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古代美術のあらたな鑑賞体験 !東京国立博物館「デジタル法隆寺宝物館」

投稿日:2023年1月30日 更新日:

文化財活用センターと東京国立博物館が「デジタル法隆寺宝物館」を開室。

東京国立博物館 法隆寺宝物館に、通年で鑑賞できる展示室が誕生します。

 

東京国立博物館「デジタル法隆寺宝物館」開室

 

メインビジュアル

 

会場:東京国立博物館 法隆寺宝物館/中2階(東京都台東区上野公園13-9)

開室日:2023年1月31日(火)開室 以降は通年展示(半年毎に展示替)

開館時間:9:30~17:00

休館日:月曜日(ただし月曜日が祝日または休日の場合は開館し、翌平日に休館)、2023年2月7日(火)は休館
※開館時間・休館日は、東京国立博物館総合文化展に準じます

観覧料:総合文化展観覧料もしくは開催中の特別展観覧料[観覧当日に限る]が必要です

総合文化展観覧料:一般1,000円、大学生500円、高校生以下および満18歳未満、満70歳以上の方は無料
※大学生の方は、学生証を提示ください
※高校生以下および満18歳未満、満70歳以上の方は、総合文化展について無料です。入館の際に年齢のわかるもの(生徒手帳、健康保険証、運転免許証など)を提示ください
※障がい者とその介護者各1名は無料です。入館の際に障がい者手帳等を提示ください

主催:東京国立博物館、文化財活用センター

協力:法隆寺、奈良国立博物館、国立情報学研究所高野研究室

 

常時展示がかなわない法隆寺ゆかりの名宝を、デジタルコンテンツや複製でくわしく鑑賞、体験する展示室として誕生する「デジタル法隆寺宝物館」

2023年1月31日からは法隆寺献納宝物である国宝「聖徳太子絵伝」を、8月1日からは「法隆寺金堂壁画」をテーマに、臨場感あふれるグラフィックパネル(複製)と、大型8Kモニターで絵の詳細まで自在に鑑賞できるデジタルコンテンツが展示されます。

また、仮面や装束の当初の姿を考証した復元模造では、かつて人々を魅了した伎楽(ぎがく)という芸能の色鮮やかな世界観にふれることができます。

今回は、開室後半年間のみどころを紹介していきます。

 

70インチ8Kモニターでくわしくみる国宝~鑑賞者の操作で絵画の魅力をじっくり鑑賞~

 

11歳、雲のように空に浮かぶ(第1面)/国宝「聖徳太子絵伝」(部分)

 

およそ千年前に描かれた国宝「聖徳太子絵伝」の高精細画像を、大型8Kモニターで鑑賞するデジタルコンテンツ<8Kで文化財 国宝「聖徳太子絵伝」>を体験。

デジタルコンテンツでは、原品ではよくみえない聖徳太子の表情までもが8Kモニターに映し出されます。

また、聖徳太子の生涯にわたる50以上もの事績から、みたい場面を選んで解説とともに鑑賞するなど、国宝「聖徳太子絵伝」の魅力を8K画質で自在にくわしく楽しめます。

 

臨場感あふれる原寸大グラフィックパネル~絵画の大きさや配置された空間そのものを体感~

 

国宝「聖徳太子絵伝」原寸大グラフィックパネル ※2018年撮影

 

かつて奈良・法隆寺の絵殿という建物の内側を飾っていた国宝「聖徳太子絵伝」は、1面およそ縦1.9m×横1.5mの画面を横に並べた計10面からなる大画面絵画です。

その原寸大グラフィックパネル(複製)を、法隆寺の絵殿にあったときと同じコの字型の配置に展示。

国宝「聖徳太子絵伝」にあらわされた雄大な景観と、聖徳太子の生涯を追体験するかのような空間そのものを体感することができます。

 

よみがえる古代芸能の色とかたち~伎楽でもちいられた仮面や装束の本来の姿を再現~

 

復元模造 伎楽面・伎楽装束 ※半年毎に展示替、ケース内展示

 

飛鳥時代に大陸から伝来した伎楽は、今日では資料より役名を伝えるのみとなった幻の芸能です。

現存する伎楽面のほとんどが奈良時代の作であるのに対し、法隆寺献納宝物(東京国立博物館蔵)の伎楽面には、それより古い飛鳥時代の作が含まれています。

東京国立博物館と文化財活用センターは、現存する資料から色やかたちについての検討を重ね、本来の姿を再現した伎楽面と伎楽装束が製作されました。

 

デジタルコンテンツ<8Kで文化財 国宝「聖徳太子絵伝」>

 

<8Kで文化財 国宝「聖徳太子絵伝」>操作画面

 

デジタルコンテンツ制作:文化財活用センター、NHKエデュケーショナル/2018~19年

 

国宝「聖徳太子絵伝」は、かつて法隆寺の絵殿を飾っていた大画面の障子絵です。

平安時代・延久元年(1069)、絵師・秦致貞によって描かれました。

 

国宝「聖徳太子絵伝」展示風景(法隆寺宝物館第6室) ※2019年撮影

 

10面からなる横長の大画面に、聖徳太子の生涯にわたる50以上もの事績が散りばめられています。

数ある聖徳太子絵伝のなかでもっとも古く、初期やまと絵の代表作にあげられます。しかし、長い年月を経て画面のいたみがひどく、肉眼で細部まで鑑賞することはかないません。

デジタルコンテンツ<8Kで文化財 国宝「聖徳太子絵伝」>は、本作品の高精細画像を、大型8Kモニターに映し出すアプリケーション。

1面およそ縦1.9m×横1.5mの本作品を、計28区画に分割して撮影し、画像をつなぎ合わせて1面で18億画素の画像データが作成されました。

 

 

鑑賞者自身の操作により、2面で36億画素という画像データがリアルタイムに処理され、70インチ8Kモニターに表示されます。

国宝「聖徳太子絵伝」のみたい部分を大きく拡大すると、聖徳太子の表情までくわしく確認することが可能。

 

12歳、百済の賢者、日羅と会う(第10面)/国宝「聖徳太子絵伝」(部分)

 

聖徳太子の生涯のエピソードから場面を選び、その場面の解説も楽しめます。

およそ千年前に描かれた国宝の絵伝と聖徳太子の魅力が、8K画質でじっくりと堪能できます。

 

デジタルコンテンツ<「法隆寺金堂壁画」写真ガラス原板デジタルビューア>

 

第二号壁 菩薩像/「法隆寺金堂壁画」(部分)

 

デジタルコンテンツ制作:法隆寺、奈良国立博物館、国立情報学研究所高野研究室/2020年

デジタルコンテンツ制作協力:文化財活用センター、便利堂

 

7世紀後半から8世紀はじめに制作されたとみられる「法隆寺金堂壁画」は、かつて法隆寺金堂の内壁(外陣)にあった大画面壁画です。

昭和24年(1949)1月26日、火災により焼損しました。

 

第六号壁 阿弥陀浄土図/「法隆寺金堂壁画」(部分)

 

「法隆寺金堂壁画」写真ガラス原板は、美術印刷会社便利堂によって昭和10年(1935)に撮影されたもので、焼損前の金堂壁画の姿を今に伝えます。

 

<「法隆寺金堂壁画」写真ガラス原板デジタルビューア>操作画面

 

デジタルコンテンツ<「法隆寺金堂壁画」写真ガラス原板デジタルビューア>は、363枚ある写真ガラス原板から、専用の高精細スキャナー(1500dpi)で取得した高精細画像を、大型8Kモニターに映します。

この高精細画像は、写真ガラス原板1枚を5分割して読み込み、撮影時のレンズの歪みや現像時に生じた濃淡の差などを補正し、複数の画像データを接合したもの。

壁画1枚の画像は、大壁で300億画素、小壁で170億画素を超えます。

 

<復元模造 伎楽面・伎楽装束>

 

伎楽面 呉女・迦楼羅 製作:松久宗琳佛所/2019年

伎楽装束 裳・袍 製作:染技連/2021年

 

飛鳥時代に大陸から伝来した、野外で行なう仮面芸能「伎楽」

 

41歳、百済国の味摩之、伎楽を伝え、これを童子に習わせる(第5面)/国宝「聖徳太子絵伝」(部分)

 

国宝「聖徳太子絵伝」(第5面)には、推古天皇20年(612)、百済から帰化した味摩之(みまし)という楽人が、呉(くれ/現在の中国)に学んだ伎楽舞を習得していると聞き、聖徳太子は少年を集めて習わせたという場面が描かれています。

伎楽は平安時代には廃れ、今日では資料や仮面の銘などにより役名を伝えるのみです。

伎楽面は、法隆寺献納宝物(東京国立博物館蔵)の31面のほか、正倉院や東大寺に伝わります。

現存するほとんどが奈良時代の作ですが、法隆寺伝来の伎楽面には、飛鳥時代の作が含まれることが特徴です。

東京国立博物館と文化財活用センターは、2019年に伎楽面〈呉女〉と〈迦楼羅〉を、2021年に伎楽装束〈裳(も)〉と〈袍(ほう)〉の復元模造を製作。

現存する資料から、色やかたちについて検討を重ね、本来の姿が再現されました。

 

重要文化財「伎楽面 呉女・迦楼羅」

 

 

伎楽面 呉女(原品)

 

31面のうち、伎楽で唯一の女性面である〈呉女(ごじょ)〉と

 

伎楽面 迦楼羅(原品)

 

インドの霊鳥である〈迦楼羅(かるら)〉の復元模造。

 

伎楽面 呉女(復元模造)

 

X線CT撮影や赤外線撮影など多角的な調査を行ない、材質や技法、彩色仕上げを原品に忠実に再現されます。

 

伎楽面 迦楼羅(復元模造)

 

※原品を含む伎楽面は、法隆寺宝物館〈第3室〉にて通年展示。法隆寺宝物館〈第3室〉は毎週金曜・土曜に開室

 

「伎楽装束 裳残欠・袍残欠」

 

伎楽装束 裳(原品)

 

現在は残欠として伝えられる伎楽装束ですが、原品の解体修理と並行して復元模造を製作。

 

伎楽装束 裳(復元模造)

 

修理時の知見を活かし、古代の染織技法を再現したことで、製作当時の華やかな彩りがよみがえりました。

 

デジタル技術が可能にする古代美術のあらたな鑑賞体験。

東京国立博物館に2023年1月31日より開室される「デジタル法隆寺宝物館」の紹介でした。

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