした遊び心やディテールを仕込むことを楽しんでいます。

それはミッキーの形だけでなく、特定の種類の花やサボテン、新しいフレーバーのポップコーンかもしれません。

「誰かが気づいてくれるかな?」と想像しながら仕掛けるのが楽しいのです。

そうした無数のディテールが剥がされてしまうと、少しずつ魔法が失われてしまう。

だからこそ、私たちは細部にこだわり続けます。

 

Q. 新しいアイデアはどのようにして生み出すのですか?

 

「クリエイティブ・ブレインストーミング」、フランス語で「シュレット(charrette)」と呼ばれる手法を用います。

まず、どんなクレイジーなアイデアでも否定せずに、とにかく壁一面に貼り出すくらい大量に出し尽くすことが重要です。

この段階では批評はしません。その後、それらを整理し、グループ分けし、パターンを探すことで、より強力なコンセプトへと昇華させていきます。

その場で採用されなかったアイデアも、決して捨て去ることはありません。

別の形で後日、他のプロジェクトで復活することもあるのです。

 

Q. ウォルト・ディズニーからどのような影響を受けましたか?

 

ウォルト・ディズニーは才能を見抜く天才でした。彼はクリエイティブな人材を大切にし、密接な関係を築きました。

彼の「常に前進し、未来へ向かい続けなさい」という言葉は、私たち全員のインスピレーションの源です。

しかし、ウォルトはディズニーランドとニューヨーク万国博覧会以降の11のパークを見ていません。

だから私たちは、彼のインスピレーションに敬意を払いつつも、ウォルトの世界に囚われることなく、自分たち自身の創造性に頼る必要があるのです。

それがウォルト自身も望んだことでしょう。

 

ファンへのメッセージ

 

最後に、ボブ・ワイス氏は会場に集まったファンやメディアに向けて感謝の言葉を述べました。

「皆さんのようなファンが、パークの魅力や新しい情報を発信してくれることは、ディズニーのエコシステムにおいて非常に重要で価値のあることです。

皆さんがいるからこそ、東京ディズニーリゾートは特別な場所であり続けられるのです」

と語り、温かい拍手に包まれて講演会は幕を閉じました。

 

 

元ウォルト・ディズニー・イマジニアリング プレジデント ボブ・ワイス氏来日記念講演会のレポートでした。

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