記事ポイント
- JAIMAとNINSが研究協力協定を締結し、ラボオートメーションとデータ標準化が本格始動
- 分析データ統一規格「MaiML」がJIS制定を経て国際標準化(ISO)へ前進
- AIとロボットが実験を担う「AI for Science」の実現を目指す産学連携がスタート
研究室に並ぶ分析機器は、メーカーや機種ごとに異なるデータ形式で動いており、機器間でデータをスムーズに受け渡す仕組みの整備が長年の課題です。
日本分析機器工業会(JAIMA)と大学共同利用機関法人自然科学研究機構(NINS)は2026年4月28日に研究協力協定を締結し、AIやロボットを活用した自律実験システム(ラボオートメーション)の確立と分析データの標準化に向けた連携を開始しました。
AIが実験を設計し、ロボットが自律的に実験をこなし、データをAIが解析する「AI for Science」の実現に向けた産学連携が日本で本格化します。
日本分析機器工業会「NINSとの研究協力協定を締結」

- 締結日:2026年4月28日
- 締結機関:一般社団法人日本分析機器工業会(JAIMA)・大学共同利用機関法人自然科学研究機構(NINS)
- 目的:ラボオートメーションとデータ・機器間通信技術の標準化による「AI for Science」の実現
- MaiML関連情報:maiml.org
JAIMAは日本の分析機器メーカーが加盟する業界団体で、計測・分析装置のデータフォーマット共通化や機器間通信の標準化を推進してきた組織です。
NINSは国立天文台・核融合科学研究所・基礎生物学研究所・生理学研究所・分子科学研究所の5機関を傘下に持ち、宇宙・エネルギー・物質・生命の各分野にわたる研究を担う国際的な研究拠点として、全国の大学研究者に共同利用・共同研究の場を提供しています。
今回の協定では、JAIMAの標準化技術とNINSが保有する最先端の研究設備を組み合わせることで、実機レベルで機能するラボオートメーション技術の確立を進めます。
両者の協力は「分析データの標準化(MaiML等)とデータ利活用」「機器間コミュニケーション技術(LADS OPC UA等)の標準化と普及」「先端機器開発に係る産学連携および人材育成」の3分野で展開されます。
異なるメーカーの機器が一つのシステムとして連動し、AIが実験計画を立て、自律的に実験が進む研究室環境が実現すれば、医薬・材料・環境などあらゆる科学分野での発見のスピードが大幅に上がります。
分析データ統一規格「MaiML」と国際標準化への取り組み
JAIMAはデジタル社会対応の一環として、計測分析装置が出力するデータの共通フォーマット「MaiML(Measurement Analysis Instrument Markup Language)」の策定を主導してきています。
2024年に「JIS K 0200:2024 計測分析装置の分析データ共通フォーマット」として日本工業規格に制定され、現在は日本発の国際標準(ISO規格)を目指してISO/TC201/SC3に新規提案を行う標準化活動を国際舞台で展開しています。
国内普及に向けては、共通データフォーマット対応ガイドラインや「MaiMLスキーマ定義ファイル・スキーマチェック手順書」を公式ウェブサイト(maiml.org)で公開し、各種講習会や分析機器・科学機器の総合展示会JASISのラボDXブースでも情報発信を行っています。
NINSの先端研究施設でMaiMLの実運用実績が積み上がることで、国際標準化に向けた提案の説得力がさらに高まります。
機器間通信規格「LADS OPC UA」による研究室の連携基盤
異なるメーカーの実験機器同士がリアルタイムにデータをやり取りするための通信規格が「LADS(Laboratory and Analytical Device Standard)OPC UA」です。
産業オートメーション分野で広く使われる国際標準OPC UA(IEC62541)をベースに、研究室の実験機器やソフトウェア向けに情報モデルを構築・運用するための業界標準として策定されており、OPC UAは2006年にOPC Foundationが発表し国際標準となった、安全で信頼性の高いデータ交換を実現するオープン規格です。
JAIMAはすでにLADS OPC UAの概念実証(PoC)を実施し、プラットフォームが異なる機器同士の相互運用性が有効に機能することを確認しています。
NINSの多様な研究設備を活用した実地検証が進むことで、機器が自律的に協調動作する「スマートラボ」の実現がより具体的な形を帯びます。
産学連携と人材育成
協定には、先端機器の共同開発と人材育成への取り組みも含まれています。
宇宙観測・核融合研究・分子科学など最先端の実験環境を持つNINSの研究ニーズと、分析機器メーカーが集うJAIMAの産業技術力が結びつくことで、現場の研究課題を解決する機器・システムの共同開発が進む見通しです。
データ標準化や機器間通信に精通した技術者の育成を通じて、「AI for Science」を担える専門人材の輩出も視野に入ります。
研究室の機器がメーカーの壁を超えてひとつのシステムとして機能する未来は、今回の協定がその礎を固めます。
標準化の壁が下がることで、新薬開発から環境計測まで多くの科学現場での研究スピードが加速します。
JAIMAとNINSの産学連携は、日本の科学技術インフラの底上げに寄与する試みです。
JAIMAとNINSによる研究協力協定締結の紹介でした。
よくある質問
Q. 「MaiML」とはどのような技術で、なぜ必要なのですか?
A. MaiML(Measurement Analysis Instrument Markup Language)は、異なるメーカーの計測・分析機器が出力するデータを共通フォーマットで記述・共有するための規格です。
これまでは機器ごとに異なる形式のデータを研究者が手動で変換・統合する必要があり、作業の手間とミスのリスクが伴っています。
MaiMLに対応した機器同士であれば変換作業なしにデータが連携でき、AI解析や機器間の自動連携がスムーズに行えます。
2024年にJIS規格として制定され、現在はISO国際規格への展開が進んでいます。
Q. 「MaiML」と「LADS OPC UA」はどう使い分けられますか?
A. MaiMLは分析データの「中身」を共通フォーマットで記述するための規格で、データの形式・構造の統一を担います。
一方のLADS OPC UAは機器同士が「どのように通信するか」を定める規格で、実験機器やソフトウェアが安全かつリアルタイムにデータをやり取りするための通信プロトコルに相当します。
データの形式(MaiML)と通信の手順(LADS OPC UA)の両方が整うことで、研究室全体の自律的なネットワーク化が実現します。