記事ポイント
- 将来の気候を人工気象室で再現し、実大住宅で温度・湿度・消費電力量を実測した国内初の取り組み
- 約60年後の夏季でも全館空調システム『エアロハス』は快適な室内温湿度を維持することが確認された
- 将来気候の夏季は除湿エネルギー増加により消費電力量が現在の約1.5倍になる可能性が示された
パナソニック ホームズと芝浦工業大学(秋元 孝之教授、小金井 真特任教授)が、約60年後の気候条件が住宅の温熱環境・空調性能に及ぼす影響について共同検証を実施し、2026年5月19日にその結果を公表します。
将来の気候を人工的に設定した環境下で実際の住宅・設備を使って実測したケースは国内に前例がなく、極めて稀な取り組みとなっています。
パナソニック ホームズ「全館空調システム『エアロハス』」

- 研究機関:パナソニック ホームズ株式会社・芝浦工業大学
- 検証場所:住宅試験センター(滋賀県東近江市)
- 検証対象:全館空調システム『エアロハス』搭載の実験住宅
- 実験住宅スペック:延床面積113.86m²・UA値0.57W/m²K
- 結果公表日:2026年5月19日
パナソニック ホームズが所有する国内最大規模の人工気象室(住宅試験センター内・滋賀県東近江市)に実大住宅を設置し、現在気候と将来気候(約60年後)それぞれの夏季・冬季条件を再現したうえで、全館空調システム『エアロハス』の温熱環境・空調性能・消費電力量を比較・評価した結果が明らかになります。
従来はシミュレーションによる評価が主流であったこの分野において、実際の住宅と設備による実測値を示した点が本検証の特徴です。
夏季・冬季ともに室内では快適な温熱環境が維持されることが確認された一方で、将来気候の夏季には除湿エネルギーの増加により消費電力量が現在比約1.5倍となる可能性が示され、エネルギー消費への対策が今後の住宅設計・設備開発における重要課題として位置づけられます。
約60年後の気候変動予測

「拡張アメダス気象データ」を使用して将来気候を分析した結果、省エネルギー基準における6地域(東京ほか関東の主要都市・東海・近畿・中国・四国・九州の多くを含むエリア)の代表地点である岡山市では、夏季(最暑月・8月)の平均気温が現在より2.6±0.2℃上昇し、空気中の水分量を示す絶対湿度も2.9±0.2g/kg'増加する見込みです。
冬季(最寒月・2月)も平均気温が3.3±0.5℃上昇しており、年間を通じた高温・多湿化の傾向が数値として確認されています。
暖房・冷房それぞれに必要なエネルギー量の目安を示す「デグリーデー」を地域ごとに比較した結果、将来気候では現在の省エネルギー基準の地域区分が全国的に温暖側へ1〜2区分程度移行する可能性が示されています。
とりわけ東京の夏季の気候は、将来的に現在の沖縄に近い高温・多湿な環境へ移行する見込みとなっています。
人工気象室での実証実験

人工気象室に設置した実験住宅(延床面積113.86m²)に全館空調システム『エアロハス』を搭載し、現在気候・将来気候それぞれの夏季・冬季条件を時刻別の模擬気象データとして人工気象室に適用します。
夏季の現在気候は平均温度27.6℃・平均絶対湿度17.2g/kg'、将来気候は平均温度30.4℃・平均絶対湿度20.2g/kg'の環境が再現されています。
冬季は現在気候が平均温度4.6℃・平均絶対湿度3.2g/kg'、将来気候が平均温度7.5℃・平均絶対湿度3.8g/kg'の条件で設定されます。
在室者・家電・照明による生活発熱についても各居室ごとに時刻別の発熱条件を再現し、実生活に近い環境での実証が行われています。
各居室の温度・湿度・PMV(温熱環境の快適性を温度・湿度・放射・気流・活動量・着衣量の6要素で算出する指標)・消費電力量などが測定されます。
温熱環境の維持効果
夏季は約27℃・冬季は約20℃に空調温度を設定したうえで測定した結果、将来気候の条件下においても室内温度は設定温度周辺で安定的に維持されます。
夏季の室内平均温度は現在気候で26.5℃(標準偏差±0.5)、将来気候で26.9℃(標準偏差±0.5)とほぼ同水準に保たれています。
室内湿度については、外気絶対湿度が大幅に上昇する将来気候の夏季においても、室内の平均絶対湿度は現在気候の11.2g/kg'から将来気候では10.5g/kg'へとむしろ抑制される結果が確認されます。
全館空調システム『エアロハス』による除湿機能が、将来の高湿度環境下でも有効に機能することが実測値として示されています。
消費電力量への影響
将来気候の夏季には、主に除湿に要する冷房エネルギーが増加するため、1日あたりの消費電力量は現在気候の9.2kWhから将来気候では13.5kWhへと約47%(約4.3kWh)増加し、現在気候の約1.5倍となることが示されます。
2025年8月の東京都の平均気温が観測史上最高水準の29.6℃を記録したことからもわかるとおり、気温の上昇に伴う夏季の冷房・除湿需要の増大が、住宅設備の設計に直接影響する課題として浮き彫りになっています。
冬季については、外気温の上昇や空調機器の除霜運転の減少により、1日あたりの消費電力量は現在気候の7.4kWhから将来気候では6.7kWhへと約10%(約0.7kWh)の減少が確認されます。
夏季のエネルギー消費増加と冬季の減少が同時に進行するという、気候変動が住宅の年間エネルギー収支に及ぼす複合的な影響が数値として明らかになっています。
全館空調システム『エアロハス』の機能

全館空調システム『エアロハス』は、専用エアコン1台で居室だけでなく廊下・洗面室等の非居室空間も含めた住宅全体を換気・空調するシステムです。
空調ユニットから宅内へ搬送される空気は、0.3μmの微小粒子を99.97%捕集できる高性能な「静電HEPAフィルター」で浄化されます。
ホコリや花粉はもちろん、PM2.5(粒径2.5μm以下の微小粒子状物質の総称)にも対応し、四季を通じて清潔な室内空気環境を保ちます。
気候変動が示す冷暖房需要の変化

暖房デグリーデー(外気温と基準温度24℃との差を積算し「冬にどれだけ暖房が必要か」を示す指標)を地域ごとに比較した結果、将来気候ではすべての地域でこの数値が小さくなっており、気温の上昇により冬の暖房需要が全国的に減少する傾向が数値で示されています。

冷房デグリーデー(「どれだけ冷房が必要な暑さか」を示す指標)は将来気候においてすべての地域で増加しており、最も温暖な8地域(沖縄等)では現在の515から940へと約1.8倍に拡大します。
夏の冷房需要が全国で大幅に増加することが数値として明確に示されており、単に断熱・気密性能を強化するだけでなく、省エネルギー性と快適性を両立できる高効率な空調方式の導入が将来の住宅設計に不可欠な要素として浮かび上がっています。
実際の住宅と設備を使った実測という手法で得られた今回のデータは、約60年後の気候条件においても快適な室内環境の維持が可能であることを示すとともに、夏季の消費電力量増加(現在比約1.5倍)という具体的な課題を数値として提示した点で、今後の住宅設計・設備開発に直結する知見となっています。
パナソニック ホームズ「全館空調システム『エアロハス』」の紹介でした。
よくある質問
Q. 今回の検証はどこで実施されましたか?
A. パナソニック ホームズが所有する住宅試験センター(滋賀県東近江市)内の人工気象室で実施されます。
国内最大規模の人工気象室に全館空調システム『エアロハス』を搭載した実大住宅を設置し、現在気候と将来気候の各条件を人工的に再現して測定が行われています。
Q. 将来気候の夏季における消費電力量の変化はどの程度ですか?
A. 主に除湿に要する冷房エネルギーが増加するため、1日あたりの消費電力量は現在気候の9.2kWhから将来気候では13.5kWhへと約47%(約4.3kWh)増加し、現在気候の約1.5倍となる結果が示されています。
冬季については外気温の上昇等により逆に約10%(約0.7kWh)の減少が確認されています。
Q. 6地域の代表地点として岡山市が採用された理由は何ですか?
A. 「平成28年省エネルギー基準に準拠したエネルギー消費性能の評価に関する技術情報(住宅)」において、省エネルギー基準の地域区分6地域の代表地点として選定されているためです。
6地域は東京ほか関東の主要都市・東海・近畿・中国・四国・九州の多くを含む広域エリアを対象としています。